「吉例顔見世大歌舞伎」昼の部・千穐楽(2018/11/26)
「吉例顔見世大歌舞伎」昼の部
一、お江戸みやげ(おえどみやげ)
川口松太郎 作
大場正昭 演出
< 配役 >
お辻:時蔵
おゆう:又五郎
阪東栄紫:梅枝
お紺:尾上右近
鳶頭六三郎:吉之丞
市川紋吉:笑三郎
文字辰:東蔵
二、新歌舞伎十八番の内 素襖落(すおうおとし)
福地桜痴 作
< 配役 >
太郎冠者:松緑
太刀持鈍太郎:坂東亀蔵
次郎冠者:巳之助
三郎吾:種之助
姫御寮:笑也
大名某:團蔵
三、十六夜清心(いざよいせいしん)
河竹黙阿弥 作「花街模様薊色縫(さともようあざみのいろぬい)」
< 配役 >
清心:菊五郎
十六夜:時蔵
恋塚求女:梅枝
船頭三次:又五郎
俳諧師白蓮実は大寺正兵衛:吉右衛門
一、「お江戸みやげ」
常陸の国から江戸見物に来た二人のオバサン、湯島天神の小屋掛け芝居を観て、美男役者にウットリ。終演後に座敷に呼び、一人が気を利かして席を外していると、かの役者が現れ手を握ってくれたので、もう一人はすっかり舞い上がってしまう。そこへ役者の恋人が来ていちゃつきだすと、今度は恋人の母親が現れ、金を強請る。見かねたオバサンが、財布ごと全財産を渡し、二人が夫婦になるのを見届ける。
もう一人のオバサンが、なんで財布ごと渡したりしたのかと問うと、あたしが初めて惚れた男だったのと言いながら、役者から貰った小袖を胸に抱いて空を見上げる時蔵の表情がいい。この人は世話物で特に本領を発揮する。
二、「素襖落」
狂言を元にした松羽目物の舞踊劇で、ストーリーは他愛ないものだが、松緑が演じる太郎冠者が酔態を見せながらも、八島での扇の的の物語を一人で踊り分けて見せる所が圧巻。
当たり前だが歌舞伎役者の踊りは見事と言うしかない。さすがは藤間流勘右衛門派の家元、待ってました、紀尾井町!
三、十六夜清心
鎌倉極楽寺の僧である清心は、遊女の十六夜と深い仲であることが発覚し、女犯の罪で寺を追われる。十六夜が自分の子を宿しているのを知り、心中を決意して川に身を投げる。しかし、十六夜は舟遊びをしていた俳諧師白蓮(実は大盗賊)に救われ、その後白蓮に身請けされる。一方の清心も水練に堪能であったために死に損なう。岸に上がった清心は、癪を起こして苦しむ恋塚求女を助けた拍子にその懐にあった50両に触れる。金を奪おうともみ合ううちに、誤って求女を殺してしまう。清心は一度は自害しようとするが、やがて「一人殺すも、千人殺すも、取られる首はたったひとつ」と、これからは世の中を面白おかしく生きていこうと決意する。
折から、そこへ十六夜と白蓮が相合傘で通りかかるが、暗闇のため気付かず、清心はそのまま去ってゆく。終幕は「世話だんまり」となる。
菊五郎と吉右衛門が顔を揃える豪華版。
この芝居の見所は舞台もさることながら、名曲「梅柳中宵月(うめやなぎなかもよいづき)」を
始め、清元の聴きどころが満載だ。
清元栄寿太夫(役者の尾上右近)の床デビューが華を添える。
大歌舞伎の楽しさを堪能した。
入場料6000円(三等席だが、3階の最前列)は安い。
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