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2017/08/12

「江戸落語・上方落語聴き比べの会~上方編」(2017/8/11)

横浜にぎわい座 第五十四回 上方落語会「江戸落語・上方落語聴き比べの会~上方編」
日時:2017年8月11日(金)14時
会場:横浜にぎわい座 芸能ホール
<   番組   >
開口一番・林家愛染『動物園』
笑福亭べ瓶『いらち俥』
笑福亭三喬『蛇含草』
《仲入り》
桂米左『骨釣り』
桂塩鯛『百人坊主』

同じネタを江戸落語と上方落語とで聴き比べするという趣向の上方編。
7月1日に行われた東京編と比べ、結論からいえば上方の圧勝だ。ネタ自身の面白さに加え、演者の力量、演じう上での工夫といった総合力の強みだ。
4席全て楽しめた。
因みに、上方→東京のネタ比較は以下の通り。
「いらち俥」→「反対車」
「蛇含草」→「そば清」
「骨釣り」→「野ざらし」
「百人坊主」→「大山詣り」

べ瓶『いらち俥』
鶴瓶の弟子で、師匠が仕事の関係上東京を拠点としているので、当人も東京住まいとか。
上方の噺家で東京の拠点を移している人は他にもいるが、それだけ東京のマーケットサイズが大きいという事だろう。
マクラで、東京と大阪の人の気質の違いを語り、ここで客席を掴んでいた。
この日の4席の中では、東西の違いが最も少ない(「いらち」とは、落ち着きのないの意)。従って、見せ方やギャグもほぼ共通だ。
べ瓶は、韋駄天の寅が高速で走る様子を客の仕草で上手く見せて爆笑させていた。
演者の魅力として、話芸、演者の華(オーラ、明るさ、色気、サービス精神など)、その他に演者の勢いというのがある。
この日のべ瓶の高座は、その勢いで魅せていた。

三喬『蛇含草』
今秋、師匠の名跡である7代目笑福亭松喬を襲名する。
この人には数年前から注目していて、東京で公演がある時は選んで見て来たので襲名は嬉しい。師匠とはだいぶ芸風は違うが、新しい松喬を作り上げて欲しい。
『蛇含草』 は3代目桂三木助が得意としていたし(ナマの高座を見ている)、東京でも演じられるので、筋はご存知の方も多いだろう。
この噺は餅を焼きながら食べる仕草が中心で、曲食いも含めていかにリアルに、かつ美味そうに食べて見せるかが腕の見せ所だ。
上に放り上げた餅をキャッチして、阪神の下手な外野手じゃこうはいかないなどと言いながら、気持ち良さそうに演じて客席を沸かせていた。

米左『骨釣り』
初見だったが、師匠の芸を忠実に受け継いでいる印象を受けた。
幇間の繁八、若旦那のお供で木津川で魚釣りをしていると、骸骨を釣り上げてしまう。若旦那の勧めで骸骨を寺に手向け回向をしてもらう。その深夜、繁八の家を訪れる者がある。戸の隙間から中に入ってきたのは、昼間の骸骨の幽霊。
事情を聞けば、もとは大店の娘に生まれたが両親と死に別れ店も人手に渡り、親類からいやな縁談を押しつけられ、木津川に身を投げたのだという。今日で浮かぶことができたので、せめてものお礼にお寝間のお伽などという。幽霊のあまりの美しさに喜んだ繁八、盃を交わして二人夜通しする。
翌朝、隣室の喜いやんが繁八を訪れ昨夜の経緯を聞いて、魚釣りとはそんな得なことがあるのかと釣道具を揃え、大川へ骨つりに行く。
いくら釣っても魚ばかり、諦めかけて中洲に小便に行き芦をかき分け進むと、砂地の盛り上がっている所がある。見ると骸骨が半分地面から出ていた。喜いやんは早速骨を掘り出し、近所の寺で回向してもらう。
その夜、喜いやんは女がいま来るか来るかと待っていると、いきなりの大声。
「我、京都三条河原にて処刑され、五体はバラバラに切りほどかれ、流れ流れて大川の中洲に醜きむくろをさらす。あらありがたの今日のご回向。せめて御礼に参上なし、閏中のお伽なとつかまつらん。」
「いやや、いやや、わたい。あんたみたいな人のお伽。男同士で何すんねんな。しかし、ものすごい人やなあ。あんた一体、どなただんねん」
「石川五右衛門じゃ」
「ああ、それで釜割りに来たんか。」
でサゲ。
『野ざらし』では娘の代わりに幇間が来るが、こちらは石川五右衛門で、さらにギャップが大きい。
サゲが下品だが、こえもご愛嬌。
米左の口演は、ハメモノをバックにして、メリハリの利いた高座だった。

塩鯛『百人坊主』
前名の桂都丸時代に聴いているが、襲名後は初めて。
長屋では毎年恒例のお伊勢参りの準備にかかっているが、先達を務める寺の和尚が旅の途中で起きる喧嘩を嫌って今年は行かないと言い出す。
困った村人たちは相談の上、一行に「腹立てん講」と名付け、「もし腹を立てたら五貫文の罰金、そして所払いにされても文句は言えない」という決めごとをして和尚を説得し、ようやく出発。
先ず、大阪から三十石で京都に向かうが、船中で皆が一口ずつ飲む寝酒を源太という男がみんなの酒を勝手に飲んでしまう。
怒る仲間に源太は、怒れば罰金と所払いだと脅して、酔っぱらって寝込んでしまう。
渋々従ったが腹の虫が収まらない仲間たちは、その夜船で寝込んでいる源太の頭を剃りあげ、坊主にしてしまう。
翌朝、坊主にされたのを気が付いた源太は怒り狂うが、怒れば罰金と所払いだと聞いて黙り込む。源太は、坊主がお伊勢さんに行くと災いがあるからと、ここから引き返し自宅に戻ると言って、一行と別れる。
2日後に家に戻った源太は、伊勢参りに出かけた男たちの女房を寺に集めて、一行が近江八景の船見物に出かけて時化にあい船が転覆、全員が死亡し自分だけ助かった。これから仲間の回向のために高野山に上ると言って、坊主頭を見せる。
これを聞いた長屋の女房連中、亭主を弔いために私も私もと、全員が坊主頭になってしまう。
帰って来た亭主たちも最初は腹を立てたが、それならいっそ俺たちもと、終いには村人全員が坊主頭になる。
一人、髪の毛がフサフサしていた。誰かと思ったら、寺の和尚だった。
このネタだけは後半にやや無理があり、『大山詣り』の方がすっきりしている。
この噺では、源太が2日時間を潰してから帰宅し、船の遭難の作り話をするのだが、これは道理にかなっている。真っすぐ帰宅したなら、近江八景の船遊びと日程上の整合性が取れないからだ。
ここは逆に『大山詣り』の方が、無理がある。
塩鯛の高座は、当時の伊勢参りの風情や、源太の人物設定を中心に、面白く聴かせていた。

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コメント

上方落語は面白いのですが、ことばが聴き取りにくいのです。
就眠剤にCDを聴くとき、上方のは聞き取ろうと注意を集中するのでかえって目が覚めてしまうのが玉にきずです。

投稿: 佐平次 | 2017/08/13 11:25

佐平次様
上方落語は確かに睡眠薬には適さないですね。
演者が、何とかお客を楽しませようとする姿勢も、影響しているかも知れません。

投稿: ほめ・く | 2017/08/13 11:55

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