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2018/07/05

盛夏「雲一里」(2018/7/4)

「五街道雲助・春風亭一朝・柳家小里ん 盛夏『雲一里』」
日時:2018年7月4日(水)19時
会場:日本橋劇場
<  番組  >
前座・金原亭駒六『強情灸』
春風亭一朝『蛙茶番』 
五街道雲助『もう半分』
~仲入り~
柳家小里ん『子別れ(通し)』

6月2日に桂歌丸が亡くなった。82歳だった。
ナマの高座は2014年の国立演芸場でのトリで「牡丹灯籠・お札はがし」が最後だった。この時も既に板付きだったが、迫力のある語りに感心したおぼえがある。
噺家としては決して器用なタイプではなく、芸風もどちらかと言うと陰だ。途中から古典落語に転じ、とりわけ人情噺に磨きをかけた。
ご冥福を祈る。

「雲一里」、雲助、一朝、小里んの3人会である。円熟というよりいま最も脂ののり切った噺家の会と言っていいだろう。それぞれが古今亭、林家、柳家の芸を継承している。

駒六『強情灸』
最近、この人の前座にあたる事が多い。達者な印象だが、最後の山場でミスが出てしまった。

一朝『蛙茶番』 
このネタは一朝の十八番といって良いだろう。
今までに何度も聴いたが少しずつ出来が違う。こういう処がライブの良さだ。この日は気合いが入っていた。
例えば、このネタに登場する歌舞伎の狂言は『天竺徳兵衛韓噺』だが、役者が忍術で印を結ぶ時に両手で「大入り叶う」という仕草をして縁起をかつぐという説明があった。こういう点は芝居に詳しい一朝ならではだ。
バレ噺だが、下品にならないのはこの人の腕前。

雲助『もう半分』
夫婦二人だけの貧しい居酒屋。そこに馴染みで通ってくるのが棒手振りの八百屋の爺さん、鼻が高く目がギョロっとして頭には僅かに白髪が2,3本という風体。この日も閉店間際にやってきて、いつも通り酒を「もう半分、もう半分」と言いながら、何度もお代わりをして帰っていった。
夫婦が後片づけをしていたら、汚い風呂敷包みが置いてあった。中を開けると小判で50両。
亭主が爺さんに届けようとするが、女房がこれだけの金があれば今の貧乏暮しから抜け出せる。このままネコババでして、爺さんが取りに来たらしらばっくれるからと亭主を説得する。
そこへ青くなった爺さんが店に飛び込んできて包みを渡してくれと頼むが、夫婦は知らぬ存ぜぬ。爺さんが言うことには、あの50両は娘が吉原に身を売ってこさえた金で、あれを失くせば生きていけないと訴えるが、店から追い出されてしまう。
亭主が、このままでは爺さんが自身番にでも訴えればこっちの身が危なくなくなると、爺さんの跡をつけて大川端で刺殺し、死体は川に投げ込んでしまう。
夫婦は50両を元手に大きな店を持ち、今では奉公人の数名も置く身分。身重だった女房が産気づき男の子が生まれたが、この赤ん坊が鼻が高く目がギョロっとして頭には僅かに白髪が2,3本というあの爺さんに瓜二つ。「ギャー」っと言って、そのまま女房は死んでしまう。
亭主が赤ん坊の乳母にと人を頼むが、誰も翌日になるとやめてゆく。事情を聞けば、深夜になると赤ん坊が突然立ち上がり、行灯の油を舐めるのだと言う。
そんな馬鹿なと亭主が赤ん坊を見張っていると、丑三ツの鐘と同時に赤ん坊がヒョイと立ち、行灯から油皿をペロペロ。
思わず亭主が飛び出すと、赤ん坊がこっちを見てニヤリと笑い、
「もう半分」
でサゲ。
怪談噺ということで場内の照明を落として演じていた。
オリジナルでは爺さんが川に飛びこんで死ぬのだが、雲助は横領が役人にばれるからと亭主が爺さんを殺して川に投げ込むという風に変えていた。
殺しの場面は芝居がかりの所作で、凄惨な場面を演出していた。
このネタは5代目今輔が得意としていたが、雲助の高座は抑えた語りながら、ぞっとする様な空気を会場に吹きこんでいた。

小里ん『子別れ(通し)』
高座にかかる機会の少ない『子別れ(中)』を含めた通しの口演。
小里んの高座は、「上」では熊の酒好き女好きの無鉄砲さが描かれていた。
「中」では、熊が最初は照れ隠しのつもりだったのが女房を怒らせ、酒の勢いもあって引けに引けなくなって勢いで女房と息子を追い出す羽目になるという風に演じていた。
この演出があるから、上と下を結ぶことが出来る、中の重要性を示したものだ。
「下」は通常単独で演じられる事が多いが、これだけだと熊が単なる良い人になりかねないので、上中は欠かせない。
小里んの高座では「下」はややあっさりと演じていたが、熊、女房、亀ともに3人一緒に暮らしたかったいう思いは良く出ていた。
女房子との再会に、前日木場に一緒行った番頭が立ち会うという設定になっていたのと、サゲを鰻屋にかけて変えていた。
いかにも小里んらしい、どっしりとした高座だった。

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