歌舞伎『人情噺文七元結』(2019/1/19)
『人情噺文七元結』
日時:平成31年1月19日(土)午後6時
会場:国立劇場大劇場
出演:第23回伝統歌舞伎保存会「研修発表会」
1月19日、朝日名人会の有楽町から三宅坂国立劇場に移動。
落語ファンには毎度お馴染みの『文七元結』の芝居を観劇。この日一日だけの公演なので少し無理した。
『人情噺文七元結』は1902年 10月東京歌舞伎座で,5世尾上菊五郎が初演。三遊亭円朝の人情噺を榎戸賢治が脚色したもの。
歌舞伎の世話物として上演が繰り返されてきたが、当方は初めて。
今回は研修発表会ということで若手の芝居、音楽も黒御簾だけという簡易版だ。
歌舞伎版では落語と比較して名称がいくつか異なる。
長兵衛宅 本所達磨横丁⇒本所割下水
吉原の見世 佐野槌⇒角海老
長兵衛と文七の出会い 吾妻橋上⇒大川端
文七の奉公先 鼈甲問屋「近江屋」⇒小間物屋「和泉屋」
場割は次の様で、落語と同様だが、落語にある文七の奉公先での場面がなく、最後の長兵衛宅の場面で50両紛失の経緯が説明される。
・本所割下水左官長兵衛内の場
・吉原角海老内証の場
・本所大川端の場
・元の長兵衛内の場
歌舞伎版もストーリーは落語と同様だが、いくつか細かい点で違いがある。
・娘のお久が吉原に向かうのは昼間
・お久が吉原に身を寄せた理由は、長兵衛夫婦の喧嘩が原因で夫婦別れするのではと危惧したこと。
・吉原の見世での長兵衛への説諭では女将だけでなく、お久の役割が大きくなっている。
・見世の女将が50両をお久の手から長兵衛に渡す。その時にお久は長兵衛に博打を止めるよう念を押す。
・長兵衛は50両を財布でなく、手拭いに包み腹掛けに仕舞う。
・50両の返済期日を来年の3月末としている(期限が短すぎる様に思えるが)。
・文七が主人と共に長兵衛宅を訪れ50両を返す際に、長屋の大家が居合わせて双方をとりもつ役割をする。
・長兵衛は最終的に50両は受け取るが、酒の切手は辞退する。これはお久と博打と酒をやめる約束をしていたからだ。
・お久が戻った時に長兵衛は再び50両を返そうとするが、大家に止められ思いとどまる。
・長兵衛宅で、文七が分家して元結屋を開くことと、お久との婚礼を決めてしまう(未だ手代の文七をいきなり分家させるのは有り得ないと思うが)。この場で、文七とお久は互いに一目惚れしているという設定。
落語なら30-40分だが、芝居だと休憩を含め約90分だった。
全体的な印象でいえば、やはり落語の方が断然面白い。
この日は若手の芝居だったので技量の問題はあるかも知れないが、想像する芸である落語の物語を絵で見せるのは無理があるようだ。
『芝浜』でも同様で(歌舞伎では『芝浜革財布』)、芝居はあまり面白くない。
やはり落語は落語で聴くべきという事だろう。
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その落語の良さをわざわざ消してしまう噺家が多いこと!
投稿: さへいじ | 2019/01/23 10:35
佐平次様
厳しいご指摘です。『文七』では、8代目正蔵を高く評価する方がいますが、聴き手の想像力をかきたてる点が良いのでしょう。
投稿: ほめ・く | 2019/01/23 18:42