「通し狂言 隅田春妓女容性」(2017/12/13)
国立劇場12月歌舞伎公演
「今様三番三(いまようさんばそう)」
大薩摩連中
長唄囃子連中
源氏の白旗を奪った平家の姫君(中村雀右衛門)が、源氏の武士たちを「布晒(ぬのさらし)」の舞で追い払うという舞踊。
「布晒」というには新体操のリボン運動と同様で、2枚の長い布を両手で地面に先が落ちぬよう巧みに振り回す。重い衣装にカツラ姿で、しかも舞踊として美しく踊る所が見ものだ。
並木五瓶=作
国立劇場文芸研究会=補綴
「通し狂言 隅田春妓女容性(すだのはるげいしゃかたぎ)」 ―御存梅の由兵衛(ごぞんじうめのよしべえ)― 三幕九場
序幕 柳島妙見堂の場
同 橋本座敷の場
同 入口塀外の場
二幕目 蔵前米屋店先の場
同 塀外の場
同 奥座敷の場
本所大川端の場
大詰 梅堀由兵衛内の場
同 仕返しの場
< 主な配役 >
中村吉右衛門=梅の由兵衛
尾上菊之助=女房・小梅/弟・長吉
中村雀右衛門=芸者・額の小三
中村錦之助=金谷金五郎
中村歌六=源兵衛堀の源兵衛
中村又五郎=土手のとび六
中村歌昇=延紙長五郎
中村種 助=芸者・小糸
中村米吉=米屋娘・お君
中村吉之丞=医者三里久庵
大谷桂三=曽根伴五郎
ほか
1796年(寛政8)1月江戸桐座で、3世沢村宗十郎の由兵衛、3世瀬川菊之丞の小梅と長吉などにより初演。
元禄時代の大坂で、梅渋の吉兵衛という悪漢が丁稚長吉を殺して金を盗んだ事件を元に、主役を侠客として脚色した「梅の由兵衛物」もの。
メインストーリーは若旦那の金谷金五郎のため金策に苦しむ由兵衛が、女房小梅の弟長吉が姉に頼まれてこしらえたとも知らず、大川端で長吉を殺して金を奪う、という筋(すじ)を骨子として、小梅に横恋慕する源兵衛堀の源兵衛との達引を描く。
これにサイドストーリーとして、お家の家宝である「菅家手向山の色紙」の盗難事件をめぐって忠臣と逆臣との争いが、金五郎が恋い焦がれる芸者小三の身請け話と、それを邪魔する曽根伴五郎との諍いに絡んでゆく。
「日に千両 散る山吹は 江戸の花」
「日に三箱 鼻のうえした 臍のした」
江戸の町には、日に千両の金が動いた場所が3か所ある。吉原、魚河岸、そして芝居(歌舞伎)だ。
吉原が男の遊び場だったのに対し、芝居は「女こども」という言葉通り女性が多く、落語でもお馴染みのように定吉のような小僧が主人の目を盗んでこっそりと一幕ものを観るようなこともあったようだ。
歌舞伎というと何か難しいと感えられている向きもあるようだが、決してそんな事はない。そんな難しいものを当時の江戸の人が好んで観るわけがないのだ。
入場料が高いと思われているようだが、この日の料金は5500円。一階席の端のブロックではあったが前から5列目の通路側で、舞台はよく見えた。
近ごろの落語会の料金と相対比較しても、決して高いとは思えない。
この狂言では凄惨な殺しの場面や、誤って女房の弟を手に掛か手しまった主人公と女房の愁嘆場、女たちの夫や恋する男への一途な思いといった見せ場も、芝居の各所に出て来る笑いの場面があるから生きてくる。
何より由兵衛を演じた吉右衛門の颯爽した侠気が見ものだ。とても気分良さそうに演じているのが客席にも伝わってくる。
菊之助は、大川端の場面で姉の名を叫びながら殺害されてゆく長吉の無念さ演じ、姉の小梅との二役では早変わりで客席を沸かせる。
雀右衛門が元は武家の妻という芸者役で風格を見せ、若手の米吉の娘姿が可憐。
公演は26日まで。
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