国立名人会(2018/9/29)
第421回「国立名人会」
日時:2018年9月29日(土)13時
会場:国立演芸場
< 番組 >
前座・柳家小はだ『たらちね』
柳家三之助『黄金の大黒』
三遊亭吉窓『里帰り』
むかし家今松『質屋庫』
―仲入り―
柳家はん治『禁酒番屋』
林家正楽『紙切り』
柳家小三治『出来心』
三之助『黄金の大黒』
落語家として押し出しも良いし、声も語り口も良い。古典を真っすぐに演じる本格派で期待値は高い。
何度か高座に接しているが、この日もそうだが、面白みに欠けるのだ。その理由は、芸が綺麗過ぎるのだと思う。ここでもうひと捻りしたら面白くなるのにと言う所で寸止めしているように感じるのだ。
吉窓『里帰り』
春風亭柳昇作の新作落語。原話はフランスとされているようだが、私は『かんしゃく』からヒントを得たものと推定している。
サゲは2種類あり、父親が娘に渡した毒薬が「うどん粉」で「平手打ちしただろう」でサゲる場合と、「重曹」で「胸がスーッとした」でサゲる場合だ。吉窓の高座は後者だった。
全体的にどうも感心しない。稽古不足なのか言葉の言い間違いなどミスが多く、リズムを壊していた。落語家として脂の乗り切った年齢なのだから、もっと充実した高座を見せて欲しい。
今松『質屋庫』
この噺を理解するには、最低限二つの予備知識がいる。
1、天神様=菅原道真が右大臣にまで昇りながら、左大臣・藤原時平に讒訴(ざんそ)され、大宰府へ大宰員外帥として流され(左遷され)、現地で没した。「東風吹かば にほひおこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ」は道真の詠んだ代表的な和歌。
2、質屋には質草(品物)を預けて現金を借りるが、一定期限内に元金と質料(利子)を払えば質草を受け出すことが出来る。期限が過ぎても質料を払えば(利上げ)期限を延長できる。
もし利上げしない時は、質草の所有権は質屋に移転する。これを「質流れ」という。
これが分からないと、サゲが理解できない。
元は上方のネタだが、東京でも演じられており、圓生の高座が極め付け。
この噺では、質屋の主人が番頭に化け物の正体を、大事な品物を預けた人の執念が宿り化け物になったのではと語るのだが、これが結構長い。
また、主人に呼ばれた熊五郎が店に内緒で酒や漬けもの、下駄などを勝手に持ち出していたことを白状するのだが、これも長い。
下手な人が演じるとここがダレてしまい、独白部分をもたせるには技量が必要だ。
強がっていた熊五郎が化け物と聞いて途端に怖気づく、その落差も見どころだ。
今松の高座は間然とする所がなく引き締まったもので、十分に楽しめた。
ただ気になったのは、化け物を時々幽霊と言っていたが、これは化け物で統一すべきだったろう。
はん治『禁酒番屋』
結論から言えば、良い出来で面白かった。はん治の語りのリズムとこの噺が良く合っていた。
新作を演じる場合もそうだが、セリフの「間」の取り方が上手い。
小三治『出来心』
別名『花色木綿』、小三治の十八番だ。
年に一度位のペースで小三治を聴いているが、ここ数年は見に来てるといった方が正確か。
間もなく79歳を迎える元気な小三治を見た、それで十分。
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