にぎわい座名作落語の夕べ(2018/6/2)
第百八十九回「にぎわい座名作落語の夕べ」
日時:2018年6月02日(土)18:00
会場:横浜にぎわい座 芸能ホール
< 番組 >
前座・柳亭市若『狸の鯉』
柳家甚語楼『短命』
橘ノ圓満『お直し』
《仲入り》
春風亭正朝『宮戸川』
三笑亭茶楽『品川心中』
一昨日の落語会で隣席の人がずっと居眠りをしていたのだが、その人が公演アンケートに記入していた。なんて書いたんだろう? 「とても気持ち良かった」とでも書いたんだろうか、色々な人がいる。
今回のにぎわい座名作落語の夕べのテーマは「艶噺」。会場の入りはあまり良くなく4分程度だった。
落語に注目が集り、テレビ番組や新聞記事でもとりあげられる機会が増えた。寄席の入りも以前よりは良くなったと言われているが、決して本物じゃない。
名の通った人や人気者が一人でも出ていると途端に客が多くなるが、それ以外では寂しい入りの時が少なくない。これだけの顔づけで、これだけの番組で、なんでガラガラなんだと思うことはしばしばだ。
関係者もブームの底の浅さを自覚しておかないと、とんだしっぺ返しを食ううことになる。
市若『狸の鯉』
夜中に他人の家を訪れるのに、あんな大声を出す奴があるか。無粋な狸め。
甚語楼『短命』
会場が固い空気のままネタに入る。もうちょっとマクラでほぐして欲しかった。悪い出来ではなかったが、こうしたネタはもっと軽みが要るのでは。力が入り過ぎていたように思えた。
圓満『お直し』
どこまでも堕ちてゆく男女。原因を作ったのは常に男の方で、ろくでなし。でも女に頼ってしか生きてゆけない。そんな男を見捨てることもなく、一所懸命に尽くす女、どん底に生きる男女の機微を描いたこのネタは、落語というより短編小説か、川島雄三の映画の世界だ。
圓満の高座だが、前半が単調だった。もっとしゃべりにメリハリが欲しい。このネタを初めて聴く人にはストーリーが分かりづらかったと思う。
後半の「けころ」の場面に入ってからはぐっと良くなった。女と男の客とのじゃれ合いと、それを見ながら嫉妬心を燃やす亭主との対比が良く出来ていた。客が去った後の夫婦喧嘩と仲直りの場面も、この二人のこれからの幸せを予感させていた。
正朝『宮戸川』
マクラで、車内での女性の化粧の話題で会場を一気に温めた。私もあの神経は分からない。今までで最長は45分、宇都宮線でのことだ。基礎工事から最終仕上げまで隣の席の女性が入念に化粧を施していた。上野駅到着前に先に立ち上がり、その女性の顔をチラッと見ましたよ。
感想は、無駄な時間を過ごしましたねー。あ、これってセクハラですか?
この噺もそうだが、落語に登場する生娘というのは、概して男に積極的な人が多い。江戸時代の娘さんというのは意外に奔放だったのかも知れない。
正朝の高座はいかにも軽く楽しげに演じていた。こうしたネタはこれが正解。
茶楽『品川心中』
東京落語の最大の特長は「粋」だ。粋さが無い東京の落語家は失格である。
そこいくと茶楽、毎回粋な高座を見せてくれる。
お馴染みのネタだが、いくつか工夫があった。
お染が金蔵に心中を持ちかける時、私だけ死んだら金蔵のとこへ化けて出てとり殺すと脅す。金蔵は、どっちに転んでも死ぬんだからと、心中に同意する。
翌日、金蔵は家財道具を売り払って、こさえた金で白無垢の死に装束と脇差しを買う。処が、親分宅を訪れた際に、玄関に脇差しを立てかけておいたため、急いで飛び出してきて脇差は忘れてきてしまう。
死に装束は持ってきたが、金が足りなくて自分の着物は半纏の様な短さだ。「どうせ今度出て来る時は、足が無いんだからちょうどいいや」と金蔵は暢気なもの。
それでも、お染からカミソリを見せられた時は震え上がる。
いよいよ心中となって、品川の桟橋からお染が先に行っとくれと金蔵を海に突き飛ばすと、見世の若い衆が金が出来たからとお染をとめる。
お染「金ちゃん、ちょっと早かったよ、お前さんたらいつだって早くって、あたしを置いていくんだから」と、この期に及んでも下ネタを。どこまで厚かましい女なのだ。
海から八つ山に上がってきた金蔵、駕籠に乗ろうとすると駕籠屋は幽霊と間違えて逃げ出ししまう、その後は、親分の家でのひと騒動で、鈴木主水先生だけが悠然と座ってる。親分が「さすがお侍」と褒めると、「なに、拙者腰が抜けた」でサゲ。
志ん生や志ん朝より、先代馬生に近い演じ方だった。
流れるような喋りに乗って、出色の高座だった。
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コメント
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『短命』は軽くというお話、納得です。でも、その軽くが難しいんでしょうね。
何よりも そばが毒だと 医者が言い
うどんならいいのかねぇ、と呟いたりして。
投稿: 福 | 2018/06/06 06:46
福様
こうした艶笑噺はサラリと演じるのがコツだと思います。喜多八が十八番にしていましたが、山場の3分間ほどはパントマイムで演じていました。
投稿: ほめ・く | 2018/06/06 09:12