安倍首相に、先ず自身の「ファクトチェック」を
以前に見たコント集団「ザ・ニュースペーパー」の一場面を思い出した。
テーブルの上には新聞各紙が並べられていて、その前の椅子に安倍首相に扮した芸人が次々と新聞を手に取って読み始める。
「ああ、産経、いいこと書いてますね」などと言いながら機嫌よく読み進める。そのうち「朝日?」と、今度は手に取った朝日新聞をポーンと後ろに放り投げる。
昨日行われた日本記者クラブ主催の党首討論会でのことだ。
党首討論会で朝日新聞の坪井ゆづる論説委員が、今年7月の予算委員会で、安倍首相が加計学園の獣医学部新設計画を知ったのは今年1月20日だったとした発言について質問した時だ。
安倍はこの問いに直接答えず、「まず、朝日新聞は八田(達夫・国家戦略特区ワーキンググループ座長)さんの報道もしておられない」と返した。
坪井が「しています」と反論すると、
「ほとんどしておられない。しているというのはちょっとですよ。アリバイ作りにしかしておられない。加戸(守行・前愛媛県知事)さんについては、(国会で)証言された次の日には全くしておられない」と述べ、坪井は再度「しています」と反論した。
これについて朝日新聞は、八田の発言に関しては獣医学部新設の決定プロセスを「一点の曇りもない」とした答弁や、「不公平な行政が正された」とする見解を掲載していたと言う。また、こうした国会での発言も含め、10回以上、八田の発言や内閣府のホームページで公表された見解などを掲載してきたとも。
加戸については、閉会中審査が開かれた翌日の7月11日と25日付の朝刊で、国会でのやりとりの詳細を伝える記事で見出しを立てて報じ、「時時刻刻」欄で加戸の発言を引用したと言っている。
こうした事実関係は少し調べてみれば直ぐに分かることで、もし調べていないなら軽々に発言しないことだ。
また、朝日の報道について批判するなら他紙との比較も必要だ。
冒頭のコントじゃないが、自分の気に入らない新聞はあまり読まないか、あるいは印象だけでものを言うから、こういう発言になるとしか思えない。
第一、党首討論会で特定のメディアに逆質問したり批判したりするのは、宰相として自らの器の小ささを天下に示すようなものだ。
「ぜひ国民の皆さんに、新聞をよくファクトチェックしていただきたい」と安倍は呼びかけていたが、その前に自身の「ファクトチェック」が必要だ。
(敬称略)
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