人形町らくだ亭(2018/6/13)
第78回「人形町らくだ亭」
日時:6月13日(水)18時50分
< 番組 >
前座・春雨や晴太『八問答』
柳家やなぎ『転失気』
春風亭一朝『大山詣り』
~仲入り~
春風亭柳朝『源平盛衰記』
五街道雲助『つづら』
晴太『八問答』
初代春団治がいくつかの噺をまとめて改作した作品だが、東京へは誰が持ってきたのかは不明。
八五郎が隠居の家を訪れると、八は末広がりで縁起が良いという。世の中は全て八の字がつくと、足し算、引き算、割り算、掛け算から駄洒落まで駆使して何でも八にこじつけてしまうという根問ネタ。
リズミカルな喋りで悪くなかったが、間が欲しいところ。
この日の若手の中では一番良かった。
やなぎ『転失気』
本人は工夫している心算だろうが、全体に間延びしていた。
このネタは、あんなにダラダラ演じるものじゃない。
一朝『大山詣り』
お疲れに見えたのは気のせいだろうか。
皆より一足先に長屋に戻った熊が、上さんたちに仲間が船で遭難したという嘘の話しを語る時、もうちょっとしんみりと喋った方が良いのでは。そうでないと、上さん連中が感情移入できないと思った。
柳朝『源平盛衰記』
典型的な地噺で、間に挟むギャグで勝負するネタ。
時事ネタや芸人の流行語を多用していたが、これが古い。聞いていて、そう言えばそんな事もあったなという感想でしかない。客席の反応がそれを如実に物語っていた。
この噺は談志や10代目文治の様な個性の強い人に向いているように思う。
どうも柳朝にはニンじゃないと言うのが、感想だ。
雲助『つづら』
別題が『つづらの間男』、8代目文治-10代目馬生を経て、現在はその弟子の雲助や当代馬生が演じている。
演じ手が少ないのは、あまり面白い噺ではないからだろう。
つづらを見た事のない人や、質屋を利用したことのない人が多くなって、話しが分かり難くなったというのも理由の一つだろう。
江戸時代に、町人の間男に対する賠償金は7両2分と決まっていて、つまりバレても7両2分払えば勘弁して貰えたというルールだったそうだ。これは時価で大判1枚に相当した。
あらすしは。
博打好きの亭主のために悪い筋からの借金の催促に追われる由と女房のお兼。由は金策に走り回るが、どこからも融通して貰えない。仕方なく成田の叔父に相談に行くから今夜は泊りになるからと由は出かけてしまう。
角の荒物屋の女房から由は呼び止められ、お兼が質屋の伊勢屋の旦那と間男していると告げられる。由は成田に行くのをやめて、魚屋の奥座敷で時間をつないでいた。
そうとは知らぬ伊勢屋の主、由が留守だと知らされお兼の家を訪ねてくる。二人で酒と肴で一杯やってる所へ、亭主の由が玄関の戸を叩く。
さては美人局を仕組んだなと訝る伊勢屋の主を急いでつづらの中に隠してから由を招き入れる。
由は気付いてつづらを開けようとするが、お兼は必死でとめる。伊勢屋が借金を肩代わりしてくれたから、近ごろは取り立てが来ないのだと。
もし借金のことで由に万一のことがあったり、お兼が借金のカタに売られるようになれば、子どもが可哀そうだと説得する。
これを聞いた由は「開けない。しかしお前にも開けさせない」とつづらを紐で縛り、担いで伊勢屋へ向かう。
伊勢屋の番頭に、このつづらを7両2分で預けたいと申し出るが、最初は相手にされない。しかし、お上さんから中身を耳打ちされると態度を一変させ、大判1枚を由に渡す。
番頭「二度と虫が付かないようにしっかり預かります」
由「そいつを流さないでくんなよ」
でサゲ。
陰気な話だが、サゲが洒落ている。
雲助もややお疲れという印象を受けたが、じっくり聴かせてくれた。
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文治(10代目)は「おごれる平家も」と言って「あたしもこないだ奢ったんですどね」とやって笑わせるんです。
平家の悲劇を庶民的な笑いで装飾するといった感じが源平の本領でしょうか。
投稿: 福 | 2018/06/16 06:55
福様
源平の物語は誰でも知っているのですが、そこにどういうネタを仕込むかが演者の手腕です。談志でいえば、吉川英治の小説の引用や、屋島の合戦の場面では当時人気の講談師の物真似を披露しています。こうした遊びが要る噺だと思います。
投稿: ほめ・く | 2018/06/16 09:01