#84三三・左龍の会(2017/6/29)
第84回「三三・左龍の会」
日時:2017年6月29日(木)18時30分
会場:鈴本演芸場
< 番組 >
前座・桃月庵ひしもち『元犬』
柳亭左龍『名刀捨丸』
柳家三三『藁人形』
~仲入り~
柳家三三『反対俥』
柳亭左龍『佃祭』
鈴本演芸場夜の部は特別興行で、この日は「三三左龍二人会」。
第84回というから随分と長続きしている。充実した会なので、ここ数年は都合がつく限り参加している。
番組にある通り、この日は左龍が中心。
左龍『名刀捨丸』
初見。元々は講釈ネタで、落語に移し替えたもの。
同じ内容のものを笑福亭鶴光が『善悪双葉の松』のタイトルで演じている。
珍しいネタなのであらすじを紹介する。
木曽の農家の倅で、兄が治太郎、弟が治三郎の兄弟がいたが、弟が働き者で親孝行なのに対し、兄は放蕩者で家を出てから行方知れず。
治三郎は出稼ぎで江戸に出て日本橋大伝馬町の佐野屋市右衛門方に奉公する。一心に働いたお陰で20両という金ができる。
大金を懐に治三郎は故郷に向かうが、途中で道に迷い山中に。ようやく人家を見つけたが、そこは盗賊の住家。女房の方は治三郎を匿ってくれるが亭主にバレてしまい、治三郎は身ぐるみ剝がされる。そのまま外へ放り出されるところを、山中なので獣に襲われるからと錆びた刀だけを持たされる。盗賊は後を追って外で治三郎を仕留めようとするが失敗に終わる。
一文無しになった治三郎は再び江戸に戻り、市右衛門は仰天。だが治三郎が持ち帰った錆刀をじっと見ていると、本石町の田中屋卯兵衛という刀屋に持ち込む。するとこれが「名刀捨丸」と分かり、50両という値がつく。
50両を懐に治三郎は再度故郷に向かうが、盗賊のことが気になり住家を訪れる。半分の25両を差し出すが、盗賊は病に伏していた。互いに顔を見合わせている内に盗賊が兄の治太郎と分かり、兄弟が再会を果たす。一緒に故郷に帰ろうと勧める治三郎に、治太郎は過去を恥じ、女房を頼むと言い残し自刃して果てる。
治三郎は兄の妻を娶り、故郷に錦を飾る。
左龍の高座は、地の語りの確かと、各登場人物の描き分けが良く出来ていた。
左龍の現在の到達点を示すような口演だった。
三三『藁人形』
かつては神田の糠屋の小町娘と持てはやされたお熊だが、事情があって今では千住小塚っ原の女郎に身を沈めている。
そこへ度々訪れる願人坊主の西念から20両の金を騙し取る。それも仲間との賭けだったと聞いた西念、恨みを晴らすために藁人形を油で煮て、お熊を祈り殺そうとする。たまたま西念宅を訪れた甥の甚吉に見咎められる、何で藁人形なら釘で打たないんだと訊かれる、「だめだ。おくまは糠屋の娘だ」でサゲ。
新作の五代目古今亭今輔が十八番にしていたが、怪奇もの風のかなりドロドロとした演じ方だった。
対して志ん生はそうした色が薄く、むしろ人情噺風の演じ方だっと記憶している。
三三の高座は後者に近く、特にお熊が西念を手玉に取る所が巧みだった。
三三『反対俥』
三三のこのネタは初めて聴くが、軽妙だし上手いもんだ。
三三の芸の幅を認識させられたこの日の2席だった。
左龍『佃祭』
このネタをフルバージョンで演じると、どうしても45分近くかかってしまう。そこで終い船に乗ろうとしていた次郎兵衛を、かつて娘時代に命を助けて貰い今は佃の船頭・辰五郎の女房となっている女に袖を引かれ、終い船に乗り損なう場面から始めていた。
辰五郎夫婦と次郎兵衛とのほのぼのとしたヤリトリ。
対して、終い船が沈み全員が死亡したという報せが入った次郎兵衛宅は大騒ぎ。坊さんを呼んでお経をあげるやら、棺桶を運びこむやらのてんやわんや。後半は長屋の衆が次郎兵衛宅に悔みを言いに行く所が中心。
最後は次郎兵衛が無事に戻ってきてのドタバタで幕を閉じた。
ここでも左龍の人物描写が光る。特に与太郎の描き方が良く出来ていた。
ただ、個人の好みを言わせて貰えば、次郎兵衛の女房が大変な焼き餅焼きだという設定が抜けていたのが惜しまれる。
4席、全て結構でした。
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