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2018/03/04

鈴木衛士”北朝鮮は「悪」じゃない”

Photo鈴木衛士”北朝鮮は「悪」じゃない” (幻冬舎ルネッサンス新書-2017/12/25初版)

中東にイスラエルという国がある。主に米国からの軍事・経済両面にわたる援助で支えられている。
中東唯一の核保有国として周辺国を威圧し、しばしば他国を攻撃する一方で、数々の国連決議に反して武力で領土を拡大し続けている。
先年、ツアーでイスラエルを訪問した際に、現地ガイドに何故この様な行為を行うのかを訊いてみた。
答えは、イスラエルの人たちは怖くて仕方が無いのだという。いつまたホロコーストの様な事態になり、民族が絶滅させられてしまうのか、その恐怖心なのだという。
過去の歴史から守ってばかりいては助からない、こちらから攻撃を仕掛けることによってしか自らを守ることが出来ないと、そう考えているのだと。
そうした事から私は、もしかすると北朝鮮も同じ立場に置かれているのではと想像していた。きっと、怖くて仕方ないのだろうと。

本書の著者は約30年にわたり航空自衛隊の情報幹部を務めた人物で、その経験から今の北朝鮮の現状や、アメリカや中国の動向、さらには日本が置かれている状況と今後どうすべきかをまとめたものだ。
北朝鮮を理解する上での最も大事なキーワードは「朝鮮戦争」だ。
1950年に朝鮮戦争は第二次世界大戦をひきずる様な形で始まり、最終的にはアメリカと中国の代理戦争の様相を呈していった。
1953年にようやく休戦協定が結ばれるが、韓国はこれを拒否し協定に加わらなかった。
いずれにしろ朝鮮戦争は未だ終結しておらず、平和協定が結ばれるまでは厳密にいえば双方の戦争状態は続いている。

北朝鮮が置かれている状況は、朝鮮戦争当時とは一変している。
当時はソ連の核の傘にあったのだが、そのソ連は崩壊した。
中国とは文字通り「血の同盟」によって結ばれていたが、その後の中国の改革開放により経済は資本主義化してしまい、必ずしも固い絆とは言えない。
そこに降ってわいたのはアメリカによる湾岸戦争であり、イラク戦争だ。
イラクが完全に破壊され、サダム・フセインが処刑されるのを見て、金正日は震え上がった。
もはや我が身を守るには核兵器の保有しかないと、核開発を一気に推し進める。
だから核保有は北朝鮮にとっては命綱であり、核を放棄させることなど不可能だと著者は述べている。
恐らくは、アメリカや日本政府も本音ではそう思っているのだろう。

著者の見方で面白いと思ったのは、北朝鮮をめぐる現在の情勢が関係国にとって有利であるという指摘だ。
即ち、アメリカにとっては日本や韓国に米国製の武器を大量に売りつけるチャンスで国益にかなう。
中国は、北朝鮮が経済制裁を受けていることにつけこんで、北が保有する希少な資源を手に入れたり、港湾の使用権を確保したりして潤っている。
ロシアは高みの見物で、むしろ米中が争って互いの国力が弱まるのを待つ。

日本はといえば、先の総選挙で自民党が大勝したことについて麻生副総理が「北朝鮮のお陰」と語ったが、本音だろう。
著者によれば、北朝鮮が核実験やミサイル実験を行う度に日本政府が「挑発」だと騒ぐのはおかしいのだと言う。挑発というのは相手国が反撃することを前提としているので、この表現は不正確だという。
核やミサイルを開発する過程で実験を行うのは当り前のことで、敢えていうならば「示威活動」が正しい。
北がミサイルを発射すれば自衛隊は直ちにミサイルの発射地点と目的地を調べる。その段階で日本本土上空数百キロメーターを飛行することが分かれば、落下物は先ずあり得ないと判断できる。
その情報は直ちに政府に伝えられている。
ところが日本政府は北朝鮮がミサイル実験を行うたびに、「Jアラート」という警報や避難訓練まで呼びかけているが、こうした過剰な反応は国民の危機意識を煽るのみならず、却って国益を損なう危険性を指摘している。

最も恐れるのは、米国と北朝鮮の首脳が似た者同士なので、チキンレースの中で米国が北に武力攻撃を行うケースだ。
北朝鮮は報復措置として日本に向けて核弾頭付ミサイルを発射してくる可能性が高い。
これが最悪のケースだ。
そうならないように、日本政府は北朝鮮との交渉を積極的に進めるべきだと著者は言う。
そして拉致問題の解決にとって今が絶好な機会だと、具体的な条件をあげて主張している。
米国に対しては「和して同ぜず」で臨み、北朝鮮に対しては「窮鼠」に追い込むことのないようにすべきだと言う。

余談になるが、著者らしい面白い見方を紹介する。
それは、仮に米中が妥協して北朝鮮に金政権に替わる政権が成立するならば、それは中国の傀儡政権になるだろう。
その政権は日本の安全保障にとっては遥かに危険な存在になる。
それよりは、北朝鮮の現在の政権が続いた方が我が国にとっては有利だと。

著者の主張には全面的に賛成するものではないが、北朝鮮問題の解決を考える上で一つの参考になるだろうと思い、紹介した次第。

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コメント

同感です。
世界中に恫喝と挑発を繰り返しているのはアメリカ例外主義ですね。

佐平次様
イスラエルこそ「ならず者国家」です。
国連で北朝鮮の核実験を非難する決議を行った際に北の代表が、「核実験の99.9%は国連常任理事国によって行われたきたのに、なぜ我々だけが非難されねばならないのか」と反論した。
著者は、この点だけは北朝鮮に理があると言ってます。

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