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2017/11/12

「上方落語 戦後復活落語会」(2017/11/11)

第五十五回「上方落語会~上方落語 戦後復活落語会~」
日時:2017年11月11日(土)14時
会場:横浜にぎわい座 芸能ホール
<  番組  >
林家染吉『牛ほめ』
笑福亭鶴二『軽業(笑福亭松鶴の得意ネタ)』
桂米二『風の神送り(桂米朝の得意ネタ)』
《お仲入り》
桂春雨『お玉牛(桂春団治の得意ネタ)』
桂きん枝『悋気の独楽(先代桂文枝の得意ネタ)』

昭和20年の終戦3ヶ月後の11月、大阪での戦後初の落語会が開かれた。当時の上方落語界は落語家が10人切っていて、落語の灯が消えたと言われていた。
そこから上方落語の再興がスタートし、今日の隆盛を迎えた。
その中心となった戦後の四天王の得意ネタを、それぞれの直弟子が演じるという趣向の落語会だ。

鶴二『軽業』
ご存知、上方落語の東の旅の一編で、若手からベテランまで頻繁んに演じられているので、6代目松鶴の得意ネタというのは少し無理がある。
見世物小屋の風景から軽業小屋に移り、綱渡りの芸を見せる。
鶴二の高座は、軽業の大夫が衣装を整える所から綱渡りに入るまでの仕草を丁寧に描き、見せ場の扇子と指で綱渡りに似せる場面に繋げていた。

米二『風の神送り』
戦後、桂米朝により復活した噺で、市販の録音も米朝のものだけと思われる。
あらすじは。
かつて悪性の風邪がはやると「風の神送り」という風習があったようだ。紙で風邪の神の人形を作り、その人形に悪い風邪を手で送り、鐘や太鼓で囃し立てながら川や海へ流す。
「送れ送れ風邪の神送れ、どんどと送れ」とやっていくと、「お名残り惜しい」という奴がいた。誰かと思ったら町内の医者だった。
ある町内に風邪が流行し、若い衆が風の神送りのための寄付を集めに回る。
やっと風の神送りを済ませ人形を川へ投げ込むと、風の神の人形が夜になって魚獲りの網に掛かった。大勢の人の思いが込められたものか、風の神がズーッと立ち上がった。
「なんだお前は」「わしは風邪の神だ」
「それで夜網(弱み)につけ込んだな」でサゲ。
見せ場は、若い衆が顔役の年寄りと一緒に奉加帳を持って町内を回り、寄付を募るところ。気前よく出す家もあれば、渋る家、ケチな家でゃ喧嘩になる。そういったヤリトリの呼吸を巧みに描写した米二の高座。

春雨『お玉牛』
初見。テーマは「夜這い」で、かつては伝統的な風習だったようだ。
春雨の解説によれば、語源は「呼ばう」で女性が好みの男性を誘う所から来ているそうだ。だから女性に主導権があるわけだ。男の方はそれに応じて夜分に女性の寝所に忍びこむ。ただ、当時は言葉に出すわけにはいかず、女性はアイコンタクト江サインを送っていた。中には勘違いして勝手に誘われたと思い込み忍んで来る男も出てくる。そうした時は、家の戸を厳重に締めておいたり、時には父親が見張っていて、男を追い返す事もあった。
どうも、こういうテーマになると力は入るので、長くなってしまった。
3代目春団治が得意としていた噺のあらすじは。
ある村に、お玉という器量よしがいた。村の男たちは、集まってはお玉の噂。
そこに源太が現れ、手に持っていた鎌で脅してウンと言わせたと、今晩お玉の寝所に忍ぶんだと自慢する。
一方、帰宅したお玉は、泣きながら両親に源太の乱暴ぶりを訴えると、父親は大いに怒り、一計を案じて源太を懲らしめることにする。
お玉を父親の部屋に寝かせ、お玉の寝所には牛を寝かせその上から布団をかぶせておいた。
そうとは知らず、期待に胸を膨らませた源太は夜中にお玉の寝所に入り込んで、暗闇の中で布団をまくり、中をまさぐる。
髪をお下げにしてと感激するが、実は牛の尻尾。
そうとは知らず源太は反対側に手を伸ばせば、大きな簪が2本。これは高価なものだと喜ぶが、実の牛の角。
角を引っ張られた牛は目を覚ませ、「モオオオ」と大きなうなり声を上げると、驚いた源太はお玉の家を飛び出し、兄貴分宅に転がり込む。
兄貴分が「誰やと思たら源太やないかい。お玉を『うん』と言わしたか」と訊けば、源太は、
「いいや。『もう』と言わしてきた」でサゲ。
他愛ないストーリーだが、お玉だと信じ込んだ源太が、牛の体のあちこちをまさぐる所が見どころ。
扇子や手拭いを使って、上手下手に動かしながら表現するのだが、これが実に可笑しい。
例の羽織をシュッと脱ぐ動作を含め、師匠の姿を彷彿とさせるような春雨の高座だった。

きん枝『悋気の独楽』
名前は以前から知っていたが、ライブでは初めて。
東京の高座でもお馴染みのネタだが、筋の運びは少し違う。
冒頭で、奥方が主の浮気を疑い、店の奉公人に主の行き先を尋ねるが、却ってあしらわれてしまう。気落ちして部屋に戻ると、女中が主には丁稚の定吉が同行しているので、帰ってきたら定吉を詰問して事実を確かめると奥方を慰める。
一方、妾宅にいた主は、定吉に今日はお得意で碁を囲むから遅くなると奥方に伝えるよう言い含め、店に返す。
店に戻った定吉、最初は主の言いつけ通りに言い逃れするが、奥方がお使いのお礼にと言って出してくれた饅頭を食べるお、そこには熊野の牛王が入れてあり嘘をつくと血を吐いて死ぬと脅される。1円の小遣い欲しさも手伝って主の妾宅を白状してしまう。
奥方が定吉に懐に入っている独楽をださせて回させ、主に見立てた独楽が奥方か妾のどちらの独楽に着くのか試す。
何度やっても主の独楽は妾の独楽にくっついてしまう。
「キイー、腹の立つ。定吉! もう一遍やんなはれ」
「こら、あきまへんわ」
「なんでやの?」
「へえ、肝心のしんぼう(心棒/辛抱)が狂うてます」でサゲ。
人物設定と筋だては東京と同様だが、奥方の言いつけで定吉が主の後をつけて妾宅に行く場面がなく、妾宅でのヤリトリも短い。
その代りに、定吉が店に戻ってから奥方と女中から詰問されて、次第に事実を打ち明けるまでの過程が長い。
全体として東京はあっさり演じているが、上方版はネットリとしている。
きん枝の高座は、本妻と妾、女中、店の奉公人たち、定吉といった多彩な人物がきちんと演じ分けされており、良く出来ていた。

最近、上方落語に接する機会が増えてきたが、若手から中堅ベテランに至るまで充実している。
東京の噺家もウカウカしていられまい。

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