なんだかスッキリしない「カルロス・ゴーン」逮捕劇
カルロス・ゴーンが逮捕された直後のフランスの新聞に、次の様な記事が書かれていた。
日本では、東京電力が原発事故で地域住民にあれだけ大きな被害を与えておきながら、東電の経営者は誰も逮捕されなかった。タカタのエアーバッグの事故では死者を出しながら、やはり経営者は誰も逮捕されなかった。それに対してゴーンはあの程度のことで逮捕されてしまった。一体、日本の司法はどうなっているのか、という趣旨だった。
フランスの報道なのでバイアスが掛かっているのだろうが、論旨には一理ある。
昨年から今年にかけ、日本の名だたる大企業で、検査の不正やデータの改ざんが次々と明らかになった。これらは消費者である国民の生活や生命に直接影響のある問題だ。
しかし、一部の経営者が辞任した例はあるものの、逮捕されたり刑事罰を受けたりした例は皆無だった。
姉歯秀次という建築士が耐震構造計算書を偽装した罪で懲役5年の刑を受けた。
それに対して、耐震や免振のデータを改ざんした企業経営者はなぜ罰せられないのだろう。
日産自動車について言えば、昨年に無資格者による出荷検査が行われていたことが発覚したが、それ以後も日産5工場で19車種1171台にデータ改ざんが行われていた。
この問題に関する記者会見には、西川広人社長もカルロス・ゴーン会長も出席しなかったことで大きな批判を浴びた。
日産の経営責任について言うならば、ゴーンによる役員報酬チョロマカシより、こちらの問題の方が遥かに大きい。
カルロス・ゴーン問題でもう一つしっくり来ないのは、これが国策捜査の疑いが濃い点にある。
ゴーンの私的流用については、社長就任当時から社内でも公然の秘密になっていたことは、取材したジャーナリストの証言がある。
それに十数年にわたって役員報酬をごまかしたり、私的流用を続けてきたとしたら、他の経営者が気付かぬわけがない。
ゴーンが独裁者だったと言うなら、今の役員たちは皆ゴーンチルドレンだという事になる。同じ穴のムジナだし、時には美味しいオコボレに与った者もいるだろう。
それを今さら正義感ヅラされてもなぁ。
ゴーン逮捕を受け、日産自動車の川口均CSOが総理大臣官邸を訪れ、菅義偉内閣官房長官に謝罪や日仏関係の維持のための協力要請を行った。また逮捕翌日にはローラン・ピック駐日フランス特命全権大使が東京拘置所を訪れ、ゴーンと面会を行っている。
こうした動きを見ても、この逮捕劇の裏に政治が絡んでいることが推測される。
ゴーン逮捕後、続報がTVの報道番組や新聞記事のトップを飾った。
しかし中身は、企業が所有する海外の高級住宅を自宅代わりに使っていただの、会社の金で家族旅行をしただのという、金額はデカイがショボイ話ばかりだ。
そのお陰で、外国人移民受け入れ問題(入管法改正)の国会審議や、片山さつきの不正問題などがすっかり霞んでしまった感がある。
これだけでも、今回のゴーン逮捕劇は政権にとって意味があったという事だ。
どうやらゴーン逮捕劇は、眉にツバつけながら見守った方がよさそうだ。
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