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2018/03/07

「白酒X兼好」(2018/3/6昼)

「白酒X兼好~毒を盛って毒を制す~其の二・昼の部」
日時:2018年3月6日(火)14時
会場:博品館劇場
<  番組  >
『オープニングトーク』白酒、兼好
桃月庵白酒『浮世床』
三遊亭兼好『一分茶番(権助芝居)』
~仲入り~
三遊亭兼好『粗忽の使者』
桃月庵白酒『明烏』

『オープニングトーク』で話題になっていた、三遊亭好楽の弟子で5月に真打ちに昇進する三遊亭好の助が好楽の前名でもある林家九蔵に襲名することに対し、林家正蔵側が異議を唱え襲名が取りやめになった問題。
ここで三遊亭好楽の経歴を見ると、次の通りだ。
1966年 8代目林家正蔵に入門、のぶおで前座。
1967年 のぶおから九蔵に改名
1971年 九蔵のまま二つ目
1981年 九蔵のまま真打
1982年 師匠・彦六死去
1983年 5代目圓楽門下に移籍して、三遊亭好楽に改名。同時に落語協会を脱会し、大日本落語すみれ会(現在は円楽一門会)へ移籍
真打昇進前に師匠が死去したなら別だが、好楽は真打昇進後に自分の意思で圓楽門下に移籍し、同時に協会からも離れている。
して見ると、その段階で林家一門からは外れたわけで、いくら愛着があったとはいえ、弟子に林家を名乗らせるのはムリ筋というものだ。
例は悪いかも知れないが、もし三遊亭遊雀が弟子に柳家三太楼を襲名させようとしたら、柳家側は黙っていないだろう。
今回の問題では当代の正蔵に非があるような意見もあるが、公平に見て好楽側に瑕疵があると思う。
例の圓生襲名問題でもそうだったが、どうも圓楽一門のやり方は強引すぎる。

もう一人話題の桂春蝶、自身のTwitterに「この国での貧困は絶対的に『自分のせい』なのだ」と書きこんで批判を浴びているが、数年前の極右活動家のサイトに桂福若とともに「愛国落語家」として紹介されていた。正札付である。
こういう落語家もいるのだ。

白酒『浮世床』
この日は「本」のみだったが、話芸より顔芸で客席を沸かせる。
白酒のこのネタだけはCDでは面白さが伝わらないだろう。

兼好『一分茶番(権助芝居)』
マクラで、兼好の祖母と母が能をしていたそうで、子どもの頃から能を見ていたとのこと。謡の一節と狂言の一部を演じてみせたが上手いもんだ。こうした素養がこの人の芸の肥しになっているのを実感。
素人芝居にありがちな役モメで舞台に穴が開き、困った番頭が故郷の村で芝居に出たことがあると言う権助に一分渡し代演を頼む。
権助の村での芝居は忠臣蔵の七段目で役はお軽だったというが、これが滅茶苦茶な芝居で、この前半で切る時は『権助芝居』の演題となる。
後半は番頭が権助に芝居の稽古をつける所から始まる。
出し物は『有職鎌倉山』で、権助の役は宝蔵に忍び込んで鏡を盗み出し、捕まって縛られ首を斬られるという非人の権平だ。
役回りを聞きながら権助は何度も渋って一分を返そうとするが、番頭が説得し舞台に上げる。
しかし権助はセリフは忘れるし客席からのヤジに応酬するし、果ては立ち回りで相手の捕り方の役者を本気で殴ってしまう。
相手も怒って権助を本気で縛り上げて腕をこじ上げ、セリフで「誰に頼まれた」というと、権助が「番頭さんに一分貰って頼まれた」でサゲ。
兼好は、特に後半の番頭と権助との珍妙なヤリトリや、芝居の場面でのセリフや所作の間の権助の動態を巧みに表現していて、良い出来だった。

兼好『粗忽の使者』
マクラで、若い頃に築地市場でアルバイトしていたことがあり豊洲への移転問題にも関心があると、その豊洲市場で駐車場が5100台分不足しているというのは考えられないミスだ。優秀であることと粗忽であることが同居している例のようだ。そんなマクラからネタへ。
主人公の粗忽の侍だが、とにかく憎めない。特に兼好が描くと可愛くさえ見える。相手先の重役とのヤリトリの可笑しさが増幅されていた。
ただ、重役の名前を山田三太夫としていたが、あれは田中の間違いではないか。

白酒『明烏』
若旦那の時次郎、神社の帰りに道に迷い、近所の子供に家まで連れてきてもらう。どうやら堅物だけではなく、引きこもりだったようだ。
お稲荷さんが吉原だったことが分かった後では、まるで幼児の様に泣きじゃくる。二宮金次郎には心酔していて、太助から「二宮金次郎だって女郎買いをしていた」と言われて本気で怒る。
こういう人物だから、浦里花魁の手練手管に一晩でいかれてしまったんだろう。
時次郎の様なタイプは、いったん遊びを覚えてしまうと歯止めが利かなくなるので要注意だ。

兼好は、いま演じることが楽しくて仕方ないんだろう。
そんな印象を受けた。

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コメント

やがて兼好は一門を背負って立つようになるでしょうね。
「東京かわら版」の連載随筆も見事、仕事を終えて帰るとマンションがエレベーター工事中で、重い荷物を抱えて上の階まで歩いて行く無念さの描写はチャップリン的なペーソスが漂っています。

福様
兼好は既に圓楽一門の看板になりつつあります。
芸域をどんどん拡げているようですし、いずれ人情噺にも挑戦するでしょう。

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