『修道女たち』(2018/11/7)
KERA・MAP #008 『修道女たち』
日時:2018年11月7日(水)13時
会場:本多劇場
脚本:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
<出演>
鈴木杏、緒川たまき、鈴木浩介、伊勢志摩、
伊藤梨沙子、松永玲子、みのすけ、犬山イヌコ、
高橋ひとみ
当初は妻と日光へ紅葉狩りに出かける予定だったが、妻の体調が悪くてとりやめ、ケラさんの芝居を観に本多劇場へ。
劇場近くに、喬太郎の『ハンバーグ・・・』のモデルとなったスーパー「オオゼキ下北沢店」がある。本人によると、この店を見てネタを思いついたそうだ。
この戯曲について、HPに以下の様なケラさんの序文が載っている。
【宗教とは無縁な私が聖職者の物語を描きたいと欲するのは何故なのだろう。理由はいくつでも挙げられる。
第一に、禁欲的であらねばならぬというのが魅力的。奔放不覊な人間を描くよりずっと面白い。「やっちゃいけないことばかり」というシチュエーションは、コントにもシットコムにももってこいだ。
第二に、宗教的モチーフが、シュールレアリズムやマジックリアリズム、或いは不条理劇と非常に相性がよい。不思議なことがいくら起こっても、「なるほど、神様関係のお話だからな」と思ってもらえる。
時間が無くて二つしか思い浮かばなかったが、かつて神父を登場人物にした舞台をいくつか描いてきた私が、満を持して修道女の世界に挑む。しかも複数だ。修道女の群像劇である。どんなテイストのどんなお話になるかは神のみぞ知る。ご期待ください。】
どんなお話かというと、キリスト教系と思われると宗教団体の教会に集う6人の修道女たち。この国の国王が彼女らの宗教を忌避していて、毒入りのワインによって47人の修道女のうち43人が殺害されてしまった。助かった4人に、新たに加わった母娘2人を加えた6人のメンバーが、年に一度の聖地巡礼に旅立つ。
聖地では、かつては修行の洞窟だったのを家屋に改造した家に修道女たちは逗留する。その家には祖母と孫娘が暮らしている。孫娘には親しい男性がいるが、彼は戦争で仲間が全滅する中で奇跡的に生還した。
修道女たちは近辺に托鉢に向かうが、村人たちは国王の意思に背けず戸を閉ざして相手にしてくれない。しかし村人たちが集まって話し合い、皆で修道女たちを歓迎しようと決める。
それに対して国王は、修道女たちを皆殺しにするか、さもなくば村を焼き払うと命令をくだす。村人たちの出した結論は修道女たちを助けるというもので、村を代表して保安官が彼女らに伝えに来る。併せて、修道女たちにパンとワインを差し入れるが・・・。
この後、物語は二転三転するが、それは見てのお楽しみ。
ヒントは、差し入れが「パンと葡萄酒」であること。
サイドストーリーをからめながら、この世に神は存在するのかという根源的な問いから、国家と宗教、国家と戦争といった問題を内包した芝居になっている。
なにせケラさんのこと、シチュエーションコメディタッチで随所に笑いをちりばめ、楽しい舞台に仕上げていた。
出演者たちもみな楽しそうに演じていたが、エキセントリックな役を演じた鈴木杏の熱演が印象に残った。
公演は、15日まで。
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