「白酒X兼好」(2018/12/28)
毒を盛って毒を制す「白酒X兼好」其の三
日時:2018年12月28日(金)19時
会場:博品館劇場
< 番組 >
『オープニング・トーク』白酒、兼好
桃月庵白酒『時そば』
三遊亭兼好『蛙茶番』
~仲入り~
三遊亭兼好『紙入れ』
桃月庵白酒『富久』
今年最後の落語会は「白酒X兼好」、ワッと笑って1年を納めようという趣向。
『オープニング・トーク』では、既に落語芸術協会が公表している新真打昇進、
2019年九月下席より、柳亭小痴楽
2020年二月中席より、神田松之丞
が夫々単独で昇進披露を行うことが話題になっていた。
松之丞に関しては異例ともいうべき香盤の上位者を飛び越えての抜擢で、芸協としても興行面から人気は無視できなかったと見える。
小痴楽についても同様の狙いがあるのだろう。
白酒『時そば』
通常の演じ方だと、最初の旨いソバ屋は不景気だと言い、翌晩の不味いソバ屋は景気が良いと言うのだが、ここは不自然ではある。白酒は、前者は好景気、後者は全くお客が来ない貧乏ったらしいソバ屋という設定に変えていた。自殺でもしそうなソバ屋のソバを、我慢しながら不味そうに食べる男の姿で客席を沸かしていた。
兼好『蛙茶番』
オープニング・トークでも触れていたが、兼好にとって今年は飛躍の年となった。能や歌舞伎を研究し、高座にも積極的に採り入れてきた努力が実ったものだろう。
このネタにしても、通常はカットされることの多い序盤の「天竺徳兵衛」の「忍術ゆずり場」の所作を演じて見せた。こうした所を丁寧に演じることにより、噺の奥行くが生まれる。
半ちゃんが赤い褌を締めていると、湯屋の主が「倅は還暦?」というクスグリは秀逸。
兼好『紙入れ』
マクラで、片山さつき大臣のことを話題にしていたが、鉄面皮とはこの人にピッタリだ。きっと何重にも厚塗りしてるんだろう。
以前の兼好の弱点として、女形の色っぽさに欠ける所があったのだが、この点も最近は上達してきた。
布団に寝かした新吉に、お上さんが手燭を片手に迫る目つきが気持ち悪いくらい色っぽかった。あれじゃ新吉も金縛りだね。
白酒『富久』
8代目文楽の名演で知られるネタだが、白酒は志ん生の演じ方に近い。旦那の家の火事見舞いに行き出入りを許された久蔵が、番頭と一緒に見舞い客の帳付けをする。そのうち本家から届いた酒を旦那の許しを得て飲み始める。始めの頃は多少遠慮しがちだったが、飲むにつけ酔うにつけ次第に大胆になり、帳付けなど放り出し番頭にも絡むようになる。元はと言えば酒で旦那をしくじったのだが、やはり地が出てしまうのだ。こぅした太々しく人間臭い久蔵の姿が描かれていた。
自宅が焼けて旦那の家に居候した久蔵だが、自立したくてもがいていた。それだけに千両富が当たった時の喜びの爆発に共感が出来る。
先ずは目出度くお開き。
なお、30日に2018年下半期の佳作選を、31日に「My演芸大賞 2018」を発表します。
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白酒は人間観察に秀でていて(想像ですが、文学とか他の芸術にも触れて肥やしにしている?)それが「時そば」「富久」に出ているんでしょうね。
高座では努力を見せませんが、どうしてどうして研鑽を積んでいる噺家だと感じます。
さて、今年もお世話になりました。教えていただくことばかりで感謝申し上げます。
よいお年を。
投稿: 福 | 2018/12/30 06:56
福様
白酒の良さは古今亭の伝統を受け継いでいることです。そこに自身の工夫を加えて仕上げています。
本年も度々コメントをお寄せ頂き有難うございます。
良いお年をお迎えください。
投稿: ほめ・く | 2018/12/30 08:35