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2018/06/07

「柳家小三治独演会」(2018/6/6)

「柳家小三治独演会」
日時:2018年6月6日(水)18時30分
会場:東京芸術劇場プレイハウス
<  番組  >
柳家一琴『転失気』
柳家小三治『青菜』
~仲入り~
柳家一琴『紙切り』
柳家小三治『挨拶』

私がまだ20代前半のころ、先代小さんの弟子に、さん治、さん八という二ツ目の有望な弟子がいて、いずれこの二人は落語界を背負っていくだろうと言われていた。やがて前者が小三治、後者が入船亭扇橋になる。
「栴檀は双葉より芳し」で、噺家も有望な人は二ツ目時代から注目される。志ん朝や談志がそうだったし、最近では喬太郎、一之輔も同様だ。
もっとも小三治の場合は、入門前の高校生の頃から一部の演芸ファンには知られていたほどの天才少年だったが。
噺家といえどもやはり才能がモノを言う。

他の落語会でもこの独演会について噂していたほど、落語ファンには注目されていた。プレイガイドではチケットは抽選だったのも話題の種だった。
小三治は昨年8月に手術したが、その後の経過を占う意味で大事な会だということだろう。

小三治の独演会は一つの型があり、開口一番は弟子の真打が勤め、その後に一席、仲入り後にもう一席というのが通常のパターンだ。

この日の開口一番は一琴『転失気』。
前座噺だが、やはり真打クラスが演じると面白い。
小僧の珍念が可愛らしかった。

小三治『青菜』
この日もマクラが長かった。
本人も、長いマクラに怒って帰ってしまう客がいると言っていた。その背中を「ざまぁ見ろ」と見送るのだと。
漱石が愛した3代目小さんは、高座に上がってしばらくはつまらない話しをしていたそうだ、そうすると呆れて帰る客がいる。その残った客にみっちりと面白い噺を聴かせていたそうだ。自分も最初からワッと笑わせるような演じ方はしないと。
先月の落語会で聴いた時は、雑誌に掲載するため写真撮影をしたと語っていたが、その写真が出来てきて、あまりに良く写っているので感心したと。身体を動かしながらの撮影だったので写真がブレているのだが、とても自然体で撮れていた。そう言ってアラーキーの腕前を褒めていた。
メディアの言葉狩りに触れて、本来なら言論の自由を守るべきメディアが、簡単に受け容れてしまった事を怒っていた。差別用語を禁じることと、差別を禁じる事とは全く別問題で、後者にこそ力を入れるべきだと。
その他、思い出せないが色々なことを語り、予定時間を大幅にオーバーしたようだ。

ようやくネタに入り『青菜』に。
植木屋が屋敷で飲み食いする場面にかなりの時間を割いていた。他の人の倍はかけていたろう。あれだけ時間をかけて飲めば、徳利も空になるというもの。
屋敷の主が、植木屋の水の打ち方を褒め、草木から落ちる水滴を通る風が涼しく感じると言う場面は大事な点だ。
菜を取り寄せるべく主が掌を軽く合わせて打つ場面は感心した。独特の打ち方で、後から本人が解説していたが、この屋敷の空間を意識して打ってるとのこと。こういう細部に価値がある。他の演者では、まるで居酒屋で店員を呼ぶような打ち方をする者もいて、あれでは幻滅だ。
例の「鞍馬から牛若丸が・・・」の口上で、植木屋がこれがお屋敷なんだと感心する。家が広いとか庭があるとか、食べ物がどうとかではないと言う。この発想から、自分の家に戻って同じ事をして見ようと試みることになる。
1点だけ抜けていたのは、最初に植木屋が縁側に腰かけるよう勧められた時に、縁側を汚すといけないと遠慮する場面だ。このミスは本人も後から気付いた様だ。
鯉のあらいの下の氷を頬ばる場面は、敢えてカットしたそうだ。
後半の植木屋が長屋に戻ってからは、屋敷の真似をする所からサゲまで一気に。
屋敷の静と涼に対して、長屋の騒と暑を見事に対比させて見せた。
1か月前と比べて遥かに動きが良くなっていて、元に戻った印象だ。
本人は、これからホップステップジャンプのジャンプを目指すと意気込みを語っていたが、本気度を感じた高座だった。

一琴『紙切り』
仲入り後に高座に上がってきて、紙切りをはじめたのには驚いた。後から小三治が、噺家をやめて紙切りになれと言い、やはり噺家を続けたいからと断られたエピソードを紹介していたが、器用な人だ。

小三治『挨拶』
終演時間まで2分しかないと言って、『小言念仏』の形だけして挨拶で終了。
手術後初めて『青菜』を掛けたと言っていたが、それだけ体力回復に自信がついたということだろう。
一席しか聴けなかったのは残念だが、また次の機会を待つことにしよう。

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コメント

ああ、これも見逃しました。
すっかり落語から足が遠のきました。
もっとも毎晩スマホで何度も聴いてはいますが。

「日本の話芸」で『粗忽長屋』とありましたが、矢張り長いマクラでした。
独特のこわばった表情をつくりながら、自然と可笑しみを醸し出すという感じで、正蔵に助言した「うまくやろうと思わず、自分のコトバで語ればよい」ということの一端を垣間見た思いがしました。

佐平次様
小三治の5月の会では復活からほど遠いかた思われましたが、この会の出来を見て未だこれからという期待を感じました。

福様
この日の出来を見て、現在も滑稽噺の第一人者であると実感しました。

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