桂米朝一門会(2017/9/24)
「上方落語会~桂米朝一門会~」
日時:2017年9月24日(日)13時
会場:国立演芸場
< 番組 >
桂小鯛『時うどん』
桂歌之助『佐々木政談』
桂米團治『親子茶屋』
―中入り―
桂吉弥『狐芝居』
桂南光『火焔太鼓』
2日続けての国立、この日は上方落語会、米朝一門会。
歌之助『佐々木政談』
初見。東京でもしばしば演じられるが、民話の原話を3代目松鶴が創作したもので、元は上方落語。
もっとも主人公の佐々木信濃守は大阪と東京両方の町奉行を務めていたので、東西どちらでも成り立つ噺ではある。
筋は東京と同じだが、四郎吉が桶屋の倅という設定になっていて、これに因んだサゲがつくこと。
もう一つは、奉行の佐々木信濃守が与力たちの収賄横行に対し、四郎吉の裁きを利用してこれを咎めたという解釈になっていること。
単なる出世物語にしていない点が上方版の特長といえる。
歌之助の高座は、四郎吉の小賢しさがよく表現されていた。
米團治『親子茶屋』
例によって偉大な父親を持った2代目の苦労を自虐的に語るマクラを振って本題へ。
この噺の難しさは船場の大店の主人で、一見真面目そうだが実は大変な遊び人という人物を描けるかだ。
これは米朝ぐらいにならないと、表現できないのかも知れない。茶屋遊び、女遊びの経験が身についていないと、無理なのかも。
以前に見た吉坊、そしてこの日の米團治の高座を見て、このネタには演者の年季や風格が要るのだと、改めて感じた。
吉弥『狐芝居』
このネタも前日に吉坊で見たばかりで、比較するにはもってこいだ。
感想を言うと、語りの確かさ、忠臣蔵四段目の忠実な再現という点では、吉坊に軍配があがる。
ただ、前の『親子茶屋』と同様に、こうした上方落語というのは芸に艶が求められると思う。 演者の色気や愛嬌だ。
こうした点、やはり吉弥に一日の長がある。
落語に限らず全ての芸能について言えることだが、ライブでしか分からぬことが多い。音声や映像だけでは評価は下せないのだ。
南光『火焔太鼓』
古今亭のお家芸ともいうべきネタの上方版、というより南光版か。
道具屋の主はかつてこの店の奉公人で、先代の娘に婿入りして後を継いだが、商売が一向に振るわず嫁さんに頭が上がらないという設定だ。
太鼓は木の枠に納められていて、その木枠に火焔の細工がされていることから火焔太鼓とよばれる事が、後からの説明で明らかにされる。
太鼓はかなり大きなもので、荷車に乗せて運ぶという点も東京とは異なる。
太鼓を買い上げるのは大名ではなく、大阪の大商人である住友の主人だ。
太鼓の仕入れ値が1分で、売値が300両は東京と同じ。
300両を道具屋の主に払う際は、小判25両の包(切り餅)を2つセットにして50両ずつ渡すのは芸が細かい。
いくつかの差異はあるものの、大筋は東京のオリジナル通り。
サゲは付けずに、「夫婦仲良う繁昌したという、おめでたい話」でエンディング。
違いは、道具屋の主と女房との会話に笑いの要素が多く、いかにも南光らしい爆笑版になっていることだ。
マクラで、南光自身の夫婦のエピソードを語るが、これが本編への導入になってる所が巧みだ。
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コメント
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連日の観劇と寄席・落語会通い、羨ましい限りです。
吉坊さんの色艶という点は、キャリアでハンデを縮めて欲しいものです。右團治師の方向ですかね?
火焔太鼓を荷車(大八車)に乗せる件は、先代馬生師が演じたそうです。お父っつぁんに、『だからおめぇは駄目だっていうんだ。実物の大きさなんて、そんなことはどうでもいいんだ。』結城昌治著・志ん生一代より
投稿: 蚤とり侍 | 2017/09/25 21:07
蚤とり侍様
落語関係の人気サイトで、専ら音声や映像で論じているケースがありますが、それはちょっと違うんじゃないかと。
TY中継で歌舞伎を語る人はいないのと同様に、落語もライブ抜きには語れないと思っています。
吉坊と右團治、成るほど、アリですか。
馬生のエピソードは有名ですが、南光の高座では必然性があると思いました。
投稿: ほめ・く | 2017/09/25 21:22