「桂雀三郎・春風亭昇太」(2017/11/14)
第十四回「雀昇ゆかいな二人」
日時:2017年11月14日(火)19時
会場:横浜にぎわい座 芸能ホール
< 番組 >
開口一番・桂米輝『動物園』
春風亭昇太『力士の春』
桂雀三郎『哀愁列車』
春風亭昇太『看板の一』
~仲入り~
桂雀三郎『質屋蔵』
横浜にぎわい座で年に1回定期的に行われる「桂雀三郎・春風亭昇太二人会」、毎回人気で14回目のこの日も満席だった。
昇太がマクラで振る「笑点」ネタや独身ネタに客の反応がいいのは、番組ファンが多いからか。
二人とも前半は新作、後半では古典落語を披露した。
昇太の1席目『力士の春』
マクラで早速日馬富士の不祥事を織り込んで、その後は昇太自身の中学から高校に掛けての部活動の話題に。高校のソフトボール部時代のエピソードは面白かった。
これら2つの話題を組み合わせた様なストーリーで、息子を立派な力士に育てようとした両親によって、まるで相撲取りの様な小学生になった男の子の話。
マクラが本題でネタは付け足しの様な構成だったが、会場は大受け。
昇太の2席目『看板の一(ピン)』
昇太の落語の特長は何となく可笑しいという点にある。落語が上手いかと言われれば、そう上手いとは思えない。
このネタもそうだが、得意としている『花筏』『権助魚』なども別にクスグリを入れるわけでもないし、変な恰好したり奇声を上げたりするわけでもないのに、とにかく可笑しい。
これは落語家としては大事な資質だ。
本人も認めているように人情噺だの大ネタだのには挑戦しない。ひたすら軽い滑稽噺を演じることに徹している。
仕事の面でも人生においても、自らに対し余計なプレッシャーを掛けないことが、若さを保つ秘訣なのかも。
雀三郎の1席目『哀愁列車』
いつもの本職は歌手、落語はアルバイトと自己紹介から始まる。歌の『ヨーデル食べ放題』はヒットしたが、落語のCDはさっぱり売れないとも。
失恋して北に向かう列車に乗った若者。向かいの席に美女が現れるのを期待していたが、席に座るのは老婆や子ども連れの母親、次はと期待したが酔っぱらい男。
そんなストーリーで、若者と乗客との珍妙な掛け合いd楽しませていた。
雀三郎の2席目『質屋蔵』
登場人物の演じ分けより、物語をスピーディに展開させるのを重視した演じ方だった。
このネタは、質屋の主が質草に質入れした人の思いが込められていることを例え話で番頭に語る場面、定吉が熊五郎を騙して煎り栗をせしめる場面、熊五郎が質屋から酒や漬物の樽を持ち去った事を白状する場面、三番蔵から幽霊が出ると聞いて熊五郎が急に怯える場面、熊五郎と番頭が蔵の前で飲み食いする場面、そして最後の蔵の中で幽霊が出るのを主が見つける場面と、見所が多い。
雀三郎の高座は、それぞれの見せ場を着実に描いていたが、質草は3ヶ月経過すると利上げしないと流されてしまうというルールや、菅原道真が政敵の陰謀で大宰府に流されたという故事の説明があった方が親切だったろう。
そうでないと、サゲの意味が分からない人もいただろう。
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コメント
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昇太は開き直っています。もとより、江戸前でしゃべることは出来ない。
その代わり、時事問題を導入したりして知的に整理された噺をコミカルな語り口で勝負する。「笑い」の場面を鮮やかに魅せる。いわゆるラジオのDJ的才能です。
(それでも、前座時代に話していたら、楽屋で「こいつ落研だろ」と言われた時にはヘコんだそうです)
投稿: 福 | 2017/11/15 20:28
てってって・・・・・底辺×高さ÷2
御隠居、てぇへんだ
歌之介(師)が圓歌を継ぐってぇ話を(客席放浪記より)聞きましたが、何か御存じですか?
寄席や協会のHP以外での落語関連の情報は、ほめ9さんと客席放浪記さんだけなもので
投稿: 蚤とり侍 | 2017/11/15 20:34
蚤とり侍様
圓歌襲名の事は全く知りません。
襲名をするとすれば歌之介か歌奴が順当でしょうが、3代目は弟子が多いのでどうなりますか。
投稿: ほめ・く | 2017/11/15 22:26
福様
にぎわい座は2階席がありますが、2階席にも顔を向けて喋るのは昇太ぐらいでしょう。
こうしたサービス精神は見習う必要があると思いました。
投稿: ほめ・く | 2017/11/15 22:43
こういう噺家もいいですね。
客席の笑いが聞こえるようです。
投稿: 佐平次 | 2017/11/16 10:37
佐平次様
コアの落語ファンは足を運ばないと思いますが、こういう気軽に笑える会も好きなんです。
投稿: ほめ・く | 2017/11/16 18:26