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2018/09/09

扇辰・喬太郎の会(2018/9/8)

第73回「扇辰・喬太郎の会」
日時:2018年9月8日(土)18時30分
会場:国立演芸場
<  番組  >
前座・柳家寿伴『金明竹』
入船亭扇辰『田能久』 
柳家喬太郎『品川心中』 
~仲入り~
柳家喬太郎『親子酒』* 
入船亭扇辰『江戸の夢』*
(*ネタ下ろし)

年に2回開催される「扇辰・喬太郎の会」、毎回チケットを取るのに苦労する。会の特色である二人のネタ出しを楽しみにしている方が多いのだろう。

扇辰『田能久』
扇辰の良さは丁寧であること。人物の演じ分けも明瞭なので聴いていて分かりやすい。
人間を飲み込もうとしたが、相手を狸と勝手に錯覚して打ち解けてしまった蟒蛇、脇が甘かったばかりに自滅してしまう。
蟒蛇も政治家も脇の甘いのはダメ。

喬太郎『品川心中』 
延々とマクラを振りながら、マクラが長いのはネタに入りたくないからと言いながら本題へ。この人のマクラを楽しみに来ている人もいるのだろう。
基本的なスタイルは先代馬生の型と思われるが、喬太郎が演じるお染と金蔵は若く見える。金蔵が兄いの家に暇乞いに行った時に兄いは留守でお上さんが応対するのは初めて聴いた。
最後の所は、与太郎が肥甕に落ちたという騒動で終わるケースが多いが、喬太郎は慌ててサイコロを飲み込んだ男が兄いから背中を叩かれ、吐き出したサイコロを見て「ようやく長が出た!」で下げた。
全体にスピーディーな運びだったが、お染が軽過ぎた感が否めない。

喬太郎『親子酒』
最初の場面で、息子が家で飲み過ぎて両親の前で醜態を演じてしまい禁酒を誓うと、父親がお前が禁酒するなら私もと言って親子が禁酒の約束をする。
しばらくは二人とも約束を守るが、半月ほど経った夕方、お茶を飲んでいる父親の前で、母親が美味そうに酒を飲み始める。どうやら、母親としては亭主の本気度を試すつもりもあったようだ。当初は我慢していた父親だったが遂に堪えきれず酒を口にするが、やがて泥酔してしまう。
そこへ息子が帰ってくるが、6軒の得意先で次々と飲んできたのでこれまた泥酔。
後はお馴染みのサゲとなる。
こうした演じ方だと、随分とこのネタの印象も変わる。
この演じ方を聴いたのは初めてだったので、どなたか他の演者でこの型の『親子酒』を聴いたことがあれば、ご教示願いたい。

扇辰『江戸の夢』
宇野信夫作で、元々は歌舞伎の台本として作られ、昭和15年に初演。
それを作者自身が三遊亭圓生のために落語として書き直したもの。昭和42年に圓生がネタ下ろしした。
あらすじは以下の通り。
ある村の庄屋・武兵衛の娘が奉公人の藤七と結婚したいと言い出した。母親は、藤七は6年前に店に現れて、素性も分からず親の名前も言わない様な男だと反対する。武兵衛は、藤七は酒も飲まないし真面目でよく働く。礼儀正しので氏素性は良いに違いないと結婚を認め、二人は一緒になる。
娘夫婦は仲が良く稼業も順調だった。
また藤七は、仕事の傍ら庭に茶の木を植え大切に育てていた。
ある日、両親が江戸見物に出かけることになり、藤七から「浅草にある奈良屋という茶葉屋へ行って、その主人に自分が育てた茶を鑑定してもらいたい」と頼まれる。
両親は江戸見物の最終日に浅草寺に参詣し、帰りに奈良屋に寄って番頭に茶の鑑定をしてくれと頼むが断られる。そこへ店の主人・宗味が現れ、茶の葉を見ると二人を奥座敷にへ招き入れた。
主人は二人が持ってきた茶を入れて味をみながら藤七の話を訊くと、この茶は茶の挽き方が特殊で、自分と息子以外は知らない技法と、打ち明ける。
「えっ、それではあの藤七はあなたの息子……」
「いいえ、私の息子は酒が元で相手を殺め、6年前に死んでおります。あなた方の婿殿、私の息子ではございませんが、よくぞこの茶を作ったとお伝え下さい」
奈良屋を辞し表に出た武兵衛夫婦、藤七の普段の様子を思い起こして女房が、
「常日頃の言葉遣い、あれの行儀正しいのも、あの茶人の子なんだろ……」
「うん……氏(宇治)は争えない」
でサゲ。

いかにも扇辰らしい丁寧な語りで、ネタ下ろしとは思えない完成度の高さだった。
ただ、藤七が浅草の奈良屋の主に茶の鑑定を依頼する時点で結末は見えて来るので、もう少し刈り込んで時間を短くしたらどうだろうかと思った。
このままだと寄席の高座には掛けられないのでは、と。

感性の喬太郎、理詰めの扇辰、それぞれのネタ下ろし。

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コメント

禁酒の原因も、母親が飲んで試したということも聴いたことがない。
6軒の得意先というのも初耳。
息子のべろべろは「俺の酒がのめねえなら取引はやめる」とお得意先で絡まれたから飲んじまった。
または、それでも断ると「気に入った、飲め!」ていわれてついガブガブ、というもの。

投稿: 福 | 2018/09/09 19:10

福様
息子が両親の前で泥酔し、素っ裸で踊ったのが禁酒の理由というのも初めてです。
型破りの『親子酒』でしたが、これも喬太郎。

投稿: ほめ・く | 2018/09/09 21:00

ずいぶん聴いてない扇辰、行きたくなりました。
喬太郎の独創でしょうか、それは。

投稿: 佐平次 | 2018/09/10 11:08

佐平次様
久々に扇辰の良さが光る2席でした。2席目のお茶屋の主人は風格があって納得の高座でした。
喬太郎の高座は好みが分かれるところでしょう。

投稿: ほめ・く | 2018/09/10 11:24

扇辰、私も久しぶりに浅草で「目黒のさんま」を聴きました。満席の客も待っていたようで、演者と客とが調和した感じでした。
噺の運びが巧妙、クスグリも家来の名前が歴代首相、さんまを恋しがるのは一時期の大竹しのぶなんて混ぜながら大いにわかせていました。

投稿: 福 | 2018/09/12 06:36

福様
秋の扇辰は『目黒のさんま』です。この秋も何度か聞くことになるでしょう。

投稿: ほめ・く | 2018/09/12 08:08

喬太郎の「親子酒」の構成は、まったく聴いたことがありません。彼の創作ですかね。

へぇ、扇辰が「江戸の夢」を演りましたか。
彼にはニンかもしれませんね。
三年前に小満んで初めて聴きました。
ご興味があれば、下記の拙ブログをご覧ください。
https://kogotokoub.exblog.jp/d2015-05-19/

投稿: 小言幸兵衛 | 2018/09/12 12:07

小言幸兵衛様
幸兵衛さんがご存じないとなると、喬太郎の改作でしょうか。
扇辰の高座では、マクラで俳句会の話題から自作の句の紹介でネタに入りました。この辺りは圓生に対するリスペクトを感じさせます。

投稿: ほめ・く | 2018/09/12 18:51

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