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2018/05/28

メディアの扇動と国民の熱狂が導いた「アジア・太平洋戦争」(2)五・一五事件

だいぶ前のことになるが、戦前に新聞の編集者だった人にインタビューした記事を読んだことがある。
その元編集者は、「政府や軍部から圧力があったか?」という質問に対して「全く無かった」と答えていた。
「戦前日本のポピュリズム - 日米戦争への道」 を読んで納得したのだが、どの新聞も政府や軍部のお先棒をかついていたわけで、それなら圧力の掛かりようがない。
それは今のメディアでも言えることだろう。
(2)5・15事件
1932年に起きた5・15事件は、海軍青年将校・陸軍士官学校生徒らが首相官邸などを襲撃し、犬養毅首相を射殺したテロ事件だ。軍部はこれを利用して政党内閣に終止符を打ち、軍部独裁政治への一歩を進める大きな契機となった。
しかし、当時の新聞は犯人たちを非難するどころか、彼らの主張する憂国の志を賛美していた。
「その悲壮な国士的精神、犠牲的精神の純真さに感動を禁じ得ない」(大阪朝日新聞)
裁判の傍聴記事では専ら被告の陳述だけを、それも彼らの行動を赤穂義士の討入りにまで擬して、浪花節を語るごとくに紹介した。
国民の間には被告らの減刑を嘆願する運動が拡がり、全国から血書したものや血判をしたもの、さらには9人の青年から小指を根元から切断して嘆願書に添付したものが送られてきた。この小指をアルコールに漬けて弁護人が法廷に差し出すと、検察官から裁判官、傍聴人みな等しく涙を流したと新聞は伝えていた。
遂にはこの事件を題材にした「昭和維新行進曲」がレコーディング、発売された(後日発禁となる)。
歌詞は次の通り。
1、踊り踊るなら 五・一五の踊り 踊りや日本の夜が明ける
2、花は桜木 人は〇〇 昭和維新の人柱
3、男惚れする△△の 問答無用の心意気
(〇〇と△△は、実行犯の軍人の名前)
「問答無用」とは、実行犯が犬養首相を射殺する際に発した言葉とされている。
こうした空気の中で被告に対する判決は、実行犯らが最高でも禁錮15~13年になるなど、刑が大幅に軽減され、しかもその後に恩赦で釈放された。
こうした甘い処理が、その後の軍部によるテロやクーデターの引き金となってゆく。

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