フォト
2023年6月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
無料ブログはココログ

« 桃月庵白酒独演会(2018/5/11) | トップページ | かめあり亭(2018/5/13) »

2018/05/13

花形演芸会(2018/5/12)

第468回「花形演芸会」
日時:2018年5月12日(土)18時
会場:国立演芸場

<  番組  >
前座・柳亭市坊『一目上り』
春風亭正太郎『棒鱈』
林家ひろ木『クイズの王様』+『津軽三味線』
青空一風・千風『漫才』
柳家燕弥『崇徳院』
―仲入り―
ゲスト・柳家権太楼『黄金の大黒』
鏡味味千代『曲芸』
桂佐ん吉『火事場盗人』小佐田定雄=作

花形演芸会の魅力は、なんと言っても出演者全員が真剣に演じていることにある。審査員が客席から採点しているというコンクール形式のためだろう。各人がいま持っている技能を最大限発揮しようと努力する姿は、いつ見ても清々しいものだ。
若手芸人の登竜門としては他にNHK新人演芸大賞があるが、あちらは本選の映像を見る限りでは時間が短い。対して花形では、大賞を狙うとすれば30分程度の長い演目で勝負せねばならない。演者の力を計るのは花形の方が相応しいだろう。
協会に所属していに芸人が見られるのもこの会の特長だ。

正太郎『棒鱈』
将来を嘱望される二ツ目として、この正太郎は十指に入るだろう。いや五指かな。古典をそのまま演じて面白く聴かせる力量を備えている。
江戸から東京に替わるころ、将軍のお膝元に薩長の下級武士が大手をふって立ち回ることになる。これが江戸っ子には甚だ面白からず。そうした空気を反映した落語のネタがいくつもあるが、『棒鱈』はその代表と言えるだろう。
襖一枚挟んで、短気で酒癖の悪い江戸っ子と、無粋な薩摩侍との対比を描き好演。

ひろ木『クイズの王様』
なよなよとした頼りなさそうな風情だが、これがこの人の持ち味なんだろう。父親の代役で急にクイズ番組に出演することになったボケた祖父の噺で、この人のフンワリとした喋りと合っていた。
終わりに趣味の津軽三味線d「ダイアモンドヘッド」と「津軽じょんがら節」を披露。後席の人も言っていたが、この人は三味線を持つと気合が入る。

一風・千風『漫才』
正統派のしゃべくり漫才で好感が持てる。
何かひとつきっかけを掴めば、ブレークする可能性があるだろう。

燕弥『崇徳院』
もしかして初見か。
先ずリズムが良い、セリフの「間」が良い。柔らかな身体の動きも良い。
登場人物の演じ分けもしっかり出来ていて、完成度の高い高座だった。
他のネタも聴きたくなった。

権太楼『黄金の大黒』
長屋の連中が大家さんとこの猫を食べちゃうって言うのは、瀧川鯉昇の専売(『長屋の花見』)かと思っていたら、権太楼も演るんだ。実際は不味くて食えないそうですよ。
ネタは長屋の連中が大家宅に出向いて、頓珍漢な口上を言う所で切っていた。
最近の権太楼の高座を観ていると、peak outに達したのかなという印象が強い。

佐ん吉『火事場盗人』
若手ながら数々の受賞歴が示すように話芸の力量は折り紙付きだ。
ネタは小佐田定雄の新作で、場所は京都。誓願寺の門前には「迷子のみちしるべ」と呼ばれる石があり、迷子を捜す時はこの石にお願いすると見つかると言ういわれがある。これが背景となっている。
泥棒がたまたま入った家が火事で、この家の主人が女の赤ちゃんを入れた葛篭を奉公人と間違えてこの泥棒に渡してしまう。取り敢えず家に連れ帰り、翌日から女の子の家を探すのだが、屋敷は丸焼けで家人もどこへ行ってしまったのか分からない。途方に暮れていると、女房がそれなら家の子として育てようと言い出し、堺に引っ越してゆく。
それから18年、泥能だった男もあれから足を洗い今では棟梁。女房は亡くしていたが、店の若い者と娘との縁談がまとまり、今日はお祝いの簪を買いに京都に来ていた。娘が買い物をしている間、男が誓願寺の門前の茶屋で休んでいると、隣に年配の男性が。聞けば誓願寺にお参りの帰りで、18年前に火事の騒ぎの中で幼い娘を見失い、それからずっと探し続けていたと言う。男は、その娘を預かったのは自分でさっきの娘がその時の子だと、相手の男性に謝る。
それを聞いた男性は娘の無事を喜び、戻ってきた娘に簪のお祝いとお金を渡す。
去って行く父と娘を見送っていると、先の娘が男性に近づき耳元で「父さん、ありがとう」と囁く。娘は二人の話を聞いていたのだ。
30分近い高座だったが、佐ん吉はこの人情噺をじっくりと聴かせてくれた。上出来の高座だったと言える。
新作はどうしても受賞にはハンディになるが、もう一つ上の賞が狙えるに十分。

« 桃月庵白酒独演会(2018/5/11) | トップページ | かめあり亭(2018/5/13) »

寄席・落語」カテゴリの記事

コメント

柳家燕弥『崇徳院』
二つ目の右太楼時代に聴きました。やはり、聞き取りやすい口調のしっかりした芸だと感心した記憶があります。
落語家にはセカンド顔(私の言いかたで)という一群があり、今の小せんや燕弥なんかは好守を見せるヒトなんです。

福様
燕弥、私は馴染みが無かったんですが、この会の仲入りを任されたということは、それだけの実力があってのことだと思います。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 桃月庵白酒独演会(2018/5/11) | トップページ | かめあり亭(2018/5/13) »