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2018/11/15

「桂雀三郎・春風亭昇太」(2018/11/14) 

第十五回「雀昇ゆかいな二人」
日時:2018年11月14日(水)19時
会場:横浜にぎわい座 芸能ホール
<  番組  >
桂雀三郎『腕食い(かいなぐい)』
春風亭昇太『そば清』
桂雀三郎『三十石』
~仲入り~
春風亭昇太『不動坊』

横浜にぎわい座での「桂雀三郎・春風亭昇太」二人会、年1回開催なので今年で15年目となる。人気番組で今回も前売り完売だった。
二人とも新作・古典両方を手掛けるが、この日は古典2席ずつだった。

雀三郎『腕食い』
初めて聴いたネタ。あまり演じられなかったのは、少々後味が悪いせいだろうか。
【あらすじ】
船場の商家の若旦那、道楽のはてに勘当され、乞食にまで身をやつしていたが、久々に大阪へ戻って来て、自分の店で奉公していた番頭の家に転がり込み居候となる。
暫くしてから番頭に養子に行くよう勧める。相手の家は資産家で、一人娘は18歳の小町と呼ばれる器量良し。
但し、この娘には一つ欠点があるという。
夜中になると家の裏の常念寺の墓場へ入って行き、墓石と墓石の間から、バリバリッ、バリバリッと音が聞こえる。この音を聞いた養子が次から次へと逃げだしてしまうという。
若旦那も最初は渋るが番頭に説得され、娘の婿になる。
新婚初夜を迎えてその夜中、常念寺の鐘が鳴ると、今まで寝ていた花嫁がムクムクッと起き上がって足音を忍ばして裏の常念寺の墓場へ。 新仏の墓の土を掘り返して、赤子の死体を引きずり出して、腕をくわえてバリバリッ、美味そうに血をチュ~チュ~、「ああ、なんの因果やらこの病い・・・」。
一方の若旦那、目が覚めると隣に寝ているはずの嫁さんがいない。怖さ半分見たさ半分で縁側へ出てみると、常念寺の墓場の方からバリバリッ、バリバリッという音。墓場を覗き込むと、娘と目が合う。
若旦那が娘に何をしているのかと問うと、娘は、
「これでございます」
「何じゃそら? 赤子の腕やがな。えらいもんかじんねやなぁ、せやけどなぁ、赤子の腕かじるぐらい何ともないで。わいなんか、長いこと親の脛かじってたわ」
でサゲ。
かなりグロテスクな噺だが、明るい高座スタイルの雀三郎が演じると左程気色悪さは感じない。
怪談噺風だが、結末は大団円という、上方の貴重なネタを聴けて良かった。

昇太『そば清』
笑点の司会をしているようだが、高座で笑点を話題にすることは殆どない。メンバーによってはやたら笑点っをネタにして辟易としてしまう事があるが、昇太は対照的だ。
マクラで、高級焼き肉店で一皿13000円もするシャトーブリアンを食べたという。いかに美味かったかということを話題にして本題へ。
Wikipediaには「『そば清』は東京の3代目桂三木助が、上方の『蛇含草』の登場人物と主題になる食べ物を大きく改変した演目」としているが、真っ赤な偽り。因みに三木助は『蛇含草』を得意としていた(ライブで観てる)。Wikipediaは特に落語に関していい加減な記事が多いので、頭から信用しない方が良い。
通常はそば清が1枚食べるごとにセイロを1枚ずつ用意するのだが、昇太の高座では先ず食べる枚数のセイロを床の上に並べ、それを片端から食べていた。食べ過ぎると最後は耳からソバが出てくるという演じ方が変わっていた。
蟒蛇が食べた薬草は人間だけを溶かすものだという説明をどこかに入れた方が分かり易かったかも。

雀三郎『三十石』
船宿から三十石の船中での乗客や船頭の会話、枚方までの農村風景までをタップリと演じた。
「お女中」という言葉にすっかり妄想を募らせるの話は、大阪の女性の家に上がり込んで酒を酌み交わし深い仲にまでなるという壮大なもの。それだけに「お女中」がお婆さんだったと知った時の落差の大きさが笑いを誘う。
間に船頭の舟歌が4度入るが、これがまた良い声なのだ。そう言えば、この人歌手だもんね。
師匠より大師匠の米朝に近い演じ方だった。

昇太『不動坊』
冒頭の大家のセリフ、「お前さんも、いつまでも独り身でいないで、そろそろ嫁さんを貰う気、ないか」で場内は大爆笑。
八が銭湯での新婚生活や夫婦喧嘩を妄想する所から、他の独身男たちが憧れの後家を八に奪われて嫉妬し、前座を幽霊に仕立てて八を脅かそうとする場面まで、ほぼフルに演じた。
屋根の上でのドタバタでは、チンドン屋の万さんの粗忽ぶりが際立つ。人魂に使うアルコールを間違えてアンコロを持ってきたり、幽霊の「大ドロ」の太鼓の代わりに「祭り太鼓」を叩くなど、てんやわんや。
昇太らしい軽い演じ方で、この噺の面白さを引き出していた。

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コメント

『腕食い』は、東京では『団子坂奇談』となって、円生->先代文蔵->扇橋->扇辰、と継承されています。
扇辰で一度だけ聴きました。
途中までの怪談噺で緊張を強いられていたのが、サゲでずっこけさせられたのを思い出します^^

小言幸兵衛様
そう言えば貴ブログで『団子坂奇談』の詳しい解説が載っていましたね。
上方の『腕食い』では、若旦那がいつまでも乞食の癖が抜けなくて、といったギャグを挟んで、面白く聴かせていました。

>昇太『不動坊』冒頭の大家のセリフ、
なるほど、そのテがあったか(笑)
というのは、権太楼の十八番で当代柳朝もよくかけますが、この噺の面白さが今一つ私はわからんのです。無粋ですみません。
よく本筋を尊ぶ作品派と、個性を尊ぶ人間派がいると言いますが、私見ではそれが適度に融合している昇太のようなヒトがモダンなのです(他の例に喬様)

福様
『不動坊』はやはり本家の上方の方が面白く、米朝がベストでしょう。
登場人物の名前が不動明王に因んでいたり、職業に因んでいたりと、凝っています。

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