池袋演芸場5月下席・昼(2019/5/22)
池袋演芸場5月下席昼の部・2日目
前座・春風亭枝次『子ほめ』
< 番組 >
柳家かゑる『都々逸親子』
柳家小八『旅行日記』
春風亭百栄『誘拐家族』
ジキジキ『漫才』
入船亭扇治『たがや』
桂文生『漫談』
─仲入り─
柳家三語楼『長短』
柳家一琴『三人無筆』
ストレート松浦『ジャグリング』
柳家小せん『崇徳院』
仲入りで桂文生が三遊亭圓生の思い出を批判的に語っていた。園主は見栄えの良い、華やかさのある噺家を好んだようだ。これは大事な要素だと思う。
噺家にとって売れる売れないは死活問題だが、やはり高座で喋る姿、見た目は重要だ。売れてる人というのは「華」「粋」「愛嬌」「色気」「ふら」といった要素を持っており、噺は上手いのに売れない人というのは概してそうした要素に欠けている。この中には本人の天性の因るものもあり、努力だけではどうにもならない事があるのが、辛い所だ。
かゑる『都々逸親子』
師匠は柳家獅堂、かゑるは大師匠の鈴々舎馬風が二つ目時代に名乗ったものだから期待されているんだろう。
親子で都々逸合戦をするが、息子の方が親父より出来が良いという基本パターン。芸風が明るくていい。
小八『旅行日記』
前の師匠の喜多八から厳しい指導を受けなかったようだが、芸風は争えない。狡いんだか素朴なんだか分からない旅館の主など、喜多八を彷彿とさせる。
百栄『誘拐家族』
会話のなかった家族が誘拐犯を通じて会話が成り立つよいうになるというストーリー。演者につられて、聴いてる側も脱力。
ジキジキ『漫才』
夫婦の音曲漫才は、知る限りではこのコンビだけだろう。客席のテンションを一気に上げた。
扇治『たがや』
メリハリの利いた丁寧な高座だった。
文生『漫談』
圓生から嫌われていたようで、前座の頃に圓生の着物を畳んでいたら、傍の圓生が自分で着物を拡げで畳み直した。「あんたの手は油っ手だ。こういう手で着物を触られると着物が光ってしまい、客から安物に見られる」と言われた。落ち込んでいると、近くにいた先代正蔵が、「世の中色んなのがいるから」と慰めてくれた。
そんな分けで、圓生の悪いエピソードと、対して先代正蔵の微笑ましいエピソードが紹介されていた。
まあ、他人から恨まれるような事はしちゃいけないってという教訓ですかね。
三語楼『長短』
短七つぁんのタバコをのむ姿が良かった。
一琴『三人無筆』
上方では『向う付け』というタイトルで演じられるネタで、通夜の帳付けの係になった二人とも揃って無筆。仏の遺言で向う付けだと言い張って、参加者が自分で記帳するようにして切り抜けた。最後に遅れてきた熊さんが無筆、困った二人は「仏の遺言で熊さんは来ないことにした」でサゲ。
テンポが良く明解な語り口で、この日の中では一番の出来。
ストレート松浦『ジャグリング』
鼻歌を口ずさみながら、あれだけの激しい動きがよく出来るもんだと感心。
小せん『崇徳院』
この人らしい軽やかな語り口だったが、若旦那の思い人を探す男とその女房の描き方が、やや淡白な印象だった。
トリの高座としては物足りなさを感じた。
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5月下旬に「たがや」。
少しばかり季節を先取りして招じ入れ、予祝する、という風情がいいですね。
扇治は実力派、侍と職人の気質と言葉の使い分けなど、うまかっただろうと想像します。
投稿: 福 | 2019/05/24 06:24
福様
扇治の高座、たがやが当初は頭を地面にすりつけて詫びるが、やがて居直り威勢のいい啖呵を切って侍をたじろがせる所が良かったです。
師匠・扇橋の若い頃に似てます。
投稿: home-9 | 2019/05/24 08:33