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2018/02/14

文楽「女殺油地獄」(2018/2/13)

文楽2月公演第三部「女殺油地獄(おんなころしあぶらのじごく)」
日時:2018年2月13日(火)18時
会場:国立劇場 小劇場

近松門左衛門=作
徳庵堤の段
河内屋内の段
豊島屋油店の段
同   逮夜の段

出演者は下記の通り(クリックで拡大する)。
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<主な人形役割>
河内屋徳兵衛:吉田玉也
   女房・お沢:吉田勘彌
   息子・与兵衛:吉田玉男
豊島屋の女房・お吉:吉田和生

あらすじ。
大阪天満の油屋、河内屋の主人・徳兵衛は番頭あがりの婿入りで、それを良いことに義理の息子・与兵衛は増長し、店の有り金を持出しては放蕩三昧。
母親のお沢と徳兵衛は懲らしめのために与兵衛を勘当したものの、小遣い銭に事欠いては不憫であるとして、同じ町内の油屋、豊島屋の女房お吉を通じて密かに銭を与えていた。
それでも遊ぶ金に困った与兵衛は義父の偽判を用いて借金をする。返すあてなどない与兵衛は、日限に責められてお吉に無心をするが断られ、ついにお吉を惨殺し店の掛け金を奪って逃げる。
お吉の三十五日の供養に列席していた与兵衛だが、天井でネズミが暴れ、殺しの現場で与兵衛がお吉の血潮を拭った古証文を落とす。それには動かぬ証拠として与兵衛の署名があり、悪事が露見した与兵衛は召し取られる。

近松門左衛門の作ながら江戸期には再演されず、明治になってから作品が評価されるようになったようだ。
明治末に歌舞伎で上演され、人形浄瑠璃としては昭和37年が初演ということだから新しい演目といえる。
近年になって評価が高まったのは、この作品の持つ奥の深さだと思う。

劇中ではカットされているが、河内屋の前の主は若くして亡くなり、その時に長男は7歳、次男である与兵衛は4歳だった。後家となったお沢は番頭の徳兵衛を婿にするのだが、幼い与兵衛としては実父を失い母親が再婚するという現実を受け容れなかったのだろう、グレてしまうのだ。
お沢は与兵衛の不行状に怒りながら、一方で息子が不憫でならない。主人の徳兵衛は以前は奉公人だったという負い目があり、与兵衛には遠慮がちだ。

この時点の与兵衛は23歳、豊島屋のお吉は27歳。双方とも油屋で同業者であり、与兵衛にとってお吉は姉の様な存在だったろうし、甘えられる相手でもあった。あるいはほのかな恋心を抱いていたかも知れない。
そうした気配も感じたお吉の夫にとっては心穏やかではない。
そうした両者の関係も事件の背景となってゆく。

親の名前を勝手に使って金を借りた与兵衛、返せねば親に迷惑がかかる。さりとて返済のあてのないまま日限を迎えてしまい、お吉宅に赴く。
そこに両親が来ていて、与兵衛のための小遣いとしてお吉に金を渡すのを覗き見してしまう。
両親が帰ったあとで与兵衛は一人お吉に、今度こそ真人間になるのでこの度だけは借金を用立てて欲しいと頼み込む。この時、与兵衛は本心から出た言葉だろう。
しかし、お吉としては主人が留守の間に与兵衛に大金を貸すわけにはいかない。断るお吉に懇願し続ける与兵衛。
遂に与兵衛はお吉を脇差しで殺害し、金を奪ってしまう。

事件の起きる前に、お吉が娘たちのために蚊帳をつってあげる。旧暦の端午の節句の頃には蚊が出ていたのだ。
これは落語の「二十四孝」でもお馴染みの、呉猛の親孝行の逸話とかけたもの。
与兵衛の悪事が露見し捕まるのが、お吉の三十五日の忌日の前夜である「逮夜」。
季節の移ろいも晩春から初夏という趣向。
当時の社会体制を反映した、いかにも近松の作品らしい芝居だ。

最大の見せ場は、与兵衛がお吉を殺害する場面だ。
店先で油の壺から桶に小分けしているお吉の背後から、脇差を抜いた与兵衛が近づく。油に映る刃の光に驚くお吉が逃げようとするのを与兵衛が斬りかかる。一瞬の静寂の後に、油をまきながら逃げ惑うお吉に与兵衛は何度も斬り付ける。
油で滑りながらの殺しの場面は人形が激しく動き、観ていて手に汗を握る思い。
これほどの凄惨な殺しの場面は他にないだろう。
太夫の語りと三味線が、緊迫した舞台をいっそう盛り上げていた。

聴きごたえ見ごたえ十分。結構でした。

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