圓楽一門会(2018/10/28)
「五代目圓楽一門会」楽日
日時:2018年10月28日(日)13時
会場:国立演芸場
前座・三遊亭まん坊『黄金の大黒』
< 番組 >
三遊亭らっ好『弥次郎』
三遊亭鳳笑『釜泥』
三遊亭上楽『狸の鯉』
坂本頼光『活動写真弁士~ジャックと豆の木~』
三遊亭神楽『壺算』
三遊亭圓橘『お化け長屋』
―仲入り―
三遊亭兼好『ぞろぞろ』
丸一仙翁社中『江戸太神楽』
三遊亭萬橘『佐々木政談』
「エッ また落語聴きにいくの?」 。
フン、股で落語が聴けるかってんだ!
そういうわけで圓楽一門会の千穐楽へ。
普段寄席に出ないから、馴染みのない人が多い。この日でいえば、前座と後半3人を除けば他は初見。
まん坊『黄金の大黒』
達者な前座だ。将来性あり。
三遊亭らっ好『弥次郎』
三遊亭鳳笑『釜泥』
三遊亭上楽『狸の鯉』
いずれもインパクトがなかったのか、印象が薄い。
共通しているのは、セリフの「間」の取り方が良くない。
坂本頼光『活動写真弁士~ジャックと豆の木~』
この名前、本名なんだね。親は先見の明があったんだ。
1903年に制作された無声映画で、画面だけでは何をしているのか分からないが、活弁の手にかかると断然面白くなる。
まだ子どもが幼かった頃に、毎晩の様に本の読み聞かせでこの物語を話していたのを思い出す。改めて感じたのは、この物語はファンタジーであり、冒険活劇であり、復讐譚でもある、良くできた話だ。
無声映画からトーキーになったとき、活動写真弁士はみな失業してしまった。その中から何人かは漫談家や物真似として寄席の色物芸人になり、人気を博した。牧野周一なんか面白かったなぁ。
神楽『壺算』
この辺りから客席が温まってきた。
3円50銭を3円に値切るのに、買い物に来た男が店先で土下座するので、店員(店の主又は番頭)が見かねて値引きするというのは初めて見た。店員の混乱と困惑ぶりが良く表現されていて、楽しめた。
ただ、壺を担ぐのに丸太棒と言っていたが、ここは天秤棒ではなかろうか。担ぐ手の指の形から見ても丸太棒ではなさそうだ。
圓橘『お化け長屋』
このネタは圓生の名演がある。これに比肩できるのは後半(この噺にはまだ続きがある)も演じた志ん生の高座ぐらいだろう。
圓橘は大師匠の高座をほぼそのままなぞっていたが、意識的か無意識だったのか分からないが、いくつか落としていた部分があった。
・殺された女性が若々しく瑞々しい、年も32,3才には見えないという箇所が抜けていた。だから周囲の男が言い寄ってきたし、泥棒もその寝姿についムラムラとしたということになるから、この表現は欠かせないのでは。
・最初に来た男に貸家の間取りの説明が抜けていた。
・二番目の男への説明で、「今を去ること3年あと」という冒頭の説明が抜けていた。
・二番目の男への説明で、「おかみさんが思わずドロボーと叫ぶと」言った時、男が「ドロボーって、聞こえたのか」と訊き返す箇所が抜けていた。ここは後の「お前がやったな!」にも結び付くところなので、カットできないのでは。
以上の諸点は時間の都合で割愛したのかも知れないが、どうだろうか。
兼好『ぞろぞろ』
高座に上がっただけで、客席が一気に明るくなる。クイツキで瞬時に客を引き込む腕前は大したものと本人が冗談めかして言ってたが、半分は本心か。マクラで円楽の肺がんを話題にしていたが、ちょっと紹介は憚られる。
兼好の良さは、あまりクスグリを入れずとも、噺本来の持つ味で楽しませる所だ。
丸一仙翁社中『江戸太神楽』
バチ(スティック)を4度も床に落とすプロなんて、初めて見たね。
萬橘『佐々木政談』
一門の千穐楽のトリにこの人が起用されるのは意外な感もあるが、現在の実力と人気からすれば順当とも言える。
いつもの自虐ネタのマクラから本題へ。
萬橘はこのネタの背景として、佐々木信濃守が奉行に就任して、与力や同心たちが賄賂を受け取っているというのを耳にし、そうした不正を監視するために街の見回りを始めたとしている。そうすると、四郎吉たちのお奉行ごっこを見た時に、この件を不正を糺す材料に使えないかと思ったのだろう。
奉行が四郎吉と問答した際に、「与力とはどのようなものか?」「与力の心根は?」と尋ねるが、四郎吉の解答より与力たちの反応が見たかったのだ。彼らの顔が青くなったり赤くなったりする模様を描いているのはその為だ。
この辺りにネタに対する萬橘の解釈が認められる。
問答では、奉行が終始四郎吉にやりこめられるのだが、奉行は困惑するというよりは寧ろ楽しんでいる様に見えた。若い才能を見いだした喜びの方が大きかったのだと思う。
このネタに新たな息吹を吹き込んだ高座、結構でした。
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