「田茂神家の一族」(2017/12/26)
東京ヴォードヴィルショー第71回公演『田茂神家の一族』【東京凱旋公演】
日時:2017年12月26日(火)14時
会場:紀伊國屋ホール
【作】三谷幸喜
【演出】山田和也
【音楽・演奏】園田容子
【 主なキャスト 】
田茂神嘉右衛門(前村長) /石倉三郎
たか子(嘉右衛門の長男の妻)/あめくみちこ
健二(嘉右衛門の次男)/佐渡稔
三太(嘉右衛門の三男)/佐藤B作
四郎(嘉右衛門の四男)/市川勇
常吉(嘉右衛門の弟) /石井愃一
茂(嘉右衛門の弟の娘婿)/角野卓造
井口(三太の選挙コンサルタント)/まいど豊
【その他の出演】
たかはし等・山本ふじこ・瀬戸陽一朗・中田浄
市瀬理都子・京極圭・玉垣光彦
村田一晃・大迫右典・石川琴絵
小沼和・喜多村千尋・平田美穂子
2015年初演の三谷幸喜書き下ろし作品『田茂神家の一族』の再演。
舞台はある地方の人口わずか105人の村。
24年間村長をつとめた田茂神嘉右衛門が事故で重傷を負ったため村長選に出馬できず、後継者と見られた長男も事故死。
そこで急遽、嘉右衛門の息子たちや弟、長男の未亡人らが立候補することになった。そこに東京で学者をしていた嘉右衛門の弟の娘婿も候補に加わり乱戦となる。
誰が当選しても田茂神家だが、結果はこの一族の主導権にも拘わるので、みな必死だ。
この日は村民お相手に合同演説会とあって激しい論戦が展開されると思いきや、訴えるべき政策もないので、自然と相手候補のスキャンダルを暴き合うネガティブキャンペーン合戦の様相を呈する。
票読みでは次男と三男が拮抗していたが、そこに重傷だった筈の嘉右衛門が現れ、村長選に立つという。こうなると村内の企業との強いパイプを持つ前村長が圧倒的に優勢だ。
これに対抗するために、息子たちは連合し候補者調整を行って父親に対抗しようとする。
ここまで選挙の圏外と見られたいた学者の茂が、自らが開発したヒューマン・ヴァイマス・エネルギーを使った発電所をこの村に建設し、村おこしすると宣言する。
これで形成は一変し、茂が次期村長に決まりかかるが・・・。
政策より人的なつながりや利害で動きがちな地方選挙への揶揄や、戯曲が書かれた時期を考えれば民主党政権の誕生と、その後の自民党による政権奪取も織り込まれているようだ。
スキャンダル暴露合戦を通じて、一人一人の生活実体を浮かび上がらせるという手法は巧みだし、会場は大受けだった。
しかし、カーテンコールで佐藤B作語ったのは、福島出身の佐藤が三谷に福島を舞台にした作品を依頼したし、出来たのがこの「田茂神家の一族」だと。
そうなると、茂が村に持ち込もうとしたエネルギー政策とは原発だったことになり、茂は中央政府そのもだったことになる。
ドタバタ劇のように見えて、作者の深い意図が窺える芝居だ。
公演は28日まで。
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