「百年の秘密」(2018/4/26)
ナイロン100℃ 45th SESSION「百年の秘密」
日時:2018年4月26日(木)
会場:本多劇場
脚本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
< 主なキャスト >
犬山イヌコ:ティルダ・ベーカー/ニッキー(ティルダのひ孫)
峯村リエ:コナ・アーネット(ティルダの同級生)/ドリス(コナのひ孫)
みのすけ:チャド・アビントン(同上)
村岡希美:リーザロッテ・オルオフ(同上)
大倉孝二:エース・ベーカー(ティルダの兄)
廣川三憲:ウイリアム・ベーカー(ティルダの父)
松永玲子:パオラ・ベーカー(ティルダの母)
山西惇:フォンス・ブラックウッド(ティルダの夫)
萩原聖人:カレル・シュナイダー(コナの夫)
泉澤祐希:フリッツ・ブラックウッド(ティルダの息子)
伊藤梨沙子:ポニー・シュナイダー(コナの娘)
長田奈麻:メアリー(ベーカー家の女中)
藤田秀世:カウフマン(リーザロッテの夫)
菊池明明:ヴェロニカ(エースの恋人)
ストーリーは、ティルダとコナ、同級生で親友同士の二人の女性とその家族、さらにはその周辺の人々の人生を描いたもの。最後は二人のひ孫まで登場するので、およそ百年の時を経ることになる。
もう一つの主人公は、ティルダの実家の庭にそびえる1本の楡の大木で、この木の下で繰り広げられる人間ドラマを見守っている。
登場人物はみな市井の人々で、どこの家庭でも起こり得るような幸せや揉め事が繰り広げられる。そして他人には言えない秘密を抱えていて、それが様々な不幸を招く元になってゆく。
登場人物の多くは不幸な死に方をするが(又は暗示しているが)、最後は救いが用意されている。
この演劇の脚本と演出を手掛けたケラリーノ・サンドロヴィッチ(ケラさん)は、今回の上演にあたって、次の様に述べている。
―「どうしても再演しておきたい公演」というのは滅多にない。「どうしても」となると、劇団での上演に関しては、今やこの作品が唯一。最後の一本だ。
(中略)
実は初演時から「絶対再演したい」とプロデューサーに直訴していた。初演の出来が悪かったからとか、観客の評判が良かったからではない。強いて言うなら、作品側から求められていたのだ。
―劇中に震災を想起させるような要素は皆無だが、執筆≠稽古中、ずっと頭にあったのは、幸せとは言えぬ亡くなり方をした方々の、その人生を引っくるめて「悲惨」と称してしまうことへの反発と、そう称されてしまう人生たちへの擁護だった。「終わり良ければ」は人の一生には当てはまらないのではないか。別の言い方をすれば、そもそも悲惨でない人生なんてないんじゃないか。そんな気持ちだった。
私は、この芝居を東日本大震災の翌年の初演の舞台を観ている。
正直に言えば、その時はさして感動もしなかったし、あまり良い作品だとも思わなかった。
この6年、当たり前だが私も6つ歳をとったし、この間に何人かの親しい人を失った。人間の死亡率は常に100%だ。どういう風に死んでいくのか誰も分からない。だから、死に方によって幸せだった不幸だったかを決められたら、堪ったもんんじゃないという主張は今なら共感できる。
もちろん、この6年で沢山の芝居を観てきたことも影響しているだろう。
今回の舞台は、とても良かった。
人生の歩みによって、劇評も変わってゆくことを実感した。
公演は30日まで。
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