「神々の残照」(2019/5/26)
「神々の残照-伝統と創造のあわいに舞う-」
日時:2019年5月25日(土)14時30分
会場:国立劇場 大劇場
国立劇場とアーツカウンシル東京は、ジャンル等の垣根を越えて広く舞踊(ダンス)の魅力にふれる、〈言葉~ひびく~身体〉を2019年よりスタートさせる。
その第1回目となる「神々の残照」では、「神」をキーワードに、日本舞踊、インド舞踊、トルコ舞踊、コンテンポラリーダンス(新作)を企画、上演した。
【日本舞踊】
長唄 『翁千歳三番叟(おきなせんざいさんばそう)』
翁 :尾上墨雪
千歳 :花柳寿楽
三番叟 :若柳吉蔵
地方=杵屋東成・杵屋勝禄 ほか
囃子=藤舎呂浩連中
【インド古典舞踊】
『オディッシー』
マンガラチャラン/バットゥ/パッラヴィ/パシャティ・ディシ・ディシ/モクシャ
小野雅子
シルシャ・ダッシュ
ラシュミー・バット
ビシュワ・ブーシャン・モハーパトラ
演奏=サンギータ・ゴーサイン
ブッダナート・スワイン
シュリニバス・サタパシー
スワプネシュワル・チャクラボーティ
クシティ・プラカッシュ・モハーパトラ
【トルコ舞踊】
『メヴラーナ旋回舞踊〈セマー〉』
トルコ共和国文化観光省所属 コンヤ・メヴラーナ楽団
【コンテンポラリーダンス】
構成・振付・演出=笠井叡 衣裳=萩野緑
マーラー作曲〈交響曲第五番〉と群読による古事記祝典舞踊
『いのちの海の声が聴こえる』
テキスト=古事記~大八島国の生成と冥界降り~
近藤良平・酒井はな・黒田育世・笠井叡/
浅見裕子・上村なおか・笠井瑞丈/
岡本優・小暮香帆・四戸由香・水越朋/
〔群舞〕ペルセパッサ・オイリュトミー団/
〔群読〕天使館朗唱団
その昔、歌舞伎座で踊りの神様と謳われた七世 坂東三津五郎と十七世 中村勘三郎による『三番叟』を観て、感心した。
もう30年以前になるが、南インドで名前は忘れたが著名な女性舞踊家によるインド舞踊を観たことがある。一人だけで約40分ほど踊ったのだが、その素晴らしさに目を奪われた。静かな踊りだったが、手の指先から足のつま先までの身体全体を使った繊細な動きや、目の動きで感情を表現していたのだ(この女性の目がクリっとしていたので動きが分かり易かった)。
そんな思い出もあって、本公演を鑑賞。
長唄 『翁千歳三番叟』
元は能の『翁』で、国土安穏、五穀豊穣を祈る祈祷舞踊。この舞踊も能や狂言に近い厳粛な舞だ。
威風堂々の翁の舞、爽快な千歳の舞、そしてダイナミックな三番叟の舞、さすが舞踊各流派の家元級の舞だけあって気品に満ちたものだ。
落語の『うどん屋』に出てくるお馴染みの「鳴るは滝の水」もあるお目出度い詞が続き、「八百万代も国も栄えん」で舞い納めとなった。
『オディッシー』
インド東部の古典舞踊で、神への奉納として営まれてきた。男女4人によるかなり動きのある舞で、インドでしばしば見られる彫刻がそのまま踊っているような感じだ。目、手、胴、腰、足がそれぞれ独立に動き、その繊細で多彩な動きが特長だ。ただ、目の動きはこの会場の大きさだと良く分からない。
『メヴラーナ旋回舞踊〈セマー〉』
名前の通り、裾の長い白いマントの様な衣装の男性の踊り手が終始旋回し続ける。こうして神と一体となれるという。
イスラムの舞踊については全く無知なせいか、率直に言って良さは感じなかった。
『いのちの海の声が聴こえる』
マーラーの交響曲第5番にあわせて「古事記」の国生み、冥府降り、天の岩戸開きが朗誦され、それに合わせてコンテンポラリーダンスが舞うという趣向。
コンテンポラリーダンスというのは始めてだったが、人間の身体の美しさ、躍動感は感動的だった。
舞踊(ダンス)というものが、これほど人の心を動かすのかと、改めて感心した。
« 池袋演芸場5月下席・昼(2019/5/22) | トップページ | 「トランプ大統領」なんのための大相撲観戦 »
「演劇」カテゴリの記事
- 辻萬長さんの死去を悼む(2021.08.23)
- 日本の戦後を問う『反応工程』(2021/7/14)(2021.07.15)
- 「彼らもまた、わが息子」(2020/2/13) (2020.02.14)
- 文楽公演『新版歌祭文』『傾城反魂香』(2020/2/11) (2020.02.13)
- 能『八島』ほか(2020/1/11) (2020.01.12)
コメント