« 阪神タイガースに清宮は要らない | トップページ | 三喬『らくだ』・喬太郎『双蝶々』(2017/10/7) »

2017/10/06

#74人形町らくだ亭(2017/10/5)

第74回「人形町らくだ亭」
日時:10月5日(木)18時50分
会場:日本橋公会堂
<  番組  >
前座・三遊亭まん坊『からぬけ』
柳家さん喬『肝潰し』
桂雀々『代書』
~仲入り~
三遊亭萬橘『看板のピン』
春風亭一朝『三井の大黒』
(全てネタ出し)

さん喬『肝潰し』
体調が悪いという男の所に兄貴分が見舞いにくる。聞けば原因は恋煩い、それも夢の中の美女に恋いしたのだという。往診に来た医者にこの事を告げると、このまま放置しておくと死ぬが、防ぐには亥の年の亥の月の亥の日の亥の刻に生まれた人の生き胆を食べさせるしかないと言う。
思案に困った兄貴分が自宅に戻ると、奉公に出ていた妹が休みを取って帰っていた。世間話をしているうちに、妹が亥の月日時刻が全て揃っていることを思い出す。どうしても弟分を助けたい男は、寝ていた妹を出刃で刺して殺し生き胆を取ろうとするが、寸前についつい涙を流してしまい、それが妹の頬にかかり目を覚ましてしまう。驚く妹に、兄は芝居の真似だったと言い訳をすると、妹は
「兄さんが出刃を持ってるんで、肝をつぶしたよ」
「それじゃ、薬にならねえ」
でサゲ。
元は上方の噺だが、近年では三遊亭圓生の名演で知られる。
なぜこの兄貴がそこまで思い詰めたのかというと、兄が10歳妹が5歳に時に両親を亡くし、物乞いをしながら酷い暮らしをしていた時に、患っている弟分の男の父親が二人を拾って育て上げてくれた。せめてその恩返しにと妹の肝を食べさせて弟分を助けようとしたのだ。
兄妹が昔の辛かった思い出を語り合う場面では、幼い二人が支え合って生きてきたことが観客に伝わり、憐れみを誘う。
さん喬は、こうした心情を描写するのが実に上手い。
このネタは、やはりさん喬だ。

雀々『代書』
これはもう解説不要でしょう。師匠・枝雀の芸を継承した雀々の十八番だ。
抜けているがやたら陽気な男と、生真面目な代書屋との珍妙なヤリトリに場内は終始爆笑。
上から目線だった代書屋が、抜けてる男に次第に振り回されてゆく過程が何とも可笑しい。
人物を戯画化させたら、雀々は天下一品だ。

萬橘『看板のピン』
周囲から尊敬されたのに誰も尊敬してくれないといういつもの自虐ネタのマクラから本題へ。
親分がサイコロを壺に入れる前に、指先で巧みに操って見せる。周囲の男たちはその技に「一つのサイコロがまるで二つにも三つにも見える」と感心する所がミソだ。確かに看板のサイコロを置くには二つ必要になるので、そこをどう誤魔化すのかがずっと疑問だったが、この日で解けた。
こうした点を萬橘はよく考えている。
看板のピンで一儲けしようとした男が仲間の所へ行くと、もんじゃ焼きの真っ最中。それをやめさせて強引にチョボイチを始めさせるのだが、これが決して蛇足にならず薬味のように効いている。
萬橘は古典を一ひねりする演じ方が多いが、この噺では成功していた。

一朝『三井の大黒』
ご存知左甚五郎もの。ただ甚五郎の性格付けは噺によって大きく変わる、共通点は酒好きということだけで、このネタに出てくる甚五郎は少々ボンヤリとした男として描かれる。
それでも仕事場で若い衆から下見板を削るよう命じられると、さすがにカチンと来てか、その日から棟梁の家の2階で寝たり起きたりの生活を始める。
こうした表には出ない心の動きをどう表現するのかが、演者の腕の見せどころだ。
一度は棟梁から上方へ帰るようにと言われるが、小遣い稼ぎに縁起物の恵比寿大黒でも彫ってみてはと言われ、甚五郎が越後屋との約束を思い出す。
これからの甚五郎は次第に名人の風格を表すようになってゆき、その佇まいから棟梁ももしやと察してゆく。
だから三井の番頭が自宅に訪れて甚五郎と分かった時も、さして驚かない。
一朝の高座は、こうした時々の人の心の動きを表現するのが巧みで、好演だった。

この会の趣旨からすると雀々や萬橘はやや異色の感もあったが、こうした顔づけも結構楽しめた。

|

« 阪神タイガースに清宮は要らない | トップページ | 三喬『らくだ』・喬太郎『双蝶々』(2017/10/7) »

寄席・落語」カテゴリの記事

コメント

北海道では黒いキツネが話題となり、東京では緑のタヌキ(♀)が混乱を起こしている今日この頃、如何お過ごしですか?(うつむき加減で、さん喬師風に)
顔付けも然る事ながら、出演順も良い加減ですね。

枝雀師の代書といえば、ガタロよりもポンッが懐かしいです。
懐かしいと言えば、扇橋師の三井の大黒のポンシュウも。
先人からの芸や教えをどう消化して昇華するのをリアルタイムで見続けたいものです。

来週は都合をつけて国立か広小路亭に行きたいと思う、今日この頃です。(ライヴが一番)

投稿: 蚤とり侍 | 2017/10/06 19:47

蚤とり侍様
タヌキというよりはムジナ、小池と安倍首相とは「同じ穴のムジナ」で、いずれ自民と連立に持ち込み総理を目指すのでしょう。
そうそう、雀々は「ポンッ」でエンディングでした。
仰るように落語はライブです。新しい発見に出会える楽しみはライブしかありません。

投稿: ほめ・く | 2017/10/07 04:48

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 阪神タイガースに清宮は要らない | トップページ | 三喬『らくだ』・喬太郎『双蝶々』(2017/10/7) »