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2018/10/18

書評「許されざる者」

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レイフ・GW・ペーション (著), 久山葉子 (訳) 「許されざる者」(創元推理文庫、2018/2/13初版)

国家犯罪捜査局の元長官ラーシュ、定年退職し年金生活を送っていたが、ある日脳梗塞で倒れ半身に麻痺が残る。
そんな彼に女性の主治医から意外な相談が持ち掛けられる。彼女の牧師だった父が、懺悔で9歳の少女が暴行の上殺害された事件の真犯人の名を聞いていたと言うのだ。ただその父は既に死去していて、事件は時効になっていた。
ラーシュはかつての相棒だった元刑事らを手足に、事件を調べ直す。闘病生活を送りながらの困難な捜査だったが、いくつもの壁を乗り越え遂に真犯人にたどり着く。
問題は事件は時効で、犯人を法で裁けないことだ。そこでラーシュは一計を案じ、犯人に自らの罪を償う方法を選択するよう迫るのだが・・・。

作者のレイフ・GW・ペーションは犯罪学教授としてスウェーデンの国家警察委員会の顧問を務め、ミステリーの人気作家として本国では名が知られているそうだ。本作に登場する人物も過去にシリーズ化され、TVドラマや映画化もされているとのこと。著書の邦訳は本書が初となる。

ここのとこ、北欧ミステリーにどっぷり嵌っている。どの作品も実に面白い。本作もその例外ではない。
警察小説であり、ミステリーのカテゴリーからいえば車椅子探偵という事になる。
この小説の最大のテーマは時効になった犯人を社会的に制裁できるのかという点にある。作中では旧約聖書の中の「目には目を 歯には歯を」が度々引用されているが、事件の解決を暗示している。ただ、これが最善かどうかは評価が分かれる所だ。

本書のもう一つの魅力は、主人公ラーシュをめぐる周囲の人々の姿だ。
銀行家の妻、手広く商売をしている長兄、会計士の義弟、ラーシュの主治医、刺青だらけの介護人、丁稚と呼ばれている若い男、そして昔の警察官仲間たち。
彼らの暮らしや背負ってきた過去から、私たちには観光でしか知りえないスウェーデンの国が抱えている問題が浮かび上がる。同時にそれらが事件究明の糸口へとつながっていく。
深刻なテーマを扱いながら、ユーモア溢れる文体で読者を楽しませてくれる手腕は大したものだ。
但し、続編は期待できないのが残念。
CWA賞インターナショナルダガー、ガラスの鍵賞等五冠に輝いたのも郁子なるかな。

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コメント

弱ったなあ、また読みたい本が増えた。

佐平次様
もし未だ読まれていないようなら、アーナルデュル・インドリダソン著「湿地」「緑衣の女」「声」をお薦めします。心に沁みるミステリーです。

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