鈴本正月二之席昼の部(2019/1/15)
鈴本演芸場正月二之席昼の部・中日
前座・春風亭与いち『牛ほめ』
< 番組 >
春風亭一花『黄金の大黒』
ダーク広和『奇術』
鈴々舎馬風『漫談』
柳亭市馬『雑排』
米粒写経『漫才』
林家正蔵『鼓ヶ滝』
古今亭菊之丞『替り目』
のだゆき『音楽パフォーマンス』
隅田川馬石『時そば』
─仲入り─
ホンキートンク『漫才』
柳家小ゑん『ミステリーな午後』
入船亭扇遊『狸賽』
林家二楽『紙切り』
春風亭一之輔『二番煎じ』
ここ数年は新春の定席は鈴本の二之席からスタートとしている。昼の部は代演がなく三平が出演しない中日を選んだ。開場前から長い列が並び、客席はほぼ一杯の入り。
ダーク広和『奇術』
正月らしく和服で登場。相変わらず技術的には優れているのだろうが、視覚的には分かりづらい芸だ。特に床の上での手品は、後方の人は何をしてるか分からないだろう。
市馬『雑排』
気が付けば久々だった。3代目金馬や柳昇のものとは異なり、オリジナルと思われる俳句を入れて聴かせてくれた。短い時間だが高座を締めたのはさすがだ。
米粒写経『漫才』
初見。ネタは良く練られていて面白かったが、ハングル語ネタをあんまりやりすぎると、レイシズムに陥るかも。節度が必要かな。
正蔵『鼓ヶ滝』
時間が短かったため端折り気味だったが、一席にまとめていた。
菊之丞『替り目』
得意の酔っぱらいネタで、ワッと笑わせる職人技。この人が出てくると場内が華やぐ。
馬石『時そば』
何となく可笑しい。翌日のソバ屋の屋号が「虎屋」だったのと、通常は「いま何時だい?」「へい、4つです」の所を「5つ」にしていた。確かに翌日の男は早くからソバ屋を待っていたという設定だから、「5つ」の方が自然かも。
ホンキートンク『漫才』
ハングル語ネタは米粒写経とかぶってしまった。予め立て前座に確認すべきだったのでは。ボケ役の不自然な動きや大声が相変わらず無粋だ。
小ゑん『ミステリーな午後』
後席の扇遊が、同い年なのにいつも若いと言っていたが、いつも元気一杯の高座だ。サラリーマンの昼食格差のネタだが、パワーで笑わせる。
扇遊『狸賽』
柳家のお家芸ともいうべきネタを堅実に。
二楽『紙切り』
お題は「ムーミンの桃太郎」「成人式」。
一之輔『二番煎じ』
先代柳朝の豪快なお上さんの話をマクラに振って、ネタはこの場で考えた様子だった。
この噺の聴き所は次の様だ。
①暖かい番小屋から外に出た時の寒さの表現。
②火の回りをする中で「火の用心」の掛け声をかける場面で、謡や俗曲、吉原での火の回りの再現など、各人の芸を見せる。
③外から番小屋に戻り、焚火で身体を温めるまでの動き。
④酒を酌みかわし猪鍋をつつき合う中で、お互いが和気あいあいとなってゆく様子。
⑤酒宴が進み、都々逸の廻しっこを始める場面。
⑥見回りの役人に気付き、慌てて酒器と鍋を隠す場面。
⑦役人との珍妙なヤリトリの後、役人が酒を飲み猪肉を食べてから、サゲまで。
一之輔の高座はよけいなクスグリは一切挟まず、極めてオーソドックスに演じた。同時に上記の聴かせ所はきちんと抑えていた。
例えば、猪鍋のネギを食べる場面での柔らかなネギと固めのネギの食べ分けや、役人が煎じ薬として差し出されたものを一くち口に含んで、小さくニヤリとする表情が良い。
役人が何かを訊ねるたびに、「それは、この宗助さんが」を繰り返す所も定石通り。
結構でした。
一之輔を見始めてからおよそ10年経つが、この人がこれからどこに着地していくのだろうか、楽しみだ。
もっとも、こっちの方が何年もつかだけど。
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「二番煎じ」をもってきたところに一之輔のトリとしての矜持を感じます。
小ゑんは寄席の優れた6番バッター、追加点がほしいときによく打つとでもいうような。
庶民目線で、フレンドリーに語りかける姿が好きです。
投稿: 福 | 2019/01/17 06:35
福様
一之輔の強みは穴が無いこと。バッターでいえばインハイでもアウトローの球でもみなヒットが打てることです。
小ゑんはサービス精神が旺盛ですね。
投稿: ほめ・く | 2019/01/17 09:22