恵比寿まめかな寄席(2018/7/11)
「恵比寿まめかな寄席7月公演・昼の部」
日時:2018年7月11日(水)14時
会場:恵比寿・エコー劇場
< 番組 >
桂宮治『棒鱈』
マギー司郎『奇術』
柳家三三『茄子娘』
三遊亭笑遊『やかん』
~仲入り~
タブレット純『ムード歌謡漫談』
玉川太福『石松代参より三十石』
柳家喬太郎『ちりとてちん』
この会は通常の落語会とは異なり、寄席という名が付く通り色物が混じる。それも普段の寄席ではお目にかかれない芸人に出会えるのが魅力だ。
今回でいえば、以前から観たかった玉川太福がお目当て。
顔ぶれの割に客席に空席が目立った。はて?
宮治『棒鱈』
実力は認めるが、どうもこういうギドギドした無粋な芸風は好きになれない。これは好みの問題なので致し方ない。
技術的な面では、このネタに登場する侍は薩摩武士だ。セリフの中に別の地方のナマリが混じっていたのが気になった。
マギー司郎『奇術』
TVでは毎度お馴染みだが、ナマで観るのは初めてだ。感想はTVの通り。
トーク中心のおしゃべりマジックで、最後にまともなマジックを披露する。
三三『茄子娘』
扇橋が得意としていて、以来、入船亭一門によって演じられていた様だが、最近では他の一門からも高座にかける人が出てきている。
夕立や雷が背景にあるので、夏の噺ということになるだろう。
三三の高座では、和尚と茄子の精が蚊帳の中で交わる場面に力を入れていて、『宮戸川』を思わせるような艶っぽい演じ方にしていた。
笑遊『やかん』
お馴染みの奥方の愚痴をマクラに本題へ。
落語にある『根問』ものの代表的なネタで、前半の魚の名前の由来で切る場合は『魚根問』の別名が使われる。
八五郎が色々と質問してくるのを、実は無学な先生が無理をしてこじつける所がミソ。その辺を笑遊は面白く聴かせていた。
この人、年の割に声が大きいね。
タブレット純『ムード歌謡漫談』
初見。なかなかの美声だと思ったら、和田弘とマヒナスターズのボーカル(最後の)だったそうで、グループ解散後にピンに転じたようだ。
ギターとハーモニカを演奏しながら、主にムード歌謡や自作の曲を歌っていた。後半はこれも自作の似顔絵を見せながら物真似を披露。
トークでは女性の様な優しい声だが、歌になると一転して大きな声に変わり、そのギャップが見せ処。アンコールの女装もよく似合っていた。
こうしたチャンスがなければ接することが出来ない芸だ。
玉川太福『石松代参より三十石』
曲師は、師匠・玉川福太郎夫人の玉川みね子。浪曲は特に曲師が大事で、浪曲界の最大のスターだった2代目広沢虎造だって曲師の美家好との息のあった掛け合いが無ければ、あそこまで売れなかっただろう。
その虎造の十八番だった清水次郎長伝から『石松代参より三十石』を玉川節で唸った。客席はあまり浪曲に馴れていなかったようで、外題づけの後に拍手がなかったので、もう一度やり直した。
確かに節でいうと、虎造で聞きなれていると玉川節は違和感があるが、啖呵になると、虎造を彷彿とさせるような小気味の良さが光る。
お目当ては期待通りだった。
喬太郎『ちりとてちん』
これも夏のネタなので、これから高座にかかる機会が多いだろう。
以前にある会で、喬太郎が「料理がこんなにあまっちまって・・・」と言い出すと、会場の複数の女性客から「エーー」という声が一斉に上がり、高座の喬太郎が「ちん、でいいでしょ、ちん、で」と言い返したことがあった。それだけ頻繁に高座に掛けているということだ。冬場の『時そば』と共に鉄板ネタである。
とにかく手慣れたネタなので、無愛想な男がちりとてちんを口に流し込んだ後の百面相のようなリアクションを見せ場にして、お開き。
« 上祐史浩の罪は「万死に値する」 | トップページ | 「カジノ法案」は、まるで落語みたいだ »
「寄席・落語」カテゴリの記事
- 「落語みすゞ亭」の開催(2024.08.23)
- 柳亭こみち「女性落語家増加作戦」(2024.08.18)
- 『百年目』の補足、番頭の金遣いについて(2024.08.05)
- 落語『百年目』、残された疑問(2024.08.04)
- 柳家さん喬が落語協会会長に(2024.08.02)
「外題づけのあとに拍手がなかった」
で、太福の要求で拍手をする約束事のお勉強。
実は浪曲の本拠「木馬亭」でも同じ事件(?)がありました。
彼の姉弟子をはじめ若手浪界の皆さんの努力で新しい浪曲ファンに世代交代したのだと実感しました。
投稿: Yackle | 2018/07/12 13:38
Yackle様
はあー、木馬亭でも、ですか。それはちょっと驚きです。
でも新しいファンを開拓しているせいなら、それは喜ばしいことです。
投稿: ほめ・く | 2018/07/12 15:29
伊藤一葉「この件に関しまして何かご質問は?」
マギー司郎「これ東松山の商店街ではウケたけど、今日は駄目だね」
東松山には様々な地方都市名が代入されることになります。
奇術も話術・・・
そういえば、弟子はあるけど、師匠の高座はナマで見たことはありません。
投稿: 福 | 2018/07/13 06:38
福様
寄席の色物としての奇術は、やはりトークが大事です。今回マギー司郎の高座をみて、師匠の芸の力を感じました。
投稿: ほめ・く | 2018/07/13 08:30