「宮武外骨伝」(2019/6/5)
演劇集団ワンダーランド 第46回公演『過激にして愛嬌あり 宮武外骨伝』
日時:2019年6月5日(水)19時
会場:座・高円寺
作・演出:竹内一郎
< 出演者 >
武末志朗 松村穣 岡本高英 中田寿輝
本郷小次郎 高橋亜矢 桑島義明 嚴樫佑介
茨木学 木ノ下椿 北村りさ 葉山奈穂子
成澤奈穂 小川友暉 竹良光 遠田恵理香
髙橋明日香 三谷千季 光永勇輝 山田久海
宮武外骨(みやたけがいこつ)、知る人ぞ知る。私も以前に読んだ明治時代の新聞に関する本で名前を知った程度だ。ペンネームかと思ったら17歳の時に自分で改名した本名だ。これだけでも変人ぶりが分かる。
著述家・明治文化史家。号は半狂堂。慶応3年生れだから、夏目漱石や正岡子規らと同年。明治20年『頓智協会雑誌』を、のち大阪で『滑稽新聞』を発行。風俗史・政治裏面史に造詣があり、古川柳・浮世絵の研究者としても知られる。晩年は日本新聞史研究に尽力した。昭和30年(1955)歿、88才。
反骨のジャーナリストで投獄3回、発禁は数知れず。その一方、結婚は5回(最後の結婚は74歳)、妾が最盛期には16人いたという艶聞家でもある。ウラヤマシイ。
モットーは「威武に屈せず富貴に淫せず、ユスリもやらずハッタリもせず、天下独特の肝癪(かんしゃく)を経(たていと)とし色気を緯(よこいと)とす。過激にして愛嬌あり」。ね、恰好いいでしょ。
もう一つ、「迫害こそ勝利」。これも恰好いい。
薩長藩閥政治を徹底的に嫌い、明治憲法は国民主権、四民平等さえないと批判した。今では当たり前のことだが、当時はこれで弾圧された。
敵が多かったが、講釈師で国会議員にもなった伊藤痴遊や、博報堂の創業者の瀬木博尚とは交友があり援助も受けていた。
社会主義とは一線を画す一方、彼らが発行した「平民新聞」には資金を出している。
『滑稽新聞』では、政治批判だけでなく下ネタやゴシップ記事も載せたり、イラストを効果的に使うなど、現在の週刊誌を予測させる紙面にしていた。また、活字を並べて絵に見せたり、縦組みのページを横に読むとネタが隠れていたり、官憲による伏せ字を逆手にとって残った字をたどると一つの文章になるなど、宮武外骨のアイディアと遊び心に溢れたものだった。
芝居はこうした宮武外骨の物語を、過去と現在のウェブ新聞の編集室にタイムトラベルさせながら描いたものだ。
現在のメディアが批判精神を失い、権力へ迎合し続けているかかという作者の思いが籠められている。
ちょいと軽いかなという印象もあるが、これもまた外骨精神の現れかな。
公演は9日まで。
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