「よみらくご」(2018/4/24)
第14回「よみらくご」
日時:2018年4月24日(火)18時30分
会場:よみうり大手町ホール
< 番組 >
春風亭正太郎『引越しの夢』
三笑亭夢丸『鷺取り』
神田松鯉『天保水滸伝より笹川の花会』
~仲入り~
古今亭文菊『夢の酒』
柳家権太楼『百年目』
(権太楼以外は全員ネタ出し)
この会の良い所は前座を出演させないこと。
前座を出す落語会が多いが、なんで下手な落語をじっと聴いていなくちゃいけないのか分け分からん。それより開演時間を繰り下げるか、終演時間を早めた方が客のためだ。どうしても前座を出したいなら、寄席と同じにして開演前に上げればいい。
正太郎『引越しの夢』
元は上方落語の『口入屋』を東京に移したもの。東京でも9代目文治は『口入屋』のタイトルで演じていたが、現在はこのタイトルで演じるケースがほとんだと思う。
違いは、『口入屋』では前半に店の小僧が桂庵から器量のいい奉公人を連れ帰ってくる場面が加わる。
正太郎はこの会は初とのこと。2016年に「讀賣杯争奪二ツ目バトル」で優勝したそうだから、満を持しての出場ということになろう。
この人らしい真っ直ぐな高座で、通常の出来だと思ったが、客席の受けはイマイチだった。
印象としては、会場の大きさに負けていたかな。つまり会場の広さに応じた高座になっていなかったかなと。
これから場数を踏んでいけば、自然に身について行くのだろう。
夢丸『鷺取り』
これも元は上方ネタで、舞台をそのまま東京に移して演じられている。サゲが、布団の四隅を持った坊主の所に男が飛び降りて、勢いで4人の坊主が頭をぶつけあい死んでしまうというのがオリジナル。それに対して、頭をぶつけあって火花が飛び、それが周囲に燃え移って火事になるというものもある、夢丸は後者だった。
夢丸の明るい芸風とネタが合っていて、楽しく聴かせていた。
松鯉『天保水滸伝より笹川の花会』
ご存知『天保水滸伝』の内、笹川繁蔵が開いた十一屋での花会を描いたもの。錚々たる大親分が集った中で、繁蔵と対立していた飯岡助五郎だけが子分を名代で出席させて恥をかく所を、繁蔵がフォローするという箇所だ。
所詮はヤクザ同士の抗争だが、天保水滸伝では飯岡助五郎が悪ものにされている。二足の草鞋を履く強欲な親分という設定だ。
こういう演目はやはり松鯉の様なベテランが演らないと恰好がつかない。貫禄を示した一席。
天保水滸伝、NHKの大河ドラマでやらないかな。西郷どんよりずっと面白いと思うけどね。
文菊『夢の酒』
私も家族に言えないような夢を見ることがあるので、この噺にはリアリティがある。それを若旦那が女房にペラペラしゃべるから話がややこしくなるのだ。倅を誘惑したと夢の中に入ってまで意見をするつもりでいた大旦那も、相手の女性の前では酒の燗を待つばかりとは、この夢の中の女性ってよほど魅力的だったんだろう。そこを文菊は十分に伝えていた。
この日改めて感じたのだが、このネタの文菊の声の出し入れや強弱が、先代の文楽を思わせる。
もうちょっと軽く演じれば、さらに良くなると思うのだが。
権太楼『百年目』
権太楼だけがネタ出ししていなくて、さて、今日は何を演るのか楽しみにしていたら『百年目』で大当り。
ストーリーは解説不要。
ちょいと桜の時期は外したが、やはりこのネタは春だし、春に一度はこのネタを聴きたい。
過去に数々の名演があるが、現役では権太楼がベストだろう。
満足のうちに終演。
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いつも楽しく読ませていただいております。
前座のこと、まさにその通りです。落語会に行っても寄席に行っても、映画に行っても、すぐに眠くなるのです。年のせいかと思っていましたが、どうも、前座や予告編で望みもしないものを見せられたリ、聞かされたりするからに違いありません。寄席なら仕方がありません。早く行った私が悪いのですから。また、夢心地から徐々に覚醒させてくれるのもいいものです。
ところが、落語会や映画はそうはいきません。すぐにお目当てなので、最初から覚醒していたいのです。
前座にも勉強の場をというなら、仰々しくブザーを鳴らして扉を閉めてからではなく、出入り自由で明るい客席の中でやってほしいもの。それこそ、本当の勉強になるでしょう。(若じいじ)
投稿: 若じいじ | 2018/04/26 04:49
若じいじ様
ようこそ。
以前に「落語会に前座を出すな」という記事を書き、賛同のコメントも頂きましたが、相変わらず多くの会で前座を出しています。
見習いの稽古に、強制的に付き合わされるなんて、理不尽でしかありません。
投稿: ほめ・く | 2018/04/26 10:27