DVD「善き人のためのソナタ」
「善き人のためのソナタ」(原題:DAS LEBEN DER ANDEREN/THE LIVES OF OTHERS)
2006年制作、ドイツ映画
< スタッフ >
監督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
脚本:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
音楽:ガブリエル・ヤレドステファヌ・ムーシャ
< 主なキャスト >
ウルリッヒ・ミューエ :ヴィースラー大尉(シュタージ)
セバスチャン・コッホ:ゲオルク・ドライマン(作家)
マルティナ・ゲデック:クリスタ=マリア・ジーラント(女優)
ウルリッヒ・トゥクール:ブルビッツ部長(シュタージ)
フォルカー・クライネル:アルベルト・イェルスカ(演出家)
トーマス・ティーメ:ヘムプフ(大臣)
<受賞歴>
アカデミー賞 第79回(2006年) 外国語映画賞
【あらすじ】
1984年の東ドイツ。
シュタージ(国家保安省)の局員ヴィースラーは、劇作家のドライマンと恋人で舞台女優のクリスタが反体制的であるという証拠をつかむよう上司のブルビッツから命じられる。ヴィースラーは盗聴器を通して彼らの監視を始める。
ドライマンの友人で演出家のイェルスカは当局から睨まれ仕事を干されていた。彼はドライマンに「善き人のためのソナタ」という曲の楽譜を贈り、自殺してしまう。ドライマンはこうした実態を西側に伝えるべく動き出す。
ヴィースラーは監視活動を続ける中で、クリスタが大臣の愛人に強要され、監視の目的が彼女の動きを探ることにあった事を知る。
やがてヴィースラー自らの惨めな生活に比べ、監視対象者たちの自由な言動に疑問を抱くようになり、監視報告書に嘘を記載するようになってゆくが・・・。
以前に日本で劇場公開されていたが見過ごしていた作品だ。
旧東ドイツではシュタージ(国家保安省)という組織があり、徹底した監視態勢で東ドイツ国民を支配していた。非公式協力者と呼ばれる密告者を組織し、反体制側の人々を徹底的に弾圧した。その数は、国民10人に1人という膨大なものだった。
こうした個人情報記録は、東ドイツ崩壊後に本人や家族に限り閲覧が出来る様になった。それによって家族や親友や同僚がシュタージの協力者であったという真実を知り、家庭崩壊や極度の人間不信に陥った人々も少なくなかった。
この映画は、そうした実態の一端をヴィースラーという一人のシュタージの目を通して静かに告発したものだ。
ヴィースラーの改心が正義感によるものか、それとも監視者への羨望なのか、それは観る人に委ねられている。
悲惨な物語だが、エピローグで主人公たちに救いを持たせている。
こうしたテーマを映画化したものは他にもあるが、シュタージ自身を主人公にした作品は珍しいと思われる。
この物語は決して過去のものではない。
ロシアやサウジアラビア、北朝鮮といった独裁国はもとより、目的や規模こそ違えアメリカのCIAなども類似の活動を行っているのは周知の事実だ。
もちろん、日本もその例外ではない。
一歩間違えれば、こうした監視社会になることをこの映画は警告していると思う。
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