「My演芸大賞 2018」の発表
「My演芸大賞 2018」
【大賞】
柳家喬太郎『仏壇叩き(「名人長二」より)』10/23鈴本演芸場
【優秀賞】
入船亭扇遊『明烏』2/24三田落語会
柳家権太楼『唐茄子屋政談』8/20鈴本演芸場
露の新治『雪の戸田川』8/21人形町らくだ亭
柳家さん喬『福禄寿』 同上
三笑亭茶楽『芝浜』11/16国立演芸場
五街道雲助『幇間腹』12/23雲助浅草ボロ市
【時別賞】
春風亭一朝『植木のお化け』6/9三田落語会大感謝祭
<講評>
大賞の喬太郎『仏壇叩き』は、鈴本演芸場10月下席で喬太郎がトリで、10日間にわたり三遊亭圓朝作品を日替わりで演じた企画ものの一つ。『名人長二』の発端部分にあたる。
他の優秀賞に比べ飛びぬけて優れているわけでないが、聴いていてゾクゾクする程の気迫の籠った高座だったことを評価した。こうした経験は滅多にできるものではないし、喬太郎の高座に限れば恐らくは10年ぶり位になるのではないだろうか。
素晴らしい出来だった。
優秀賞はいずれも定評のあるベテラン勢が顔を揃えた。
扇遊『明烏』、扇遊は元々実力者だったが、ここ最近になって高座に華やかさが増した感じがする。古典をきっちり演じながら惹き付けられる芸の確かさを実感した。
権太楼『唐茄子屋政談』、このネタは世間知らずだった若旦那が、自らの労働を通して成長してゆく物語だと思う。彼を導いたのは叔父さんで、酸いも甘いも噛分けた人物だ。権太楼が描く叔父さんは、そうした人物像がくっきりと描かれていた。
新治『雪の戸田川』、先代正蔵から教わった怪談噺『戸田の河原』を、露の五郎兵衛が上方落語に直したという珍しいネタで、所々に芝居仕立てが入る怪談噺。人間の業の深さを描いた見事な高座だった。
さん喬『福禄寿』 、長い割には暗くて儲からない噺なので、演じ手が少ない。さん喬の高座では最後の救いを持たせ、それが成功していた。
さん喬の語りが物語全体を引き締めていた。
茶楽『芝浜』、このネタを小品として演じた点に好感が持てた。小品だからこそ噺の隅々にまで神経が行き届けねばならない。最近聴いたこのネタではベストの出来だった。
雲助『幇間腹』、このネタの難しさは幇間の描き方だ。ここに出てくる幇間は例えば『鰻の幇間』の様な野ダイコではなく、見番に所属し客の依頼があれば座敷に上がって一座を取り仕切る立場になる。雲助が演じる幇間にはそうした片鱗を見せていて、若手にとって手本となるような高座だった。
特別賞として一朝『植木のお化け』を採り上げたのは、寄席の演目の一つである「音曲噺」の担い手がいなくなってきている。このままでは絶滅しかなねい。音曲の達者な一朝だからこそ演じられるネタであり、是非後継者を育成して欲しい。
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