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2018/08/22

人形町らくだ亭(2018/8/21)

第79回「人形町らくだ亭」
日時:2018年8月21日(火)18時50分
会場:日本橋劇場                        
<  番組  >
柳家小満ん『湯屋番』
露の新治『雪の戸田川』
~仲入り~
柳家さん喬『福禄寿』

仲入りを挟んで珍しいネタが並ぶ「らくだ亭」へ。会場の日本橋劇場は我が家からエスカレーターやエレベーターを使って階段なしで行けるのでラクダ。

何とかいうアメリカ人女性が小咄を一席。
何とかいう前座が『元犬』を。

小満ん『湯屋番』
このネタに登場する若旦那は、さんざん道楽をした挙句勘当となり、出入りの職人の家に居候していた。湯屋に奉公する目的も、主人が若死にしたら後家さんの婿におさまり・・・というとんでもない遊び人だ。だから、この若旦那には遊び人風情が求められる。そこが、同じ様な年増との濡れ場を夢想する『浮世床(夢の逢瀬)』や『夢の酒』とは大きな違いがある。
こうした人物像を描くとなると、小満んが当代では第一人者だろう。
湯屋の主に煙突掃除をと言われと、「さてその次は・・・」と歌舞伎の弁天小僧のセリフで混ぜっ返す。
風呂場で褌を洗ってる男を見つけると、「やだね、源氏の白旗だ。ここは平家で、燃える様な長襦袢といきたいね」。
こういうセリフが似合うのも、小満んならではだ。

新治『雪の戸田川』
先代正蔵から教わった怪談噺『戸田の河原』を、露の五郎兵衛が上方落語に直したもの。但し地名はそのままにしている。
【あらすじ】
干鰯(ほしか)商売が当り、今では佐野のお大尽とまで言われる治郎吉。商用で江戸に投宿していたが、国の女房が産気づいたとの知らせで、急ぎ佐野に向かう。途中、戸田の渡しに差し掛かると、河原の粗末な小屋から一人の女乞食が物乞いに寄ってくる。気の毒に思った治郎吉が金を恵むと、その女乞食が「こんな金は要らんわい、よぉも見忘れはしょまいがなぁ~、治郎吉ッ!」と言って金を叩きつける。
面相がすっかり変わってしまってはいるが、治郎吉が若い頃に所帯を持っていた女房お紺だった。病気になったお紺を見捨てて去ってしまった恨み辛みをぶつけるお紺に治郎吉は経緯を説明する。
お紺が江戸で病に臥せってる間に、伊勢松阪まで金策に向かった治郎吉は、旅先でひと月余り寝こんでしまう。ようやく江戸に戻るがお紺の姿は見当たらず、方々訪ね歩くがとうとうお紺は行方知れず。
やむなく故郷の佐野に帰り、商売も繁盛し一家を構える身となった。
よりを戻せと迫るお紺に治郎吉は、それなら一緒に佐野に行こうと言う。ただお紺の身なりが余りに汚いので、せめて川の水で顔と髪だけでも洗うことを勧める。身を乗り出して顔を洗うお紺。このまま佐野に連れ帰ることは出来ないと悟った治郎吉は背後からお紺を川に突き落とす。
治郎吉は渡し場に行き、船頭の漕ぐ渡し船に乗るが、川の中ほどに来るとお紺の幽霊が現れる。おのれ、血迷ったかと村正で斬りかかる治郎吉だったが、お紺に川底に引き込まれ、後は船の上に白い雪がハラハラと落ちるだけ。

新治の怪談噺は初めて聴いたが、ハメモノを使った芝居仕立てのセリフもつぼに嵌って良い出来だった。
新治の語りの確かさが活きた一席。

さん喬『福禄寿』
三遊亭圓朝の作。
圓生の高座を聴いていい噺だと思い、以前に落語研究会で演じたことがあったが不満足なもので、もう一度チャレンジしてみようと思い立ったとのこと。
【あらすじ】
深川万年町の福徳屋万右衛門、実子が7人に加え脇腹からの6人の子を引き取り、16名の子を育てた。それぞれ順調に育ったが、惣領の禄太郎だけは派手なことが好きな道楽者で、大きな事業に手を出しては失敗し、大金を騙し取られたりして店を倒産させる始末。
分家した次男の福次郎は地道な商売一筋で店を繁盛させて両親に孝行している。
暮れの28日の雪の日、万右衛門一家は暮の祝いを催して親類一同が集まったが、敷居が高いのか長男の禄太郎だけは姿を見せない。宴席は続いていたが、母親は一足先に離れの隠居部屋に先に引きあげて炬燵に入っていた。そこに雪の中を禄太郎が訪ねてきて、母親の口利きで福次郎から300円借りてくれとせがむ。
度々の無心を断る母親との押し問答をしていると、福次郎がやって来たので母親は禄太郎を炬燵の中に隠す。福次郎は何かの時の入用にと300百円入った財布と酒を置いて、商売仲間の忘年会に行かねばならないとそのまま出て行ってしまう。
しめしめとばかり禄太郎は300円を懐にして、母親がとめるのも聞かず茶碗酒を重ね雪の中をふらつきながら出て行ったが、庭を出たところで滑って転んでしまう。
一方、福次郎は忘年会から戻ってきて、庭のそばでさっき母親に渡した財布を見つける。中には300円が入ったままだった。福次郎母親の部屋に入って金を見せて、「人にはみな分限というものがあって、一升袋には一升以上は入らない。無理に入れようとしても袋が破れてしまう。兄さんは小さい袋なのに大きな事ばかりしようとしているから、身代限りを続けているのでしょうね」と言う。
戸をどんどんと叩く音がする。開けるとすっかり酔いもさめて青ざめた禄太郎が立っていた。部屋に入って禄太郎は今の福太郎の話を立ち聞きし、自分の誤りに気付く。300円を差し出す福次郎に、禄太郎はそのうち10円だけ貸しておくれと頼む。
すっかり心を入れ替えた禄太郎は10円を持って福島の荒れ地を開墾して、それを元手に北海道に渡って亀田村を開拓したという。

圓生は晩年になってネタ下ろししていて、市販されているCDを聴いた限りでは随分と暗いという印象を受けていた。この日のさん喬の高座を聴いて、最後に救いがあり、なかなか良く出来た噺だと改めて思った。
このネタは演者に力量が求められ、長講の割には儲からない噺だと思う。演じ手が少ないはそうした理由からだろう。
さん喬、渾身の一席。

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コメント

復活、おめでとうございます!
さん喬の「福禄寿」は、古くなりますが、2009年1月の朝日名人会で聴いています。
CDでも発売されていますね。
さん喬にはニンな噺だと思います。
今後も、記事を楽しみにしています。

投稿: 小言幸兵衛 | 2018/08/22 17:08

小言幸兵衛様
有難うごじます。
さん喬の高座は圓生のものとは少し中身を変えていましたが、この方がストーリーがすっきりして分かり易かったと思います。
ご指摘の様にさん喬にはニンのネタです。

投稿: ほめ・く | 2018/08/22 17:48

雪の噺が二つも!!

さん喬師の福禄寿はTVの研究会で観た記憶があります(そういえば権太楼師の唐茄子屋も)
大看板になっても工夫や精進を怠らないとは、頭が下がります。

PS 土曜日に地元で落語会の予定があり、今から楽しみです。
お化け寄席 瀧川鯉昇・神田京子・桂鷹治

投稿: 蚤とり侍 | 2018/08/23 00:56

蚤とり侍様
演者も真夏に冬のネタとは、と言ってましたが、2席とも熱演で結構でした。
地域寄席には一時期せっせと通ってましたが、ここ最近は御無沙汰してます。

投稿: ほめ・く | 2018/08/23 04:51

酷暑はまだ続くようです、気を付けて参りましょう。
さて、小満んの「湯屋番」は私の中では結びつかんのですが、うまかったんですね。
「湯屋番」は先代の三木助やたい平のような若旦那然とした風貌にマッチするかと思いきや・・・
やはり、その世界の了見が体現化されているということでしょうか。

投稿: 福 | 2018/08/23 06:41

福様
『湯屋番』の若旦那は、真面目な姿を見せて勘当を解いてもらおうなんて気は全くない、骨の髄からの遊び人です。
そうした風情が出せるのは年季がいります。小満んの持つ粋さや色気が生きていました。

投稿: ほめ・く | 2018/08/23 08:55

ほめくさんの褒めるさん喬、聴きたかった。
新治、小満んももちろん。

投稿: 佐平次 | 2018/08/27 09:56

佐平次様
演じ手の少ない『福禄寿』、さん喬の芸風にピッタリだと思います。母親の心情がよく表現されていました。

投稿: ほめ・く | 2018/08/27 11:18

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