池袋演芸場8月下席・初日(2017/8/21)
池袋演芸場8月下席昼の部・初日
前座・林家たま平『道灌』
< 番組 >
柳家小はぜ『富士詣り』
春風亭三朝『芋俵』
蜃気楼龍玉『強情灸』
林家楽一『紙切り』
八光亭春輔『権兵衛狸』
林家正蔵『夢八』
―仲入り―
桂三木男『崇徳院』
林家鉄平『寄合酒』
柳貴家小雪『太神楽』
柳家三三『磯の鮑』
池袋演芸場には下席の昼の部に来る時が多い。夜の部が特別興行のため昼夜入れ替え無しであり、午後2時から始まって5時に終わる、理想的な時間なのだ。
昼食を終えて家を出て小屋に入り、終演後は近所の飲食店を利用してもいいし、家に帰って夕食でもいい。
また、公演時間が3時間というのも丁度いい長さだ。
仲入りで上がった正蔵が、この芝居の顔づけは5月に行ったが、ノンビリと聴ける人を集めたと言っていた。お客が緊張するような噺家や、やたらギャグを入れて客席を爆笑させるような人は(誰のことかな、一之輔?)避けたそうだ。
昼下がりにボーッとしながら、時にはウトウトしながら過ごす、そういう番組となった。
小はぜ『富士詣り』
信仰としての富士登山、今と違って下から登るので5合目に着いた頃にはクタクタ。辺りも暗くなり、先達から「これは、一行の中に五戒を犯した者がいるから、山の神さまのお怒りに触れたんだ。一人一人懺悔(ざんげ)をしなくちゃいけねえ」と脅され、長屋の連中が一人一人告白を始める。
仏教でいう五戒とは、在家の信者が守るべきことがらで、次の5つだ。
1.不殺生戒(ふせっしょうかい)
生き物を殺してはいけない。
2.不偸盗戒(ふちゅうとうかい)
他人のものを盗んではいけない。
3.不邪淫戒(ふじゃいんかい)
自分の妻(または夫)以外と交わってはいけない。
4.不妄語戒(ふもうごかい)
うそをついてはいけない。
5.不飲酒戒(ふおんじゅかい)
酒を飲んではいけない
こりゃ、出家した坊さんでも無理だわ。
とにかく、交代で懺悔を始めるが、最後の熊さんは不邪淫戒。人妻といい仲になった経緯を詳しく語りだす。
相手の女房っていうのはどこの誰だと問い詰める先達に、熊は「あんたのお上さん」でサゲ。
最近では権太楼の音源がCDで市販されているが、珍しい噺といえる。
こうしたネタに挑戦する意気は買いたい。
三朝『芋俵』
よく纏まっていたが、もうちょっとこの人「らしさ」が欲しいところ。
龍玉『強情灸』
唯一の熱演で、古今亭のお家芸を披露していた。
楽一『紙切り』
この日のユルイ雰囲気にピッタリ。
春輔『権兵衛狸』
2度目だが、彦六譲りかと思える唄い調子風な語りと、この民話風のストーリーが良く合っていた。
一席終えた後の『かっぽれ』、真に結構でした。
この人、寄席に出る頻度が少ないのは何故だろう?
正蔵『夢八』
近ごろ風格のようなものが身についてきた。
上方ネタだが、最近は東京の高座でも演じる人が増えてきた。
正蔵の高座は全体にあっさりと演じていて、これはこれで東京風で良かった。
三木男『崇徳院』
久々に見たが、以前のトッポさが消えて真剣な姿勢は感じられた。やはり真打と三木助襲名への意気込みだろうか。
持ち時間の関係もあったのか分からないが、もう少しゆっくりと喋った方がこのネタには効果的だろう。
鉄平『寄合酒』
終盤で、与太郎が原っぱから味噌を拾ってくるのを忘れていて、慌てて付け加えていた。「なんか足りないと思ってた」で場内爆笑。ここが一番笑えた。こういうユルサもご愛嬌か。
小雪『太神楽』
小柄な女性が座ったままで演じるので、父性愛本能をくすぐるね。
三三『磯の鮑』
前の太神楽の紙吹雪の跡片付けで、前座が二度も高座に上がり、出番の調子がやや崩されていたが、前方の鉄平のミスや前座の慌てぶりもちゃんとフォローして本題へ。
ストーリーは先日紹介したばかりだから割愛する。
三三の良さは、場の空気を読むことが巧みな点だ。
テンポの良さも強みで、このネタに登場する与太郎の造形は三三ならではだ。
時々ウツラウツラしたので、間違いがあったらご容赦を。
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コメント
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三三評、感服。
高座ではわざと酷薄さを強調して笑いをとることもあります。
変な話ですが、実際に聴くようになる前から、あの顔つきでこの人はうまい、と確信しておりました。
顔は芸を表すというようなこともあるのかも。
投稿: 福 | 2017/08/23 06:41
うつらうつらの寄席もいいですね。
正蔵は落語研究会「藪入り」、ちょっとひどかったです。
池袋で疲れたかな^^。
投稿: 佐平次 | 2017/08/23 10:23
福様
噺家も顔は大事です。ハンサムである必要はありませんが、顔で得している人、損をしている人、確かにいます。
投稿: ほめ・く | 2017/08/23 11:05
佐平次様
公演時間がちょうどシェスタの時間帯にあたるものですから。
眠気を吹き飛ばすような人がいなかったのが幸いでした。
正蔵は軽い噺の方が向いているようですね。
投稿: ほめ・く | 2017/08/23 11:12
こぶ蔵さんは、軽めの噺がニンに合っていますね。
お化け寄席の報告など
柳若 お菊の皿
過度なギャグを控えても、観客を沸かせていました。
鯉昇 茶の湯
お百姓さんの頬にベッタリと・・また茶の湯か・・・から続きが
今までの青キナコ茶の被害に遭った人の怨念があるとかで、和尚さんに相談。焙じ茶の茶の湯に替えた。再度和尚さんに見てもらったところ、だいぶ怨念は晴れているがまだ残っている。・・・法事(焙じ)が足りない でサゲ
照れくさそうに、お化け寄席用にサゲを変えましたと、打ち上げで話していました。
愛山 妖婆
岡本綺堂の短編集から講談に直したそうです。
投稿: 蚤とり侍 | 2017/08/27 09:43
蚤とり侍様
お化け寄席の紹介、有難うございます。
『茶の湯』が怪談噺になるんですね。
正蔵は軽いネタがニンということは、まだまだ力不足ということになりますか。
投稿: ほめ・く | 2017/08/27 18:21