月例三三独演(2018/8/24)
「月例三三独演」
日時:2018年8月24日(金)19時
会場:イイノホール
< 番組 >
柳家三三『猫の皿』
柳家三三『突き落し』
桂三四郎『二転三転』
~仲入り~
柳家三三『妾馬』
三三の独演会には何度か足を運んだことがあるが、「月例三三独演」は初。
前座無しで(これはイイ)2席、ゲスト(正しくはスケかな)が1席、仲入り後に長講を1席と言う構成だった。満席のようだった。
三三『猫の皿』
地方を回って掘り出しものを安く買いたたいて、東京へ持ってって高く売りさばこうという端師(はしし)、当てが外れて手ぶら。今夜は熊谷泊りかとガッカリしながら、通りかかった茶店に腰を下ろし周囲の景色を眺める。
このネタの本題自体は短いので、前半部分に時間を割いて後半を浮き立たせるというのが常法。
仲入り前に2席演じる関係からか、前半の端師の独白がやや短めに感じた。
三三『突き落し』
『付き馬』と似たストーリーだが、こちらは客が大勢で、しかもウマをお歯黒ドブに突き落として逃げて来るっていうんだからタチが悪い。後味が悪いってってんでこのネタを嫌う人もいるくらいだ。でも、所詮は落語の世界。
三三の高座は、町内の若い者にさほど悪気を感じさせない。若気の至りのちょっとしたイタズラといった所。
三四郎『二転三転』
名前は知っていたが、初見。爽やかな印象で、声も滑舌も良いし、特に女性には人気があるのだろう。
ストーリーはサラリーマン家族の転勤を扱ったもので、中身は主に東京と大阪の言葉や習慣の違いがテーマ。
上方の落語家が東京で公演する際に、マクラで喋るような内容を1席にまとめたという印象だ。
客席はけっこう受けていたが、私は面白味を感じなかった。
三三『妾馬』
通常は殿様の命を受けた侍が長屋に入ると八五郎が井戸替えしている所に出会い、そのあと大家を訪ねて長屋の”つる”を屋敷に奉公に上げるようにと伝える。後は大家が母親と兄に承諾を得るといことで侍は帰って行く。
三三の演じ方は少し変えていて、八五郎は町内の悪ガキが釣瓶を井戸の中に落としてしまったので、その回収作業をしている所に侍が通りかかるとしていた。侍が大家を訪れた際に、大家がつるの母親を呼び承諾を求めるというのも初めて観た。
どうやら長屋の悪ガキである豆腐屋の倅のイタズラを強調するためにこうした演出にしたようだが、本筋と無関係な所でゴチャゴチャした感がある。
大家が八五郎を呼んで殿様の招きで屋敷に行くように勧める所で、行けば金が貰えると言った時に、八五郎が「いくら貰える?」と金額を訊くのをカットしていたが、ここは八にとって最大の関心事だった筈で外せないのでは。
殿の御前で八五郎はすっかり酒に酔い、お酌してくれるご老女に「綺麗だね」などと言って愛嬌を見せるのは新しい工夫だ。
この後、通常は八五郎が都々逸を披露するのだが、三三の高座では無かった。
ラストは、のちに八五郎の母親がつるの子と対面が出来たということで終えていた。
こうした三三のいくつかの改変は、評価が分かれるところだろう。
« 人形町らくだ亭(2018/8/21) | トップページ | 四代目桂春團治襲名披露公演(2018/8/25) »
「寄席・落語」カテゴリの記事
- 「落語みすゞ亭」の開催(2024.08.23)
- 柳亭こみち「女性落語家増加作戦」(2024.08.18)
- 『百年目』の補足、番頭の金遣いについて(2024.08.05)
- 落語『百年目』、残された疑問(2024.08.04)
- 柳家さん喬が落語協会会長に(2024.08.02)
三四郎は例のいらっしゃぁい、の弟子ですが、上方の昇太とでも呼ぶべき個性です。
>本筋と無関係な所でゴチャゴチャした感が
げに演出、改編というものは難しいですね。
投稿: 福 | 2018/08/29 06:56
福様
『妾馬』の主題は武士と町人、特に大名と職人との対比にあると思います。
そういう点で三三の改編は評価が分かれるでしょう。
投稿: ほめ・く | 2018/08/29 09:06