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2018/11/06

落語協会真打昇進披露公演in国立(2018/11/5)

国立演芸場11月上席・5日目

前座・柳家小ごと『道灌』
<  番組  >
春風亭一花『たらちね』
柳家喬之助『出来心』
青空一風・千風『漫才』
柳亭左龍『野ざらし』
柳家喬太郎『擬宝珠』
―仲入り―
『真打昇進披露口上』高座下手より司会の喬之助、左龍、小平太、さん喬、喬太郎
柳家小菊『粋曲』
柳家さん喬『時そば』
鏡味仙三郎社中『太神楽曲芸』
柳家さん若改メ
柳家小平太『井戸の茶碗』

4日に、
「あんた、NHKで新人落語大賞」っていうのをやってるわよ」
「ふ~ん」
「見ないの?」
「見ない」
家人にしてみれば、わざわざ落語を聴きに出かける人間が、TVの演芸番組に全く興味を示さないのを不思議に思うようだ。
だがそれは逆、ライブで観られるのにTVで観る必要はない。
国立演芸場11月上席は落語協会真打昇進披露公演。5日目は柳家さん若改メ 柳家小平太の昇進披露だ。満員の入りだった。

喬之助『出来心』
声が大きく元気だが、印象が薄いんだよね。

一風・千風『漫才』
少しずつ形が出来つつあるようだ。

左龍『野ざらし』
迫力があって面白かった。ますます腕をあげてきた。惜しむらくは「さいさい節」が今一つだったかな。

喬太郎『擬宝珠』
初代三遊亭圓遊の作で、演じ手がなく埋もれていたのを喬太郎が掘り起こし、手を加えて一席にまとまたもの。
ストーリーは喬太郎本人が書いているので、それを引用させて貰う。
【さるお店(たな)の若旦那、気鬱の病いでふさぎこんでいる。食べる物も喉を通らない。医者の見立てでは、このままだと命が危ない。ところが若旦那、ふさぎこんでいる原因を親にも店の者にも医者にも話さない。
こういうときは身内より、仲の良い友達がよかろうと呼ばれた、幼な馴染みの熊さん。大方恋患いかなんかだろう……と、だんだん話を聞いてみると、
 「実は……擬宝珠が舐めたい」
 「はぁ? 擬宝珠ィ?」
若旦那、昔から金物を舐めるのが大好きで、近頃では橋の擬宝珠を舐めているという。で、今舐めたくて仕方ないのが、
 「浅草の観音様……浅草寺の境内の五重塔、あのてっぺんの擬宝珠が舐めたい……」
しかしまさかあの擬宝珠が舐められる訳がない。どうせ夢は叶わない……それで患いついているという。
 「わ、分かりました。なんとかしますから」
 と熊さん、これを大旦那に報告する。
 「な、なんだい!? 伜は擬宝珠舐めが好きなのかい?……はぁ……親子だなぁ……」
 「へ? 大旦那も!?」
息子には打ち明けてなかったが、両親も金物舐めの癖(へき)があるという。
 「そういう事なら伜の気持ちもよく分かるし何より命にかかわる事だ、なんとかしましょう」
浅草寺様に話を通して足場を組む、引きずるように伜を連れてくると、
 「さぁ伜や、五重塔の擬宝珠……いや、あそこのは本当は宝珠だが……まぁそんな事ぁどうでもいい。さ、舐められるようになってるぞ」
弱っている体のどこにこんな力が残っていたか、若旦那、猿(ましら)の如く足場を登っていく。五重塔のてっぺんに上がると、宝珠にしがみついてベーロベロベロ……と舐め始めた。
 「大旦那ご覧なさい、みるみるうちに血の気が戻ってきましたぜ……へぇ大したもんだ」
すっかり元気になって下りてきた若旦那に、
 「伜や、どんな味がした?」
と問う大旦那。若旦那は嬉しそうに、
 「沢庵の味が致しました」
 「塩の加減は三升かい、五升ばかりかい?」
 「いえ、緑青の味が致しました」】
「沢庵」が「親孝行(香々)」に掛かり、サゲの「緑青」は「六升」に掛かっている。
金物フェチの所は『やかんなめ』に似ている。
喬太郎ほどの手腕がないと、面白さが伝わらないネタかも。

『真打昇進披露口上』
口上そのものより、さん喬と喬太郎との間の緊張関係が垣間見えた方に興味を惹かれた。喬太郎がさん喬に向かって「まだ伸びしろがありますね」と冗談を言ったのだが、さん喬の目はマジに怒っていた。師匠が名付けた小平太という名前を喬太郎が「足軽みたい」とチャチャを入れた時も、さん喬がちょっとイラっとしていた様子だった。

小菊『粋曲』
・・・♡

さん喬『時そば』
江戸に幕府が開かれると、人口が一気に80万人も増えたため、店舗を持たない棒手振りの商人が江戸の名物になったという。
貫禄の高座でした。

小平太『井戸の茶碗』
久々だったが、上手くなったなぁと感心した。
口上で、真打に近づいた頃に急に上達したと言っていたが、決してお世辞ではなかった。
お馴染みのネタだが、登場人物の骨格がしっかりと描かれている。筋の運びに無駄がなく、テンポもセリフの間もいい。
屑屋というのが、当時の士農工商の階級制度の外に置かれていたという解説も良かった。
主人公である正直清兵衛が、社会の最下層の人間であったことが、この物語の肝心な所なのだ。
最近聴いた『井戸茶』ではベストの高座だった。

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寄席・落語」カテゴリの記事

コメント

さん若時代から、いやに落ち着いている二ツ目だなと感じておりました。
真打披露を契機に噺がうまくなるというのはけっこうなことですね。
「時そば」小さん→さん喬→喬太郎と継承されたのでは?

私もテレビで見る気はしないです。
ラジオならまだしも想像力が働きますが。

福様
口上でさん喬が「我々一門は5代目小さんの芸を継承することが使命」と言いながら、喬太郎の方を向いて「そうじゃない人間もいるけど」。喬太郎が「えっ?」といいう顔をすると、さん喬が「円丈の芸を継いでる」と言っていたのが可笑しかったです。

佐平次様
落語に限らず芸能はみなライブでないと良さが分かりません。演者と客席が一体となって作りあげる性質のものですから。
沢田研二が客席がガラガラだと公演を中止しましたが、気持ちは分かります。

真打昇進披露、今回は行けそうにありません。
昨日も迷ったのですが、池袋の小さな会を選らんでしまいました。

最近、拙ブログの「擬宝珠」に関する記事へのアクセスが増えているのは、喬太郎が演じる回数が増えたからかなぁ。
さん喬と喬太郎の間の緊張関係・・・ですか。
結構、いろいろあるんでしょうねぇ。
「弟子をとれ」「いえ、とりません」なんて会話を含めて。
ちなみに、私は、テレビの落語も楽しみます。生の落語に接する機会のなかった地方出身者の習性でして^^

小言幸兵衛様
今回の新真打では小平太に行こうと思っていましたので、滑り込みです。結果は期待通りでした。
師弟関係というも難しい問題があるようです。さん喬が著書で、喬太郎に嫉妬していたことがあると告白していましたし。

 小平太師も苦労人なんでしょうね。落協のプロフィールを見るとわかります。
 擬宝珠は一ヶ月程前のNHKで放送していました。噺は15分で残り半分は楽しいマクラでした。
 五代目の芸は盛り蕎麦であると山藤章二画伯が話していました。ざる蕎麦の海苔さえ許さないと・・・何気に解る気がします。となると、キョン太郎師のコロッケ蕎麦は(笑)

私もこの番組に行っておりました。口上でのさん喬と喬太郎とのやりとりの他に小平太という名前を左龍に打診したときに断ったエピソードなど、予定時間をオーバーしたのはご愛嬌かなと。トリの井戸の茶碗は屑屋が士農工商のほかの最下級に属していたことの解説は初めて聴きました。相当稽古したんだなと思いながら聴き入りました。新真打ちの人柄がよく出ていました。寄席で小平太がトリをとれる日もそう遠くはないと思いました。

蚤とり侍様
小平太は入門前に色々回り道をしたようですが、それが芸の肥しになったのかも知れません。
私も盛りソバ派で、子供の頃から今に至るまで、ソバは家でも盛りソバしか食べません。

ぱたぱた様
ご一緒でしたか。
喬太郎が小平太の「甲府ぃ」を最高だったと褒めてましたが、『井戸茶』でもこの人の人柄が出ていた気がします。

カレーつけソバなんていうのが好物の私は、喬太郎の圓丈的部分(モノを独自の角度から見つめる)も好きです。
師弟というのは難しいもんですね。
典型が先代小さんと談志でしょうか(一時期は親子と評されていたらしい)

福様
権太楼と三太楼(今の遊雀)の様に最悪のケースを招いた例もありますし。上方では仁鶴、師匠との仲が悪くて松鶴襲名を断ったそうですから。
でも喬太郎の『時そば』は師匠の芸をそのまま継承してます。

 喬太郎師は、マクラと本題の落差が良かったり悪かったり。悪い時の例は、マクラがウケすぎて取って付けた様にネタに入る時も。
 スレ違いですが、焼き海苔と鳥わさなんぞで、お銚子二本・・・・セイロを手繰ってから、ふらぁと店を出ると夕刻の四時過ぎ・・さて鈴本か末廣亭でも。
なんて、自堕落に憧れる今日この頃です。寄席に行けないので少々気鬱です。

蚤とり侍様
私は喬太郎を20年ほど見ていて、2007年ピーク説をとっています。国立の花形演芸大賞3連覇の頃です。独演会でも意欲的な企画を立てて演じていました。何年かスランプがあり、今はそれを脱している様です。もう一段のぼる事を期待したいですね。

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