フォト
2023年6月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
無料ブログはココログ

« 2018年8月 | トップページ | 2018年10月 »

2018/09/30

国立名人会(2018/9/29)

第421回「国立名人会」
日時:2018年9月29日(土)13時
会場:国立演芸場
<  番組  >
前座・柳家小はだ『たらちね』
柳家三之助『黄金の大黒』
三遊亭吉窓『里帰り』
むかし家今松『質屋庫』
―仲入り―
柳家はん治『禁酒番屋』
林家正楽『紙切り』
柳家小三治『出来心』

三之助『黄金の大黒』
落語家として押し出しも良いし、声も語り口も良い。古典を真っすぐに演じる本格派で期待値は高い。
何度か高座に接しているが、この日もそうだが、面白みに欠けるのだ。その理由は、芸が綺麗過ぎるのだと思う。ここでもうひと捻りしたら面白くなるのにと言う所で寸止めしているように感じるのだ。
  
吉窓『里帰り』
春風亭柳昇作の新作落語。原話はフランスとされているようだが、私は『かんしゃく』からヒントを得たものと推定している。
サゲは2種類あり、父親が娘に渡した毒薬が「うどん粉」で「平手打ちしただろう」でサゲる場合と、「重曹」で「胸がスーッとした」でサゲる場合だ。吉窓の高座は後者だった。
全体的にどうも感心しない。稽古不足なのか言葉の言い間違いなどミスが多く、リズムを壊していた。落語家として脂の乗り切った年齢なのだから、もっと充実した高座を見せて欲しい。

今松『質屋庫』
この噺を理解するには、最低限二つの予備知識がいる。
1、天神様=菅原道真が右大臣にまで昇りながら、左大臣・藤原時平に讒訴(ざんそ)され、大宰府へ大宰員外帥として流され(左遷され)、現地で没した。「東風吹かば にほひおこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ」は道真の詠んだ代表的な和歌。
2、質屋には質草(品物)を預けて現金を借りるが、一定期限内に元金と質料(利子)を払えば質草を受け出すことが出来る。期限が過ぎても質料を払えば(利上げ)期限を延長できる。
もし利上げしない時は、質草の所有権は質屋に移転する。これを「質流れ」という。
これが分からないと、サゲが理解できない。
元は上方のネタだが、東京でも演じられており、圓生の高座が極め付け。
この噺では、質屋の主人が番頭に化け物の正体を、大事な品物を預けた人の執念が宿り化け物になったのではと語るのだが、これが結構長い。
また、主人に呼ばれた熊五郎が店に内緒で酒や漬けもの、下駄などを勝手に持ち出していたことを白状するのだが、これも長い。
下手な人が演じるとここがダレてしまい、独白部分をもたせるには技量が必要だ。
強がっていた熊五郎が化け物と聞いて途端に怖気づく、その落差も見どころだ。
今松の高座は間然とする所がなく引き締まったもので、十分に楽しめた。
ただ気になったのは、化け物を時々幽霊と言っていたが、これは化け物で統一すべきだったろう。

はん治『禁酒番屋』
結論から言えば、良い出来で面白かった。はん治の語りのリズムとこの噺が良く合っていた。
新作を演じる場合もそうだが、セリフの「間」の取り方が上手い。

小三治『出来心』
別名『花色木綿』、小三治の十八番だ。
年に一度位のペースで小三治を聴いているが、ここ数年は見に来てるといった方が正確か。
間もなく79歳を迎える元気な小三治を見た、それで十分。

2018/09/27

鈴本9月下席・昼(2018/9/26)

鈴本演芸場9月下席昼の部・6日目

前座・柳亭市朗『堀の内』
<  番組  >
春風一刀『子ほめ』
ダーク広和『奇術』
春風亭勢朝『大師の杵』
三遊亭歌武蔵『漫談』
ロケット団『漫才』
桂藤兵衛『三人無筆』
春風亭三朝『やかんなめ』
林家楽一『紙切り』
春風亭一朝『短命』
─仲入り─
三増紋之助『曲独楽』
橘家圓太郎『桃太郎』
古今亭文菊『権助提灯』
柳家小菊『粋曲』
春風亭一之輔『竹の水仙』

団体客も入っていたが、会場はほぼ満席。やはりトリを始めとして顔づけが良いせいだろう。

一刀『子ほめ』
名前は「はるかぜいっとう」と読む。一朝門下で唯一人亭号が異なる。喋りも滑舌も良い。

ダーク広和『奇術』
何より手品が大好きという思い入れは伝わる。ただプロだから見せ方にはもっと工夫が要るだろう。

勢朝『大師の杵』
久々だ。いつもの様に軽い小咄を並べて本題へ。このネタも久しぶりだった。4代目柳亭痴楽が十八番としていて、布団に残された杵を見た娘が「思い杵との辻占かしら? それとも後から搗(付)いてこい搗(付)いてこい」と言って大師の後を追う、と演じていたのを思い出す。
川崎大師由来の一席で、3代目金馬によればここで「女除(よ)け」のお守りを売り出したが全く売れなかったと言っていた。ただ「女除(よ)け」の御利益はあるから、川崎大師に参詣される男性はご注意を。

歌武蔵『漫談』
いつも相撲漫談で沸かす。貴乃花騒動でまた新しい飯の種ができた。

ロケット団『漫才』
時事ネタを織り込んでこの日も舌好調! 落語協会の漫才師としては、ホームランと2枚看板だね。

藤兵衛『三人無筆』
近頃では無筆の人がいなくなったせいか、このネタが演じられなくなった。
葬儀の参列者の帳付けを頼まれた二人、共に無筆だったので大弱り。知恵を絞って「仏の遺言」でめいめいに自分で名前を書いて貰うことにした。運良く字が達者な参列者がいて替わりに皆んな書いてくれた。助かったと思ったら後から遅れて来たのがまた無筆。
仕方がないので、「そうだ。おまえさんが弔いに来なかったことにしとこう」
「そんなことをしたら旦那に申し訳がねえ」
「いや、かまいません。ホトケの遺言にしときます」
でサゲ。
この人らしい明解な語り口で聴かせていた。

三朝『やかんなめ』
二ツ目時代から注目していたが、やや足踏みの感があった。
この日は面白かった。こういうネタはニンだ。

楽一『紙切り』
珍しく体を揺らさない紙切り。腕は確かなようだが、芸人らしい愛想が欲しい。

一朝『短命』
この日も一朝懸命。ただ葬儀の悔やみ繋がりで、藤兵衛『三人無筆』とネタがツイテしまったのでは。

紋之助『曲独楽』
暫く見なかったが病気でもしていたのだろうか。それともタマタマかな。

圓太郎『桃太郎』
この人が演じると、小生意気な子も可愛く見えてくる。

文菊『権助提灯』
文菊の演じる女性っていうのは、病的に色っぽい。権助の造形が良かった。

小菊『粋曲』
大好きな小菊姐さんだが、この日はちょいと喉の調子が良くなかった。お大事にね。

一之輔『竹の水仙』
一之輔のこのネタは初めてだが、相変わらず何を演らしても上手い。持ちネタの数が多いだけでなく、その幅が広いのに感心する。難しいと思われた『鼠穴』や『富久』も難なくこなしてしまう。
この日も宿の亭主と甚五郎、亭主と女房、細川公と家来をそれぞれ対照的に描き分け、その手腕を発揮していた。

質量ともに満足の鈴本9月下席だった。

2018/09/26

貴乃花問題と「ムラ社会」

相撲協会に退職届を出した貴乃花親方が9月25日に会見を開いた。
貴乃花が今回の事態に追い込まれた理由として、貴ノ岩への暴行問題の告発状に関し協会側から事実無根との見解が示され、これを認めねば廃業に追い込まれるという圧力があったと主張している。
相撲協会側はこれを否定しているが(公式に認める筈がない)、事実しては協会が貴乃花を追い出したくて色々と画策してきたことは否定できまい。

相撲協会は典型的なムラ社会だ。
ムラ社会は所属する人間に「同質」を求め、「異質」を排除する。
相撲協会にとっては貴乃花は異質の存在だった。だから村八分にされ、最後は追い出されたというのが今回の経緯だ。
ムラ社会にとって大切なことは村の「掟(おきて)」を守ることだ。
掟はしばしば法令より優先される。
貴乃花が提出した告発状は、その内容が正しいかどうかにかかわらずムラの掟に反するものだった。
掟を無視し異質な行動をとり続けたという理由だけで、貴乃花はムラから排除されたのである。

2018/09/23

「出囃子」あれこれ(1)

落語家の出囃子は、落語家自身の雰囲気や芸風にあわせて下座が決めるのが通例とされているが、最近では二つ目に昇進した際に落語家自身がリクエストする例もあるようだ。
出囃子の原曲としては、
①歌舞伎や文楽の中で演奏される長唄や浄瑠璃
②小唄、端唄など俗曲
③出身地に因む民謡
④ジャズ、歌謡曲、アニメソング、自身のテーマ曲、など
が使われている。

ここで、8代目文楽の「野崎」。圓生の「正札附」、志ん生の「一丁入り」について原曲を推察してみたい。
(1)「野崎」
この出所は明白で、文楽や歌舞伎の演目である「新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)」上の段の後半部分、通称「野崎村」の山場で演奏されている。
上方では代々の桂春団治の出囃子として有名で、東京では8代目桂文楽の代名詞ともなっているが、同時代には9代目桂文治も使っていた。
(2)「正札附」
新春を寿ぐ目出度い歌舞伎狂言の中で使われている長唄「正札附根元草摺引(しようふだつきこんげんくさずりびき)」、通称「正札附」が原曲と思われる。東京では三遊亭圓生、その亡き後は弟子の三遊亭圓弥が出囃子としていた。
(3)「一丁入り」
これは出所が不明だ。
但し圓生が監修した「寄席囃子」ではこの曲を「江戸のっと」としている。「のっと」とは「祝詞」の事で、能・狂言の祈祷で使われる囃子を長唄に移したものを指す。圓生が正しければ、この辺りに原曲があると思われる。
古今亭志ん生の出囃子として有名で、その後は息子の先代馬生が晩年の一時期使っていたが、今や永久欠番の扱いになっているようだ。

2018/09/22

落語家の出囃子一覧(上方編)

                            
高 座 名 出  囃  子
桂あやめ 菖蒲浴衣
  桂歌之助 雛鶴三番叟
  桂梅團治 龍神
笑福亭鶴志 舟行くずし
  月亭可朝 ああそれなのに
  桂吉朝 外記猿
  桂きん枝 相川
  露の五郎兵衛 勧進帳
桂ざこば 御船
  桂塩鯛 鯛や鯛
  笑福亭枝鶴 だんじり
  桂枝雀 ひるまま
  桂雀三郎 じんじろ
  桂春蝶(2) 月の巻
  笑福亭笑瓶 魔法使いサリー
  笑福亭松鶴 舟行き
  笑福亭松喬(6) 高砂丹前
  笑福亭松喬 お兼晒し
  露の新治 金毘羅船々
  笑福亭仁智 オクラホマミキサー
  林家染二 藤娘
  林家染丸 正札附
笑福亭たま 長崎さわぎ
  笑福亭鶴光 春はうれしや
  笑福亭鶴瓶 トンコ節
桂南光 猩々
  笑福亭仁鶴 猩々くずし
月亭八方 夫婦万歳
  桂春団治 野崎
  桂春之輔 月宮殿鶴亀
  笑福亭福笑 佃くずし
  桂福團治 梅は咲いたか
  森乃福郎 獅子舞
  桂文我 せり
  桂文三 助六あがり
  桂文枝(5) 廓丹前
  桂文枝 本調子中の舞
  桂文珍 圓馬囃子
  月亭文都 おかめ
  桂文福 鞠と殿様
  桂米紫 猫じゃ猫じゃ
  桂米朝 三下がりカッコ
  月亭方正 ヤマザキ一番
笑福亭松之助 新曲浦島
桂米團治 カッコ
全体を網羅してはいないので、漏れた場合はご勘弁を。
 ()内の数字は何代目かを表す。数字がないものは当代、あるいは表示せずとも何代目か容易に類推できるもの(例えば米朝、松鶴、吉朝など)。
出囃子はネタによって変える場合がある。
 
 
 

2018/09/21

落語家の出囃子一覧(東京編)

                                                                                                   
高 座 名 出  囃  子
春風亭一之輔 さつまさ
  柳亭市馬 吾妻八景
  春風亭一朝 菖蒲浴衣
  むかし家今松 舌出し三番叟
  三遊亭歌之介 我は海の子
  桂歌丸 大漁節
  三遊亭圓歌 二ツ巴
  古今亭圓菊 武蔵名物
  三遊亭圓生 正札付
  三遊亭圓丈 官女
  橘家圓蔵 虎退治
  橘家圓太郎 圓太郎囃子
  三遊亭圓楽 元禄花見踊り
三笑亭可楽(8) 勧進帳
  柳家花禄 お兼晒し
  林家木久扇 宮さん宮さん
  古今亭菊之丞 元禄花見踊り
  古今亭菊丸 勧進帳
  柳家喜多八 梅の栄
  柳家喬太郎 まかしょ
  三遊亭金馬 本調子カッコ
  五街道雲助 箱根八里
  三遊亭兼好 ぶらりっと
  春風亭小朝 さわぎ
  三遊亭好楽 つぼらん
  柳家小ゑん ぎっちょんちょん
  柳家小さん(5) 本調子中の舞
  柳家小三治 二上りカッコ
  柳家小満ん 青海波
  三遊亭小遊三 ボタンとリボン
  春風亭小柳枝 梅は咲いたか
  柳家権太楼 金毘羅船々
桂才賀 野毛山
  柳家さん喬 鞍馬獅子
  柳家三三 娘道成寺
  立川志の輔 梅は咲いたか
  三笑亭笑三 並木駒形
  林家正蔵(8) 菖蒲浴衣
  春風亭昇太 ディビークロケット
  春風亭正朝 長崎ぶらぶら節
  立川志らく 鳩(花嫁人形)
  古今亭志ん生 一丁入り
  古今亭志ん輔 越後獅子
  古今亭志ん朝 老松
  林家しん平 阿波踊り
  入船亭扇橋 俄獅子
  入船亭扇辰 から傘
  入船亭扇遊 道成寺
  川柳川柳 三味線ブギ
林家たい平 ぎっちょ
  五明樓玉の輔 お猿のかごや
  立川談志 木賊刈り
  立川談春 鞍馬
  立川談笑 野球拳
桃月庵白酒 江戸
  三遊亭白鳥 白鳥の湖
  金原亭馬生(10) 鞍馬
  金原亭馬生 七福神
  隅田川馬石 め組の合方
  鈴々舎馬風 本調子のっと
  桂文治 武蔵名物
  橘家文蔵 三下がりカッコ
  桂文楽(8) 野崎
桂三木助(3,4) つくま
  三遊亭萬橘 小鍛治
  昔昔亭桃太郎 旧桃太郎の唄
三遊亭遊三 お江戸日本橋
  三遊亭遊雀 粟餅
  三遊亭夢丸 万才くずし
  桂米助 私を野球に連れてって
  桂米丸 金毘羅船々
滝川鯉昇
  春風亭柳好(3) 梅は咲いたか
  春風亭柳枝(8) 三下がりカッコ
  春風亭柳昇 お前とならば
  春風亭柳朝(5) さつまさ
  三遊亭竜楽
 
全体を網羅してはいないので、漏れた場合はご勘弁を。
()内の数字は何代目かを表す。
数字がないものは当代、あるいは表示せずとも何代目か容易に類推できるもの(例えば志ん生、圓生、志ん朝など)。
出囃子はネタによって変える場合がある。
 
 

2018/09/20

「夏祭浪花鑑」と落語

昨日(2018/9/19)、国立劇場・小劇場で人形浄瑠璃「文楽」の「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」を鑑賞。
構成は以下の通り。
住吉鳥居前の段
内本町道具屋の段
道行妹背の走書
釣船三婦内の段
長町裏の段
田島町団七内の段

初演は1745年。
上方の侠客やその女房たちの義侠心を大阪の夏祭り・だんじりの興奮を背景に描いたもの。相変わらず人形の動きの美しさにウットリ見惚れる。本物の人間でもあれほど品が良く、且つキリリとした動きは出来ないと思えるほどだ。
内容は詳しい方が書いているので省略するが、落語のネタと関係していそうな箇所があったので紹介する。

『土橋漫才』
上方のネタで、東京では演じられていないかと思われる。
道楽がやまない若旦那を諫めようとした番頭が、もみ合いになった末、若旦那を殺めてしまうという場面が山場。桂米朝の高座ではこの乱闘シーンを「ダンマリ」で演じている。後からこれは夢だと分かるのだが。
これが「夏祭浪花鑑」の「長町裏の段」の団七の舅殺しのパロディとなっている。
忠義な番頭は「夏祭」の主人公・団七に、傲慢な若旦那は主人公の義父である義平次に、それぞれ準えられていて、殺しのシーンは「夏祭」同様の「ダンマリ」で演じられているのだ。
(「ダンマリ」とは、暗闇のなかで互いに無言で探り合う動作を様式的に見せるものを言う)

『ふたなり』
「道行妹背の走書の段」で、前の段で道具屋の色男の手代が正義のためとはいえ人を殺めてしまい、恋仲だった主人の娘と心中しようとする。
そこへ悪い手代が後を追ってきて二人に嫌がらせする。心中するなら首つりが良いと勧め、自分で手本を見せている間に本当に首をつってしまう。
それを見た二人は心中をとりやめ、人を殺めた委細を書き置きした文を首つりの懐に入れて立ち去る。
これを見て、落語の『ふたなり』のそっくりだと思った。上方のネタだが、東京でも志ん生や9代目文治が演じていた。
落語では10両の金策のために森を通りかかった男が、自殺しようとする娘を見つける。当初は思いとどまるよう説得するのだが、10両を持っていることが分かると自殺を勧める。死に方が分からないという娘に男は首つりの説明をするが、誤って本当に首をつってしまう。その姿を見て娘はすっかり気が変わり、書いていた遺書を男の懐に入れて逃げてしまう。
ね、そっくりでしょ。
これも「夏祭」のパロディではないだろうかと、勝手に解釈しているのだが。

落語好きな方、「文楽」もなかなか面白そうでしょ。

2018/09/18

国立演芸場9月中席(2018/9/17)

国立演芸場9月中席・7日目

前座・三遊亭ぐんま『初天神』
<  番組  >
三遊亭ふう丈『ライザップ寿限無』
三遊亭丈二『極道のバイト達』
丸山おさむ『物真似』
春風亭百栄『強情灸』
林家正雀『七段目』
─仲入り─
すず風にゃん子・金魚『漫才』
柳家小ゑん『長い夜 改Ⅱ』
ダーク広和『奇術』
三遊亭圓丈『前座チャンネル』

自民党総裁選っていうのをやってるらしい。先日、NHKなんぞは立ち合い演説会の中継までしていたが、自民党員しか投票権がないのに、意味が分かぬ。どちらかと言えば石破の方は未だマシだが、いずれにしろ自民党内のコップの中の嵐で、しょせんは目クソ鼻クソ。

国立の9月中席はトリが三遊亭圓丈、そういえば久しく聴いてなかったなと思い起こし、敬老の日の7日目に出向く。
国立としてはまあまあの入りだった。小ゑんが客席に向かって「努力すれば出来るじゃない!」と言っていたので、平日は客が少ないのだろう。

ふう丈『ライザップ寿限無』
師匠に倣ってか、寿限無のパロディーだ。父親が子どもが病弱なので逞しく育って欲しいと、体を鍛えるのが趣味の住職に子供の名前を相談に行く。
こっから先はお約束。フーンといった程度。

丈二『極道のバイト達』
喬太郎が謝楽祭の案内をしたときに、この人の名があがっていた。バーテンダーの資格を持ってるようだ。
兄貴分である大阪のヤクザの組長が弟分の東京のヤクザの組長の元へ訪ねてくる。ところが組長と子分二人以外はみなバイト。組長のことを店長とよび、定時になるとタイムカードを押して帰ろうとする。子分の一人が相手の組員に刺されたので仕返しに殴り込みに行くのだが、それには残業手当を払うことになる。そうしないとブラック企業(最初からブラックだけど)にされる。組の事務所に残った兄貴分の組長が、バイトの面接に来た女子高生に面接するが、却って彼女から堅気になるよう勧められ、バイトを探すか、となる。
丈二は一時期大阪で修行したことがあるようで、上方弁が達者な点を活かしたネタだ。適度にギャグをちりばめ面白く仕上げていた。

丸山おさむ『物真似』
初見。昔懐かしい声帯模写スタイルで、いきなり天皇の物真似から入った。
御三家の真似では形態物真似を披露して会場を盛り上げていた。
歌唱力があるし芸達者だし、もっと寄席に出て欲しい芸人だ。

百栄『強情灸』
この日は本格古典で。兄いが灸の熱さに堪えられず身体のあちこちを叩きながら、まるで稀勢の里というギャグが受けていた。

正雀『七段目』
いかにもこの人らしい芝居噺仕立てで演じる。一つ一つの所作が丁寧で綺麗だ。
最後に彦六の真似で「奴さん」、中村歌右衛門の真似(知って人が少ないだろう)で「姐さん」の踊りのサービスがあった。

すず風にゃん子・金魚『漫才』
NG!

小ゑん『長い夜 改Ⅱ』
このネタも何度目かだが、良く出来ている。
「高田馬場のスタバの女子大生」「北千住のデニーズに来た親子連れ」「青山のバーの気取った男」「渋谷センター街の青学生ラッパー」の描写をオムニバスで繋ぐ。
その光景を宇宙(そら)と大地が見つめているという、落語にしては雄大な 構想だ。

ダーク広和『奇術』
この日は視覚に訴えるネタを披露していた。

圓丈『前座チャンネル』
久々だったが、急に年を取った印象だ。高座に見台を置き、その上に台本を置いて、それを見ながらの高座となった。
最初は前座が余興をやるので、それを師匠が審査するという説明だったが、実際には前座が落語を演じて師匠が解説(審査なのか評価なのか不明)するというもの。
前座が初めは小咄から入るが、次第に「時そば」へ。しかも口演中に扇子を客席に落とし、前列にいたお婆さんが拾ってバッグにしまう。これでは高座が続けられないと楽屋から扇子を送るが、これがまた客席に落ちてお婆さんがバッグに入れてしまう。仕方なく前座は丼の汁をそっくりすすって、最後はソバを手づかみで・・・。
このネタ、どこが面白いのか、最後まで分からなかった。
もしかして玄人向きなのか?

2018/09/16

ワザオギ落語会(2018/9/15)

第16回「ワザオギ落語会」
日時:2018年9月15日(土)18:30
会場:国立演芸場
<  番組  >
柳亭小痴楽『一目上り』
三遊亭萬橘『紀州』
春風亭一朝『抜け雀』
~仲入り~
笑福亭たま『ちしゃ医者』
柳家権太楼『短命』

「ワザオギ落語会」はDVDに収録して販売するという、一度で二度美味しい(主催者にとっては)会だ。もっともチラシを見ると2014年発売が最後になっている。4572円という価格が高すぎるせいで売れていないのか。
今回の出演者はベテラン二人に若手三人という構成。

小痴楽『一目上り』
いつもの学歴コンプレックスのマクラから入る。
試しに教科書を開いてみればわかるが、中学の学力が身についていれば、よほどの専門職を別にして、通常の仕事をするには必要かつ充分だ。
開口一番ということで前座噺を演じたようだが、やはりこのクラスの人が演じると面白い。八五郎の造形が可愛らしかった。
以前は七福神でサゲるのが一般的だったが、近ごろは芭蕉の句でサゲるケースが多い。

萬橘『紀州』
プログラムにも書いてあったが、この人の特長は「フラ」だ。そこに存在するだけで可笑しい。噺家にとっては最高の武器で、これさえあれば一生食うに困らないとさえ思う。又これだけは努力ではどうにもならない、天性なのだ。
だから、どこが面白いのか説明が難しい。ナマで聴いて貰うしかない、そういう噺家だ。

一朝『抜け雀』
以前に、他の一門の若手が予め知っていれば一朝さんの所へ弟子入りしたんだけどと言っていた。それだけ人柄が良いということだろう。
その人柄が芸に表れていて、どういうネタを掛けても人物を温かく描いている。この噺に登場する宿の主など、直ぐにでも友達になりたくなる愛すべき人物だ。宿賃を踏み倒していく絵師でさえ憎めない。
淀みないリズム感のある語りもこの人の魅力だ。

たま『ちしゃ医者』
東京に比べ上方の噺家の方が個性的で変わった人が多いようだ。たまは、マクラでそういう人たちをとりあげる。この日は桂文福の爆笑エピソードで会場を盛り上げた。
深夜、大店の番頭が藪医者の赤壁周庵のもとへ急患だから来てくれとやってくる。口の悪い下男の久助は「うちの先生に診てもうたらかえって命危ないで。」と断るが、とにかく急いで往診してくれということで、番頭と久助が医者を駕籠に乗せて店に向かう。
処が、途中で患者が死んだことが分かり、番頭は二人を置いて帰ってしまう。これでは駕籠が担げないと困っていると、そこへ下肥汲みの百姓が通りかかり、自分が替わりに担ぐと申し出る。その代わりにと肥の入った桶を医者が抱えることになる。駕籠が揺れるたびに桶の中身が跳ねるので医者は閉口する。
百姓が手水を汲むために立ち寄った家の婆さんに、手水汲むお礼に何をくれるのかと訊かれ、今日は何もない、駕籠に医者がおるだけと返事する。
その婆さん、「医者」と「ちしゃ」と聞き間違え、駕籠の中の肥桶に手を突っ込むやら、かき回して医者の顔に塗りたくるやらで大騒動。怒った医者が婆さんを蹴り倒すと、悲鳴を聞いた息子が駆け付け医者に殴りかかる。
「これ、何さらす、痛いがな」と医者。
「おのれこそ何さらす!母じゃ人に足かけくさって!」と息子が怒るのを、
久助が「足でよかった。手にかかったら、命がないで」
でサゲ。
全編スカトロジーのばっちい噺だが、それを汚いと感じさせないのが腕の見せ所だ。
このネタは他の演者でも聴いたことがあるが、たまの高座が断然面白い。

権太楼『短命』
前方が大受けだったので、マクラ抜きでやや抑え気味にネタに入る。
美人を妻に持つと亭主は短命になるのを一生懸命に謎かけする隠居と、それがサッパリ理解できない八五郎との珍妙なヤリトリが実に可笑しい。
何を演じても権太楼の世界に客席を引きずりこんでしまう。

それぞれの持ち味が生きた楽しい会だった。

2018/09/14

【街角で出会った美女】モルドバ編

モルドバは旧ソ連に属していましたが、歴史的にはルーマニアとの関係が深い国です。ソ連からモルドバが独立した際には、ロシア系住民がモルドバを離れて沿ドニエステルという別の独立国(国際的には未承認)を作りました。
モルドバの国に入って目につくのは一面のブドウ畑です。そう、この国は東欧で有数なワインの産地として知られています。
旧ソ連の末期、ゴルバチョフ大統領時代には、酒を飲むからソ連人は働かないからという理由で、彼の命令でモルドバ国内のワイン醸造所が閉鎖され、貯蔵していたワインは強制的に廃棄させられたそうです。だから今でもゴルビーの評判は極めて悪い。
私たちはモルドバ国内で最も規模も大きいワイナリーを訪れました。見学したワインセラーの全長が120kmという途方もない規模なのです。
ワインの試飲がありましたが、これが飲み放題です。
驚いたのはお土産に赤、白、ロゼの3本のフルボトルのワインをプレゼントしてくれたんです。太っ腹ですね。
夕食は家族経営のオープンエアレストランで、ここもワインは飲み放題。食後は家族総出でモルドバのフォークソングを合唱してくれました。
最後は歌に合わせてのダンスで、これには私たちも一緒に参加し踊りました。フォークダンスの様な振り付けでしたが、何せ若い女性と手をつなぐなどというのは久しぶりで、ちょっとドキドキしました。
画像はその時の女性たちで、みな美人。
♪酒は旨いし ネエチャンは綺麗だ ウーワウーワ ウーワワー♪
ヨーロッパ最貧国のモルドバですが、そんなこと微塵も感じさせない国でした。

Photo

Photo_2

2018/09/11

「西のかい枝 東の兼好」(2018/9/10)

第27回「西のかい枝 東の兼好」
日時:2018年9月10日(月)19時
会場:横浜にぎわい座 芸能ホール
<  番組  >
前座:桂竹もん『狸の鯉』
桂かい枝『誰が袖の親分』*
三遊亭兼好『三年目』*
~仲入り~
三遊亭兼好『磯の鮑』
桂かい枝『算段の平兵衛』
(*ネタ出し)

上方の若手実力派であるかい枝と、最近メキメキと腕を上げている兼好との二人会。

竹もん『狸の鯉』
言葉のアクセントが東京弁になっていない。早く直した方がいい。

かい枝『誰が袖の親分』
本人がこのネタを「落語作家の小佐田定雄が昔々創ったものの、一度演じきられたきりで、内容もわからなくなった幻のネタを、タイトルだけをたよりに復活します」と紹介している。
ある大店の若旦那、惚れた商売女の気を引こうと任侠の道に進むべく極道の一員となる。先ずは喧嘩の仲裁に入るが、相手が子どもだったのに殴られ失神してしまう。大事なのは人助けだと、今度は橋の上から身投げしようする男を引き留める。苦界に沈む女房を請け出そうと稼いだ金をスリに掏られてしまったその男に、若旦那は持っていた大金を渡す。お陰で女房を救えるという男、名前を聞けばなんと相手は若旦那が惚れて通った女だった。
かい枝の高座は、若旦那の意気込みと結果のちぐはぐさを描いていて楽しめた。

兼好『三年目』
以前は、兼好の高座に登場する女性が色気に欠けるという印象を持っていたが、この噺の幽霊になって出てくる前妻はなかなか色っぽかった。その上ちょいと剽軽な所は、兼好ならでは。
世話焼きの叔父さんを登場させ、全体に滑稽味の濃い中身に仕上げていた。

兼好『磯の鮑』
タイトルを「与太郎の女郎買い」とでもした方が分かりやすいかも。
仲間から担がれて「女郎買いの先生」から指南を受けた与太郎が、教えられた通りに吉原で登楼するのだが、万事がちぐはぐで、とんだ失敗に終わるというもの。
兼好が演じる与太郎がやたら可愛らしい。ニンのネタだ。

かい枝『算段の平兵衛』
いかにも上方落語らしいえげつなさと滑稽さが同居し増幅しあった筋立て。
一歩間違えると陰惨な噺になりかねないが、かい枝の高座は米朝を思わせる様な快適なテンポと鮮やかな登場人物の演じ分けで、この大ネタを堪能させてくれた。

内容は省略するが、二人とも巧みなマクラで観客を引き込んでいた手腕は、さすがだ。

2018/09/09

扇辰・喬太郎の会(2018/9/8)

第73回「扇辰・喬太郎の会」
日時:2018年9月8日(土)18時30分
会場:国立演芸場
<  番組  >
前座・柳家寿伴『金明竹』
入船亭扇辰『田能久』 
柳家喬太郎『品川心中』 
~仲入り~
柳家喬太郎『親子酒』* 
入船亭扇辰『江戸の夢』*
(*ネタ下ろし)

年に2回開催される「扇辰・喬太郎の会」、毎回チケットを取るのに苦労する。会の特色である二人のネタ出しを楽しみにしている方が多いのだろう。

扇辰『田能久』
扇辰の良さは丁寧であること。人物の演じ分けも明瞭なので聴いていて分かりやすい。
人間を飲み込もうとしたが、相手を狸と勝手に錯覚して打ち解けてしまった蟒蛇、脇が甘かったばかりに自滅してしまう。
蟒蛇も政治家も脇の甘いのはダメ。

喬太郎『品川心中』 
延々とマクラを振りながら、マクラが長いのはネタに入りたくないからと言いながら本題へ。この人のマクラを楽しみに来ている人もいるのだろう。
基本的なスタイルは先代馬生の型と思われるが、喬太郎が演じるお染と金蔵は若く見える。金蔵が兄いの家に暇乞いに行った時に兄いは留守でお上さんが応対するのは初めて聴いた。
最後の所は、与太郎が肥甕に落ちたという騒動で終わるケースが多いが、喬太郎は慌ててサイコロを飲み込んだ男が兄いから背中を叩かれ、吐き出したサイコロを見て「ようやく長が出た!」で下げた。
全体にスピーディーな運びだったが、お染が軽過ぎた感が否めない。

喬太郎『親子酒』
最初の場面で、息子が家で飲み過ぎて両親の前で醜態を演じてしまい禁酒を誓うと、父親がお前が禁酒するなら私もと言って親子が禁酒の約束をする。
しばらくは二人とも約束を守るが、半月ほど経った夕方、お茶を飲んでいる父親の前で、母親が美味そうに酒を飲み始める。どうやら、母親としては亭主の本気度を試すつもりもあったようだ。当初は我慢していた父親だったが遂に堪えきれず酒を口にするが、やがて泥酔してしまう。
そこへ息子が帰ってくるが、6軒の得意先で次々と飲んできたのでこれまた泥酔。
後はお馴染みのサゲとなる。
こうした演じ方だと、随分とこのネタの印象も変わる。
この演じ方を聴いたのは初めてだったので、どなたか他の演者でこの型の『親子酒』を聴いたことがあれば、ご教示願いたい。

扇辰『江戸の夢』
宇野信夫作で、元々は歌舞伎の台本として作られ、昭和15年に初演。
それを作者自身が三遊亭圓生のために落語として書き直したもの。昭和42年に圓生がネタ下ろしした。
あらすじは以下の通り。
ある村の庄屋・武兵衛の娘が奉公人の藤七と結婚したいと言い出した。母親は、藤七は6年前に店に現れて、素性も分からず親の名前も言わない様な男だと反対する。武兵衛は、藤七は酒も飲まないし真面目でよく働く。礼儀正しので氏素性は良いに違いないと結婚を認め、二人は一緒になる。
娘夫婦は仲が良く稼業も順調だった。
また藤七は、仕事の傍ら庭に茶の木を植え大切に育てていた。
ある日、両親が江戸見物に出かけることになり、藤七から「浅草にある奈良屋という茶葉屋へ行って、その主人に自分が育てた茶を鑑定してもらいたい」と頼まれる。
両親は江戸見物の最終日に浅草寺に参詣し、帰りに奈良屋に寄って番頭に茶の鑑定をしてくれと頼むが断られる。そこへ店の主人・宗味が現れ、茶の葉を見ると二人を奥座敷にへ招き入れた。
主人は二人が持ってきた茶を入れて味をみながら藤七の話を訊くと、この茶は茶の挽き方が特殊で、自分と息子以外は知らない技法と、打ち明ける。
「えっ、それではあの藤七はあなたの息子……」
「いいえ、私の息子は酒が元で相手を殺め、6年前に死んでおります。あなた方の婿殿、私の息子ではございませんが、よくぞこの茶を作ったとお伝え下さい」
奈良屋を辞し表に出た武兵衛夫婦、藤七の普段の様子を思い起こして女房が、
「常日頃の言葉遣い、あれの行儀正しいのも、あの茶人の子なんだろ……」
「うん……氏(宇治)は争えない」
でサゲ。

いかにも扇辰らしい丁寧な語りで、ネタ下ろしとは思えない完成度の高さだった。
ただ、藤七が浅草の奈良屋の主に茶の鑑定を依頼する時点で結末は見えて来るので、もう少し刈り込んで時間を短くしたらどうだろうかと思った。
このままだと寄席の高座には掛けられないのでは、と。

感性の喬太郎、理詰めの扇辰、それぞれのネタ下ろし。

2018/09/08

鈴本9月上席・昼(2018/9/7)

鈴本演芸場9月上席昼の部・7日目

三遊亭あおもり『たらちね』
<  番組  >
桃月庵こはく『ざる屋』
ダーク広和『奇術』
林家正蔵『新聞記事』
三遊亭歌武蔵『漫談』
おしどり『漫才』
蜃気楼龍玉『親子酒』
柳家さん生『動物園』
鏡味仙三郎社中『太神楽曲芸』
隅田川馬石『元犬』
─仲入り─
ホームラン『漫才』
桂文楽『六尺棒』
春風亭一之輔『牛ほめ』
林家二楽『紙切り』
桃月庵白酒『厩火事』

鈴本の9月上席昼の部は、雲助の弟子が3人揃い、惣領弟子の白酒がトリ。その7日目に出向く。
平日の昼にも拘わらず満席だった。

こはく『ざる屋』
白酒の弟子で今春二ツ目に昇進した。悪い出来ではなかったが、やや荷が重かったか。このネタをやるには「深川」が唄えるようにしないと。

ダーク広和『奇術』
手品師というよりは手品解説者、毎回ネタを工夫してくるのに感心する。

正蔵『新聞記事』
こぶ平時代からよくこのネタを掛けていたっけ。

歌武蔵『漫談』
定番の漫談を。この日最も受けていた。

おしどり『漫才』
楽器を使った漫才が減ったので貴重な存在。
男性の方が針金を使って色々な形を作るのが芸になっている。

龍玉『親子酒』
この人は寄席の浅い出番ではこのネタが多い。
どちらかというと「陰」の芸風なので、滑稽噺の持ちネタが少ないのかも。

さん生『動物園』
久々だった。一見とりとめのないマクラだったが、ちゃんとネタに繋がって いた。

馬石『元犬』
この人が演じる犬が実に可愛らしい。イリューシンの様な手の動きと独特のしゃべりに幻惑される、不思議な芸だ。

ホームラン『漫才』
久々に「あなたは神を信じますか、私は信じません」を聞いた。二刀流と両刀使い、同じ様な意味だが語感が全く違うのは面白い。

文楽『六尺棒』
この人も久しぶりだった。名跡を継ぎながら芸風を継がない典型的な芸人だ。80歳とは思えぬ声の張りで、まだまだ元気。

一之輔『牛ほめ』
落語はナマが全て、その通りだ。だからナマで聴かなければ意味がない。
この人の高座は特にそう言える。同じネタでも昨日と今日では中身を変えるからね。

二楽『紙切り』
この日のお題は、「二刀流の大谷選手」「台風」。

白酒『厩火事』
会話をしていて相手がピンボケで話がかみ合わない人っていうのが偶にいるが、白酒の演じるお崎さんは正にその通りだ。 
だから仲人の旦那が度々いらいらして、「夫婦喧嘩の原因は完全にお前だ!」と言って怒り出す。
まるでヒモの様なぐうたら亭主に一生懸命につくす女性というのは今でも少なくない。そうした女性心理をついているから、このネタにリアリティがある。
白酒の描くお崎さんは実に色っぽい。

2018/09/05

漁色家だった「勝海舟」

月刊誌「選択」9月号に石井妙子が勝海舟について書いている。
石井が「文芸春秋」編集者の依頼で、以前に勝海舟の家系図を調査したことがあったという。
勝といえば江戸っ子の旗本というイメージが強いが、代々の武士でもなければずっと江戸にいたわけでもない。
曾祖父は越後の生まれで盲人だった。江戸に出て金貸し業で成功し、その金で御家人株を買うと、息子の平蔵を武士にした。その息子・小吉が旗本の勝家に婿に入り、勝小吉となる。
余談だが、阪東妻三郎が遺作となった映画「あばれ獅子」でこの小吉を演じていた。
小吉の長男が麟太郎、後の勝海舟だ。
ただ、身分が低い上に幕末の混乱期とあって、暮らしは赤貧洗うがごとくだった。
正妻はお民といって、薪問屋兼質屋の娘で、一時は深川で芸者をしていた。
当時の海舟の生活は、天井さえも薪にしてしまい雨露も凌げないという悲惨な暮らしぶりだった。
それでも気丈なお民は必死に切り盛りをして、娘二人と長男・小鹿を産み育てた。

一方、勝海舟は才能を見込まれて幕府に取り立てられ、長崎の海軍伝習所に赴任する。出世し始めると同時に、勝の女道楽も始まる。
長崎では年若い未亡人と関係を持ち子どもをつくるが、この子を引き取るとお民に育てさせる。
その後米国に渡り帰国して赤坂に邸を構えると、家の女中や手伝いに来た女性たちに次々と手を付けだす。
お糸、お米、おかね、おとよ・・・・・・。妻妾同居を実践し、生まれた子どもは妻のお民が自分の子として育て、生みの母はそのまま女中として働き続ける。
お民としては、さぞかし辛い思いをしたに違いない。
それなのに勝は、「俺の関係した女が一緒に家で暮らしていても波風が立たないのは女房が偉いから」などと、呑気に語っていた。

明治32年に勝が死去し、その6年後にお民が亡くなるのだが、この世を去る前にお民は「夫の隣は嫌。小鹿の隣に埋葬してくれ」と、きっぱりと言い残していた。
ここでしっぺ返しが来たわけだ。
長男の小鹿はとても優秀だったが、残念なことに病弱で、39歳の若さで亡くなっていた。
お民の遺言通りに、夫の隣ではなく、息子の隣に埋葬された。
処が、その後子孫の手で夫の隣に墓石が移されてしまった。
泉下で、果たしてお民はどう思っているだろうか。

2018/09/03

昭和怪優伝「三原葉子」

鹿島茂 (著) 「昭和怪優伝 - 帰ってきた昭和脇役名画館」 (中公文庫-2013/10/23)
Photo著者の鹿島によれば、1970年代におよそ3000本の映画を見たとある。それも多くは邦画のようだ。これらの映画の中で特に印象に残った脇役12人をとり上げて熱く語った書籍だ。
従って日本映画史上に残る名脇役を縦覧したものではなく、言ってみれば鹿島茂の独断で選んだものだ。
荒木一郎、岸田森、伊藤雄之助、天知茂、川地民夫、成田三樹夫といった名前を見ると、確かに強烈な印象の名脇役だったなと頷くこともあるが、佐々木孝丸(「赤旗の歌」の訳詩者)の名前を見て、この人はドイツ文学者じゃなかったっけと首を傾げる人もいる。
12人の中に「三原葉子」の名前があったのは妙に嬉しかった。

通っていた中学校の近くに新東宝専門の映画館があった。学校からはあそこには絶対行っちゃいかんというお達しがあったが、クラスの中には見に行く奴もいた。でも館内には生活指導の教師が巡回していて、見つかると直ちに追い出された。
それだけ厳しい規制をする位だから、きっと凄い映画だろうなと想像していた。
処が、1961年にその新東宝がつぶれてしまうと、当時のTV局が一斉に新東宝映画の放映を始めた。会社が倒産したので、きっと安い放映権で手に入れたのだろう。
高校生になっていた私は、どんな凄い映画か楽しみに見たが、よくこんなものを金を取って見せていたな、これじゃ会社がつぶれるのも無理はないと、そう思った。

Photo_2ただ、女優陣の中で一人だけ魅力的な人がいた。それが三原葉子だった。
今はあまり使われていない様だが、当時は女性を評して「グラマー」という言葉が流行っていた。英語本来の意味では「魅力的な」ということらしいが、日本語の語感としては「豊満な」という意味で使っていた。
ただ太ってるだけじゃない、顔も可愛くて体にくびれがあってバストとヒップが発達している女性、というのがイメージだ。
それに三原葉子にはぴったりだった。
新東宝映画の中ではストーリに関係なく、キャバレーやクラブで下着姿で踊るシーンが必ずあった。今風にいえば、この場面になると視聴率が跳ね上がったということか。他には海女をテーマにした映画では常連だった。常に肌の露出が多い役どころだったわけだ。
新東宝も創成期には文芸映画を沢山作っていたが、後年はいわゆるエログロ路線に転換していたので、三原葉子はその路線を体現した女優といえる。

新東宝倒産後は三原葉子は東映に移り、やはりエログロ路線の映画に出ていたようだ。
鹿島茂の著書は、専らこの時代の彼女の活躍をとりあげているが、私は反対にこの時期の彼女の映画はほとんど見ていない。
著書から察するに、ずっと「不健康なエロ」を貫いていたようだ。

« 2018年8月 | トップページ | 2018年10月 »