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2019/05/16

イラク戦争の情報操作を暴いた映画『記者たち』

今トランプ米国大統領が日々大量のフェイクニュースを流しているが、16 年前にアメリカ政府が自国民と世界中を欺く巨大な嘘をついていた。
それは「イラクが大量破壊兵器を保有している」というもので、これが2003 年におけるイラク戦争の主な開戦理由だった。のちに大量破壊兵器は見つからず、情報が捏造だと明らかになった。
しかし当時、ニューヨークタイムズやワシントンポストなど大手メディアは軒並みこのジョージ・W・ブッシュ政権の嘘に迎合し、権力の暴走を押しとどめる機能を果たせなかった。
これに対して、1社だけこの情報が捏造であることを暴いた新聞社があった。
本映画は、実在の新聞社「ナイト・リッダー」の記者たちの姿を、当時の映像を挟みながら描いたものだ。

『記者たち~衝撃と畏怖の真実~』
(2017年/アメリカ映画/本編91分)
監督:ロブ・ライナー
出演:ウディ・ハレルソン、ジェームズ・マースデン、ロブ・ライナー、ジェシカ・ビール、ミラ・ジョボビッチ、トミー・リー・ジョーンズ
なお、タイトルの「衝撃と畏怖」はブッシュ政権がイラク戦争に名付けた作戦名である。
「UPLINK渋谷」にて上映中。

【あらすじ】
2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件への報復として、ブッシュ政権はアフガニスタンへ侵攻し、2002年には「大量破壊兵器保持」を理由に、イラク侵攻に踏み切ろうとしていた。
新聞社ナイト・リッダーのワシントン支局長ジョン・ウォルコット(ロブ・ライナー)は部下のジョナサン・ランデー(ウディ・ハレルソン)、ウォーレン・ストロベル(ジェームズ・マースデン)、そして元従軍記者でジャーナリストのジョー・ギャロウェイ(トミー・リー・ジョーンズ)に取材を指示。しかし破壊兵器の証拠は見つからず、やがて政府の捏造、情報操作である事を突き止めた。
つまり、初めに戦争ありきで、イラクの大量破壊兵器云々はその理由付けに使われていたのだ。
ナイト・リッダーの記者たちは、真実を伝えるために批判記事を世に送り出していくが、大手新聞社は政府の方針を追認してしまう。ナイト・リッダーはかつてないほど愛国心が高まった世間の潮流の中で孤立していく。
それでも記者たちは大儀なき戦争を止めようと、米兵、イラク市民、家族や恋人の命を危険にさらす政府の嘘を暴こうと奮闘するが・・・。

昨今、日本でも多くのメディアが政府の方針を無批判的に報道する傾向が強まる中で、イラク戦争における米国メディアの誤報は他山の石とせねばならない。意義のある映画と言える。

ただ、この作品には不満も残る。それは、名だたるアメリカの大手メディアがなぜニセ情報を流し続けたのかという疑問に応えていないからだ。
映画では実際にあった話として、政府内でもイラクの大量破壊兵器保持について疑問を持っていた人たちがいたのだ。情報が捏造であることを証言していた人もいた。もしアメリカがイラク戦争を起こせば泥沼化し、長期にわたる内戦状態に陥ると(結果はその通りになった)予測した人もいた。
なぜ、大手メディアはそうした情報を黙殺したのか。それは政権に屈服したのか、政権に忖度したのか。あるいは当時の米国民の愛国感情に同調してしまったのか、その理由が分からない。その点を掘り下げていれば、本作品の価値はもっと高まったろう。そこが惜しまれる。

 

日本映画の黄金時代を代表する女優、京マチ子の訃報に接した。
親父が彼女のファンで、いつもは恐い顔をしている親父が「京マチ」の事になると相好を崩していた。
気品とコケティッシュを併せ持った、稀有な日本人女優だった京マチ子。
ご冥福を祈る。

 

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映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

これは見なくちゃ。

佐平次様
当時のアメリカに、米国とイラクの人命を救うために立ち上がった記者たちがいたことを、初めて知りました。
いまトランプがイランに対して同じ手口を使おうとしていることに、戦慄を覚えます。

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