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2019/09/29

「立川ぜん馬 独演会」(2019/9/28)

「立川ぜん馬 秋の独演会2019」
日時:2019年9月28日(土)13時
会場:お江戸日本橋亭
<  番組  >
前座・三遊亭じゃんけん『三人旅』
古今亭しん吉『王子の狐』
立川ぜん馬『小言幸兵衛』
~仲入り~
三増れ紋『曲独楽』
立川ぜん馬『忠治山形屋』

ぜん馬は、9年前の9月28日に最初のガンの手術を行ったのでこの日が9周年。以来。5種類のガンに罹り7回のガンの手術を行ってきた。自分より後でガンに罹った人で先に亡くなった人も少なくない。お客さんも年配の人が多いので、これからはお客が先か、自分が先になるかの競いだと。
この日は会場が満員の入り。

しん吉『王子の狐』
期待の若手の一人。
男が王子稲荷にお参りに行くのを「午の日」(2度ほど丑の日と言い間違えていたが)の翌日にしていた。人出が少ないので狐が娘にばけたのを見ることができたのだ。
男が翌日料理屋に出向き、無銭飲食をしたことを詫びて金を払おうとするが、店側は男が狐だと思い込んでいるので平伏すばかり。
こうした点は良く工夫されていた。

ぜん馬『小言幸兵衛』
先日このネタを同じ立川流の龍志で聴いたばかりだが、それぞれに良さがある。龍志が演じた大家は口うるさいがどこか好々爺風な所があったのに対し、ぜん馬の大家は強面でより圓生に近い演じ方だった。

れ紋『曲独楽』
今回で3度目だと思うが、客をいじり過ぎてしつこく感じる。もうちょっとスマートに出来ないもんだろうか。

ぜん馬『忠治山形屋』
落語ではなく講談として語った。演目は「三尺もの」の中でも人気があり、講談や浪曲でお馴染みだ。
時は天保の大飢饉に見舞われた8年、赤城の山をおりた国定忠治は、大戸の関所を破って子分一同と別れを告げ、一人旅を続けながら信州路に入る。にわか雨にあって神社で雨宿りしていると、二人の男が話しながら通ってゆく。誰かから50両の金を奪って、手数料として5両貰えると言う。悪い奴がいるなと思った忠治。
そこに50がらみの百姓風の男が現れ、神社の境内で首を吊ろうとするのを忠治は止める。分けを聞くと、男は越後・長岡の加右衛門という百姓で、年貢の金を払うことが出来ず一人娘を女郎屋・山形屋藤蔵という者に売り、身代金として50両を手にした。故郷に帰えろうと歩いていたら、いきなり二人組の男に襲われ金を奪われてしまったという。
忠治は直ぐにこのカラクリに気づき、加右衛門を伴って、ヤクザと十手・取り縄を預かる目明しの二足の草鞋をはく山形屋藤蔵宅に乗り込む。
藤蔵と対面した忠治は、自らを甲州郡内の彦六と名乗って、加右衛門に50両の金を渡して欲しいと頼む。怒った藤蔵は棚から十手を取り出し脅すと、ここで忠治は自分の正体を明かし刀の柄に手をかける。
藤蔵はすっかり怖気づいて50両の金を差し出し、忠治は藤蔵から娘の証文を奪って破り捨る。
更に忠治は自分の小遣いにと100両を藤蔵から受け取ると、そっくり加右衛門に渡し、駕籠を手配させて加右衛門と娘を故郷の長岡へと送るのであった。

近ごろ、釈台に前屈みになって、「なんとなんと」等と大声を出しながら、やたら張り扇をポンポン叩くような講談師(誰とは言わぬが)がいるが、あれは邪道。
講談は読む芸だ。ぜん馬の様に背筋を伸ばし、堂々と語るのが本寸法。講釈の腕前も大したもんだ。

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2019/09/28

民藝『異邦人』(2019/9/26)

劇団民藝『異邦人』
日時:2019年9月26日(木)18時30分
上演時間:休憩含め2時間25分
会場:紀伊國屋サザンシアター
脚本/演出:中津留章仁
<  主なキャスト  >
小杉勇二:村本哲夫(洋食屋の主)
樫山文枝:村本早苗(その妻)
齊藤尊史:村本涼太(長男でコック)
中地美佐子:村本有紀(長女で役場勤務)
佐々木梅治:遠藤晋平(農家の主)
金井由妃:遠藤明日香(その孫)
神敏将:グエン・ヴァン・クアン(農家で学ぶベトナム人実習生)
本廣真吾:石島透(工場の主任)
吉岡扶敏:大川幹雄(工場の副工場長)
岩谷優志:ファム・ミン・チェン(工場で学ぶベトナム人実習生)
細川ひさよ:海原智恵美(ベトナム人実習生の監理団体の職員)
平野尚、近藤一輝、高木理加、長木彩、伊木瑠里

ここの処、昔懐かしい劇団の最近の公演を観て歩いている。文学座、俳優座、そして今回の民藝。かつて民藝の芝居を観たのは、未だ滝沢修や宇野重吉が舞台に立っていた頃だから、昔昔のその昔。出演者の顔ぶれをみても、樫山文枝以外は知らない人ばかり。
タイトルの『異邦人』だが、有名なカミュの作品とは無関係だ。

【あらすじ】
村本早苗と哲夫の夫婦は、ある地方の小さな町で洋食屋を営んでいる。娘の友紀は役場に勤め、息子の涼太はいずれ店を継ぐため東京から戻りコックとして哲夫の下で修行中だ。
この地方でも外国人労働者が増え、店の近くにある工場の寮に住むベトナム人たちの騒音やゴミ出しに村本夫婦は悩まされている。
さらに最近オープンしたばかりのネパール人カレー屋に人気が集まり、村本らの店は客足が減るばかり。
常連客に近くで農家を営む遠藤晋平がおり、後継者がいないためベトナム人実習生のグエンの力を借りて農作業を続けている。
そのグエンのアイディアで、村本の店でベトナム人向けのカレーをメニューに加えて客を呼び込むことになり、企画が当たって沢山のベトナム人が店を訪れるようになった。
一方、近くの工場で働くベトナム人実習生のファムは、日本人の上役と衝突し会社を辞めると言い出す。ファムの上司の主任はファムの反抗的な態度に怒りをぶつけるが、ファムに辞められると困る副工場長や、ファムを派遣した監理団体の担当者は懸命にファムをなだめ、思いとどまらせようとする。
そんな時、農家の主の遠藤晋平が大怪我をしてしまうが・・・。

テーマはずばり共生である。
今回の舞台で語られるベトナム人技能実習生の実態はこの様だ。
先ず、ベトナム国内で日本に実習生に就きたいと思う人を募集する企業がある。応募すると日本語の学習を始め、必要な手続きをしてくれる企業がある。そのための費用は日本円でおよそ100万円、うち40万円は保証金で3年間無事に実習を終了すれば返金される。途中で辞めたり帰国した場合は返金はされない。
日本側では、監理団体がベトナム人実習生を受け入れ、企業などに派遣する。従って、実習生が勝手に途中で辞めたり職を変えたりする自由はない。実習という名目の労働も予めその範囲は決められており、ベトナム人が自由に選ぶことはできない。
もし彼らがどうしても派遣先の仕事を辞めたい場合は、監理団体が他の仕事を探して紹介することになるが、相手先は簡単に見つからない場合がある。
監理団体から契約を打ちきりになった途端に、実習生は不法滞在者になってしまう。そこから転落して、悪事の道に踏み込む者も出てくる。
日本とベトナムの国民性の違いもあるようだ。
日本のサラリーマンは社畜という言葉に表現されるように、上司の命令には逆らわない風潮がある。
対してベトナムでは、議論を闘わせて結論を得るという。
この点は、私も僅かな経験ではあるが、中国で感じた。
いま、日本の至るところ、特に地方の生産や建築現場、農業などの分野では、外国人労働者によって支えられている。その人たちは労働者でもあるが、生活者でもある。
外国人と日本人が共生してゆくための法整備や、人間関係の在り方を真剣に考えてゆかねばならない。
そういう事が実感できる芝居である。

公演は10月7日まで。

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2019/09/27

変わらない、大相撲の体質

付け人に対し2度の暴行問題を起こした十両貴ノ富士(千賀ノ浦部屋)が9月27日、文部科学省で弁護士同席のもと会見を行った。
貴ノ富士は会見の冒頭で暴行や差別的発言を謝罪した上で、「今回の処分(引退勧告)はあまりに重く受け入れられません。私には相撲しかありません。暴行という愚かな行いを反省し、自らを戒め、土俵に戻って相撲道に精進したい」と、現役続行したいと述べた。暴行も軽いもので、自分としては「指導」と思ってやってしまったとも。
その可否はともかく、もっと驚いたのは差別発言だ。若い衆が仕事で失敗した際にもの覚えが悪いとして、「ニワトリ」、「ヒヨコ」、「地鶏」と呼び、「おい、ニワトリ」と声を掛け、「はい」と返事をすると、「はいじゃない、コケと言え」と強要したという。本人によれば、こうした行為は以前から千賀ノ浦部屋で行れていたとも。
図らずも大相撲の暗部が明るみに出てしまい、国技だの公益法人だのという表看板との落差があまりに激しい。

6代目三遊亭圓生が落語『花筏』のマクラで、明治時代の相撲取りについて面白いエピソードを語っている。
相撲といえどもお金を取って興行しているんだから、これは芸人と同じだから鑑札を受けよということになり、「遊芸稼ぎ人」という鑑札が与えられた。しかも、その肩書が「裸手踊り」となっていた。これはいくらなんでも酷い。
もう一つ明治政府から、これから外国の人が来るのに裸ではまずいと言うことで、上下のシャツを着てその上から褌を締めるよう命令された。処が、取り組み中にしょっちょうシャツが破けて引き分けになったので取りやめになったようだ。
大相撲もそういう時代から徐々に近代化してきたが、未だに旧態依然とした状況が残っていることを、今回の件で露呈してしまった。

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2019/09/26

鈴本9月下席・夜(2019/9/25)

鈴本演芸場9月下席夜の部・中日
「柳家わさび真打昇進披露興行」
<  番組  >
三遊亭伊織『真田小僧』
松旭斉美智・美登『奇術』
三遊亭吉窓『本膳』
柳家さん生『浮世床(夢)』
ロケット団『漫才』
桂文楽『看板のピン』
鈴々舎馬風『漫談』
柳家小菊『粋曲』
柳家権太楼『代書屋』
─仲入り─
『披露口上』下手より司会の吉窓、正蔵、わさび、さん生、馬風、市馬
翁家社中『太神楽曲芸』
林家正蔵『松山鏡』
柳亭市馬『蝦蟇の油』
林家正楽『紙切り』(わさび、ラグビー、赤とんぼ)
柳家わさび『出待ち』

9月下席より新真打の昇進披露興行がスタートした。落語協会は、今回は4人が昇進となった。その内、中日の柳家わさびの昇進披露に出向く。4人の中で唯一二ツ目の名前のままでの昇進だ。

サラクチの伊織『真田小僧』は初見。フツーの出来。

美智・美登『奇術』、ラケットで飴を打つんじゃないかとヒヤヒヤしたが、それは無かっただけはマシだ。

吉窓『本膳』、久々だった。後でわさびがアンケートで協会の理事としてこの人の名前を書いたと言ってたが、人望があるんだろう。

さん生『浮世床(夢)』、披露口上で師匠の小満んの芸に全く似てないと言われていたが、確かにそうだ。この日は通常の2倍速でネタを演じていた。

ロケット団『漫才』、早速、進次郎のセクシー発言をネタに採り入れていて、例によって会場は大受け。ただ、ツッコミの倉本剛の体調があまりよくなさそうに見えたのが心配。

ここから先は、お馴染みの人のお馴染みのネタだから、もう良いでしょう。
披露口上では、権太楼がわさびには独特のフラがあると言っていたが、その通りだ。これは噺家にとって強い武器になる。女性客に人気があるのも強みだ。前方の列は女性客ばかりだし、この日の17時開場というのに15時半から並んだ人がいたようだ。きっと母性愛本能をくすぐるんだろうね、ウラヤマシイ。

わさび『出待ち』
この日が新真打の高座としては2回目になるが、初回は『紺屋高尾』を掛けたそうだ。この日は新作で、わさびは三題噺を創作する勉強会を定期的に開いていて、『出待ち』というネタは記録によれば「宝塚歌劇団/人間失格/忘れ物」というお題で作られたものの様だ。
内気で無口な高校生の山田は「太宰治研究部」唯一の部員だが、文化祭を前に出し物が決まらない。反対に宝塚ファンの陽気な顧問の教師に、女生徒が出待ちしてくれるかも知れないぞと励まされ、嫌々ながら文化祭の舞台で太宰治の『人間失格』の朗読をすることになった。心配した顧問から、出だしの挨拶文だけは用意して貰うが、緊張してそれも落としてしまう。ようやく本を取り出し朗読を始めるが、不良の悪戯で他の本とすり替えられていて立ち往生。それでも全文暗記していたので朗読は無事終了、顧問も大喜び。外に出ると、女生徒が一人、忘れ物だと先の挨拶文の紙を渡してくれるが、その先には電話番号もメモしてあった。
全体の印象から、喬太郎の初期の頃の新作の影響も感じられるが、わさびの高座はナイーブな高校生の姿を等身大で演じていて好演。
それほど面白いストーリーではないが、わさびのフラが活かされていて楽しめた。
ユニークな存在になってゆくことだろう。

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2019/09/23

「ポイント、ポイント」って、やかましいわい!

10月1日からの消費税10%増税を控えて、近ごろやたら眼につくのは「ポイント」と「カード」だ。
日ごろ使っているスーパーでも、チェーン店独自のカードを作るようしつこく勧誘してくる。他のカードに比べポイント還元率が高いというのが売りこみの言葉だ。もちろん、一切無視している。
10月1日から2020年6月30日までの9カ月間は、政府が主導する「キャッシュレス・消費者還元事業」が実施されるが、対象は主に中小企業で5%や2%のポイント還元を上乗せするもの。
チェーン展開している店舗の場合、直営店だと大手企業に分類されるが、フランチャイズ店舗の場合は中小企業に分類される店舗があるなど、ややこしい事この上ない。こうした混乱を避けるために、大手フランチャイズ各社では、どこのお店でも2%の還元が行える様にしている。
これに軽減税率や、外食と持ち帰りで税率が異なるなど、結果として実質税率が、3%、5%、8%、10%に分かれる結果になってしまった。

こうした政府の政策は、消費税増税に対する不満への「目くらまし」に過ぎない。
ポイントは買わなけりゃ貯まらないし、ポイントが使えるのは買い物するときだけだ。
こんな小手先のやり方に対抗するには、買い控えが有効だ。
消費税を上げたら景気が悪くなることを、政府に実感させねばならない。そうしないと、消費税はこれから際限なく上がってゆくことだろう。
日常的に買い物をしている方ならお気付きと思うが、増税に先取りするかのように、既に日用品の価格がどんどん上がっている。
ポイントに釣られることなく、賢い消費行動が求められる。

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2019/09/22

こまつ座『日の浦姫物語』(2019/8/21)

こまつ座第129回公演『日の浦姫物語』
日時:2019年8月21日(土)13時(公演時間:休憩含め2時間55分)
会場:紀伊國屋サザンシアター
脚本:井上ひさし
演出:鵜山仁
<  主なキャスト  >
朝海ひかる:日の浦姫
平埜生成:稲若/魚名(太郎)
たかお鷹:藤原宗親
辻萬長:説教聖
毬谷友子:三味線弾きの女
石川武、沢田冬樹、櫻井章喜、粟野史浩、
木津誠之、赤司まり子、名越志保
川辺邦弘、宮澤和之、越塚学、岡本温子

【あらすじ】
平安時代、説教聖という人間が町や村を回り、昔あった出来事を物語って暮らしていた。ただここに登場する赤子を背負った説教聖は三味線弾きの女を伴い、なぜか「日の浦姫物語」だけを語る、
奥州は岩城国の米田庄、両親をを失った双子の兄妹、稲若と日の浦姫が仲睦まじく戯れている。二人がおかしたたった一度の過ち、姫は懐妊し一人の男の子を産む。兄の稲若も亡くなり、唯一の血を受け継ぐ日の浦姫が領主を受け継ぐことになる。罪に苦しむ姫は、幼児の魚名を砂金と手紙を入れた袋と共に舟にのせて海に流し、無事に助けられるようを祈る。
魚名は漁師に助けられ、太郎という名で寺の和尚に育てられて18年後には立派な青年に成長する。太郎は都に出て武士になることを目指し村を出る。途中、米田庄に通りかかると、隣の領主が日の浦姫に懸想し、姫と領土を手に入れようと米田庄内の武将たちを次々倒していることを耳にする。正義感に燃えた太郎は、隣の領主と弓矢で争い倒してしまう。
独身を通してきた日の浦姫は領主として婿取りを迫られていて、周囲の声と姫自身の希望により、太郎を婿に迎える。夫婦は仲睦まじく姫は懐妊する。
しかし、姫が偶然に太郎が持っていた手紙を読んでしまうと、それは過去に自身が書いたものだ。姫は自分の子とまぐわい懐妊したことを知り、その事実を太郎(魚名)に伝えると・・・。

テーマは近親相姦であり、それをめぐる悲劇だ。
日の浦姫は実の兄とまぐわい男の子を産むが、やがてその子と夫婦になる。
物語りを伝える説教聖もまた、背負っている赤子は実の妹である三味線弾きの女との間にできた子だ。
井上ひさしは本作品を執筆するにあたり、教皇グレゴリウス1世の一生や、古事記や今昔物語を参考にしたようだが、古今東西、近親相姦は文学の大きなテーマの一つだ。
本作品は、このテーマを悲劇で終わらせるのではなく、そうした中でも逞しく生きる姿を通して、私たち観客を励ます内容になっている。
深刻なテーマを扱っているにも拘わらず、いかにも井上作品らしい歌や踊りと笑いに満ちた楽しい舞台に仕上がっていた。
元々は文学座の杉村春子への「当て書き」として書かれた脚本だったそうだが、今まであまり再演されなかった(こまつ座としては今回が初演)のが不思議に思えるほど、完成度の高い舞台だった。

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2019/09/20

桂文我『雪の戸田川~お紺殺し』他(2019/9/19)

「桂文我独演会」
日時:2019年9月19日18時30分
会場:紀尾井小ホール
<  番組  >
開口一番・桂福丸『そば清』
桂文我『子別れ』
文我&福丸『SPレコードで名人がよみがえる』
桂文我『雪の戸田川~お紺殺し』
~仲入り~
桂文我『珍品落語集』

桂文我が、東京版と上方版で同じネタを二夜連続で口演するという企画。この日は東京バージョン。
往路は四ツ谷からソフィア通りを歩いて会場へ、帰路は弁慶橋を渡って赤坂見附へ出た。

福丸『そば清』
元は上方の『蛇含草』を東京に移したネタなので、これは逆輸入ということになろうか。
落ち着いた爽やかな高座は好感が持てる。

文我『子別れ』
東京の『子は鎹』をそのまま上方弁で演じた。細かな違いは、息子の亀吉が父親の近くに住みたいと言って、別れた母子は隣町の長屋に住んでいた。だから再会が出来たのだ。母親が亀吉の頭をゲンノウで打つと脅かした時に、亀吉が死んだら母親も後を追うと言う所は東京とは異なる。
文我の高座はあまりお涙頂戴にならず、スッキリとした中にも親子の情が描かれ好演。

文我&福丸『SPレコードで名人がよみがえる』
高座の上にレコードプレイヤーが置かれ、貴重な音源が披露された。
1903年の初代圓右、グラモフォンに初めて落語のレコードを出させた初代快楽亭ブラック、関東大震災の体験を語る初代小文治、落語家が浪曲や都々逸を吹き込んだ珍品、幻の3代目柳好の『棒鱈』など、マニアにとっては垂涎の的だ。

文我『雪の戸田川~お紺殺し』
【あらすじ】
下野の国の越後屋治郎兵衛の倅・治郎吉は道楽三昧で、佐野のヤクザ・布袋屋一太郎の娘・小染と深い仲になる。布袋屋は以前に賭場で治郎吉の姿を見ており、度胸の良さをかって二人に所帯を持たせ、江戸で商売するよう元手を渡す。
江戸に出た治郎吉だが博打好きはおさまらない。負け続けで元手もすってすっからかん。そのうち小染のお腹が大きくなってきた。困った治郎吉は、賭場仲間の熊五郎と組んで、博打で大儲けしていた浪人者の門堂平左衛門を殺害し、200両を奪う。
急に大金が入った治郎吉をお染が怪しむと、この噂が父親の布袋屋の耳に入ったらタダでは済まないと思った治郎吉はお染を殺して死体は川に流してしまう。
独り身になった治郎吉は相変わらずの博打ざんまい。ある日急な雨で一軒の家の軒先で雨宿りしていると、奥から声がかかり家の中に入っていいと言う。声の主は元は江戸節お紺と呼ばれていた売れっ子の芸者で、今は犬神軍太夫という一刀流の道場主のお囲い者。それが縁で治郎吉とお紺が出来てしまった。これが犬神の耳に入るが、これが犬神の耳に入るが、意外に物分かりが良く、お前にくれてやると家財、家付きでお紺を治郎吉に渡す。本来なら恩義に感じる所だが、治郎吉は犬神を脅して手切れ金までふんだくる。
金が出来た治郎吉は又もや博打に現を抜かしスッテンテン。そのうち、お紺の右の目の淵に小さなおできポツッとできた。痒いといって掻きむしる間に段々だんだん大きなって、終いに顔の右半面が紫色に大きく腫れあがってしまった。
治郎吉はお紺の治療費を工面するために知り合いを尋ね歩き、ようやく金が手に入ったのが10日後、長屋に戻るとお紺の姿が見えない。近所の者に聞くと、前日に杖にすがりながらお紺が家を出て行ったという。
もうここにはいられないと治郎吉は、佐野の布袋屋の親分の所に戻り、娘の小染が病死したと嘘を言って居候になる。
近くに大きな田畑を持つ百姓がいたが、夫が突然の死で働き手がない。そこで布袋屋の世話で、後家のお小夜の元に治郎吉は入り婿となる。当初は真面目に働き、二人の間には治郎太郎という男の子もできた。そのうち治郎吉の博打の虫が湧いてきて博打ざんまいの生活が始まり、田畑を全て手放す。悲観したお小夜は縊首して自害。母親の遺体にとりすがって泣く幼児を見て、ここで初めて治郎吉は目が覚める。
それからは人が変わった様に夢中で働きだし、まとまった金が出来ると米相場に手を出すが、これが大当たり。今では関東一円に手広く商いを拡げた大店の主になっていた。今では困っている人を助ける寄進者にもなっていた。
歳の暮には各地に掛け取りに行くが、他の地は奉公人たちに任せ、江戸だけは治郎吉が掛け取りに回る。用事が終わって佐野に向かう途中、雪がちらつきだした。戸田の渡しまで来ると川原の小屋から女乞食がはい出して来た。髪の毛は抜け落ち、顔中が腫れ上がっている。情け深い治郎吉は金を恵んでやるが、その乞食が「お前は治郎吉だな」とむしゃぶりついて来た。変わり果てたお紺だったのだ。
苦労したことを聞いて涙ぐむ治郎吉はお紺と佐野に行くことを約束し、取り敢えずこの先に宿を取っているので一緒に泊まろうと誘う。手足があまりに汚れているので、戸田川で洗うよう言う。お紺が川辺で手足を洗っている隙に、治郎吉は背後から襲いお紺を川の中へ突き落す。なお棒杭につかまって必死のお紺を治郎吉は刀で斬り殺す。
この後、治郎吉は蕨の馴染みの宿へ上がると、部屋にお紺の幽霊が現れる。治郎吉は刀を振り回すと柱にあたり、その反動で自らの首に刃が刺さり絶命する。
その頃佐野では、次郎兵衛の息子・治郎太郎改め次郎左衛門が炉端でつまずき、炉の中へ頭から突っ込んで顔を焼いてしまう。この子が成長の後、吉原百人斬りを行う。歌舞伎『籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)』の発端である。

名前や場所に間違えがあるかも知れないが、ご容赦を。
講釈『戸田の渡し・お紺殺し』を八代目林家正蔵が落語に脚色。正蔵から教わった露の五郎兵衛が『雪の戸田川』として演じた。また、桂米朝は『怪談市川堤』として演じている。
文我の高座は分かり易く要所は締め、時々笑いを散りばめながら長講を語りきった。

文我『珍品落語集』
仲入り後は珍しい小噺をいくつか。文我によれば、フルコースの後のコーヒータイムだそうで、煙草の吸い分け、水の飲み分け、飯の食い分けなどの軽いネタを演じてお開き。

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2019/09/19

「三三・左龍の会」(2019/9/18)

第92回「三三・左龍の会」
日時:2019年9月18日(水)19時
会場:内幸町ホール
<  番組  >
三三・左龍『オープニングトーク』
前座・柳亭さん坊『からぬけ』
柳亭左龍『尼寺の怪』
柳家三三『半分垢』
~仲入り~
柳家三三『しの字嫌い』
柳亭左龍『転宅』

 

9月17日に山遊亭金太郎が亡くなった。私が観た最後の高座は昨年の6月だから、倒れる少し前ということになる。なんの衒いもなく古典をきっちり演る人だった。高座の姿とは異なりエピソードの多い人だったようだ。初対面だった三三にいきなり「3万円あげるからキスしていいか?」と言ったとか。左龍は3代目小南襲名についての秘話を語っていたが、噺家の襲名っていうのは色々な事情があるんだね。
左龍はまだ二ツ目当時に、師匠さん喬から名前を継ぐように言われたが断ったそうだ。でも、この人が継ぐのが順当だろう。三三は?そりゃ小三治でしょ。未だ生きてると言いながら、二人が高座を下りる。

左龍『尼寺の怪』
別題『おつとめ』『百物語』、先代の橘家文蔵が得意としていたようだ。
若い衆が集まって百物語をやろうということになり、夜までに各自が怖い話を持ち寄ることになった。もし出来なければ全員の飲み代を払うという約束。困った男は知り合いの和尚に、何か怖い話はないかとたずねる。和尚が若い頃に托鉢に歩いていて、夜になって泊まる所がなく1軒の寺を訪れ一夜の宿を頼むと、ここは尼寺なので本堂で寝て欲しいと言われる。深夜になり和尚がふと目が覚めると、木魚とお勤めの声がする。これはきっと尼さんがお経をあげているんだと思いそのまま寝入ってしまう。翌朝、和尚が尼さんに昨夜のことを尋ねると、自分は読経などしないし、寺には他に誰もいない。ただ、この地方では村で亡くなった人がいると、新仏になった人が寺に来て読経するという慣わしがあるので、昨夜はそれだったのではと言う。聞かされた和尚はゾッとした。
男は、この話ならきっと皆も怖い思いをするだろうと喜び、和尚に絶対に他に人にはこの話をしないで欲しい。もし約束を破ったら寺に火をつけると言い残し、仲間の集まりに戻って、いま聞いた話を自分の事として披露する。処が男は粗忽者だから、托鉢を「散髪」、お勤めを「おつけの実」などと言い間違えるものだから、誰も怖がらない。終いには、周囲の者がこれは男の体験談ではなく誰かの入れ知恵だと言い立てると、男は「寺へ行って火をつけてくる」でサゲ。
こうあらすじを書くと面白さは分からないだろうが、左龍は得意の顔芸を活かして頓珍漢な男を演じ、笑いをとっていた。

三三『半分垢』
相撲取りのネタなので、小学生の頃は将来力士になりたかったという三三の、昔の力士のマニアックなマクラが振られる。
短いネタだが、三三は力士のお上さんを軽妙に演じて楽しませてくれた。

三三『しの字嫌い』
何事にも一言屁理屈をつけたがる飯炊きの清蔵を懲らしめようと、主人が言葉に「し」を入れたら給金は無しにすると命じる。その代り、主人が「し」を言ったら、清蔵の望みの物を与えるという約束をするが、計略を巡らした主人の方が「しめた」と口走ってしまい、清蔵に銭を取られてしまう。
『のめる』っと同じ様な趣向のネタだが、しの字抜きで会話する二人の苦労を三三は楽しそうに演じていた。

左龍『転宅』
同じネタを、例えば喬太郎が演じると、お菊と夫婦約束をした泥棒が当初はどこか疑心暗鬼な所があるのだが、左龍では最初から大喜びで舞い上がってしまい、顔全体を使ってその喜びを表現していた。天にものぼるとはこの事だろう。
その割には、後半でお菊に騙されたと知った泥棒は、それほど怒りを示さない。一瞬でもいい夢を見させてくれたと、そう思ったのだろうか。
なにせ、顔芸では左龍の右に出る者はいないかも。

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2019/09/15

能『錦木』・狂言『船渡聟』(2019/9/14)

能『錦木』・狂言『船渡聟』
日時:2019年9月14日(土)13時
会場:国立能楽堂
1.解説・能楽あんない『鄙の風流ということ』 林望(作家)
2.狂言・大蔵流『船渡聟(ふなわたしむこ)』 
シテ/聟:茂山忠三郎
アド/舅:大蔵弥右衛門
アド/太郎冠者:大蔵基誠
3.能・金剛流『錦木(にしきぎ)』
前シテ/男・後シテ/男の霊:廣田幸稔
ツレ/女:豊嶋晃嗣
ワキ/旅僧:飯富雅介
笛:一噌幸弘
小鼓:曽和鼓堂
大鼓:高野彰

国立能楽堂の定期公演で、9月の普及公演にリンボウ先生が解説するということで出向く。リンボウ先生の著作は読んだことがあるが、講演は初めてだ。講演なれしているらしく分かり易い解説で、話し方も正面と脇正面を交互に体を向けながら話していた。
『錦木』は世阿弥作とされていて、当時は高貴な女性というのは男性からプロポースされても先ずは拒否するのが慣わしだった。そこで男性は何度も自分の意思を伝え、やがて女性が受け容れる場合もあれば、拒絶される場合もある。
都であれば男性は手紙をしたためて女性に贈るが、都から見れば東夷である東北地方の人は字の読み書きができないと考えられていた。
そこで、奥州では錦木と呼ばれる木片(又はその束)を男性が恋しい人の家の前に置き、女性がOKなら錦木は家の中に、NOならそのまま放置されるという伝説となった。それが時に1000日に及ぶこともあり、錦木は「千束」となる。これでも女性がNOなら、男性は諦めるしかない。遂に夢が叶わぬまま終わってしまった男性の遺体と「千束」が埋葬されたのが「錦木塚」だ。
ここから錦木は「恋文、又はその文例集」を指す意味でも使われた。
もう一つ「細布」というのが出てくるが、細布は幅が狭いので胸元が合わない、つまり女性に会わないという含意となっている。
中世の歌学書に錦木を説明する際の歌に、こうある。
「錦木は立てながらこそ朽ちにけれ、けふの細布胸合わじとや」
「錦木は千束になりぬ今こそは、人に知られぬ閨の内見め」
「陸奥のけふの細布ほど挟み、胸合ひがたき恋もするかな」
2番目の歌は、錦木が千束になって、ようやく女性の閨に通された喜びを歌ったものだ。
ここまで分かると、能の『錦木』への理解も深まる。

狂言『船渡聟』
「聟入り」という風習を描いたもので、聟が結婚後初めて妻の実家を訪れ、舅と盃を交わす儀式を指す。
ここに登場する聟、酒の入った竹筒を持って舅の家に向かうが、途中で乗船する。船頭が竹筒に目をつけ、酒を飲ませろと脅す。聟も酒が飲みたくなり、船上で二人は酒盛りを始め、聟は謡や舞まで披露する。
やがて聟は舅の家に着き、酒を振舞おうとするが・・・。
聟である若者の調子の良さと、舅の聟を思う優しが現れた舞台だった。

能『錦木』
旅の僧が陸奥の国狭布の里(今の秋田県)を訪れると男女に出会い、叶わなかった恋の思いを聞かされる。女が持っていた布は鳥の羽で織った幅の狭い細布、男の持っていた彩色された木は錦木といい、いずれも土地の名物であり男女の恋にゆかりのあるものだと言う。夫婦は男の墓である錦塚に僧を案内し姿を消す。
里の男が、3年間錦木を立て続けた男の恋物語を語り、夫婦の供養をするよう勧め、僧は夜通し弔うと、細布を持った女の霊が現れ僧に感謝し、塚に内から男の声がする。
塚は灯火の輝く家とない、中では女が細布を織り、男が家の門に錦木を立てている。
男の霊は、錦木が家に取り入れられて恋が成就した有様を語り舞い踊る。
やがて夜が明けると、霊の姿は消え、松風の吹く塚だけが残されていた。
最終場面で、男が閨に通された喜びで「黄鐘早舞(おうしきはやまい)」を舞う所が圧巻で、笛、小鼓、大鼓の演奏も素晴らしかった。

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2019/09/13

「東西!噺家最前線」(2019/9/12)

第7回会議室落語~東西!噺家最前線~
日時:2019年9月12日(木)19時
会場:大手町サンケイプラザ310号室
<  番組  >
桂佐ん吉『桃太郎』
立川吉笑『くじ悲喜』
笑福亭鉄瓶『竹の水仙』

先日、横浜にぎわい座で佐ん吉と鉄瓶の高座が良かったので、この会に出向く。名前の通り会議室での落語会。以前は2人だった様だが、今回から東京と上方の若手落語家3人による構成になったとのこと。
今年、タピオカの飲み物が流行したそうだが、最初聞いたときは驚いた。タピオカといえば私が即座に頭に浮かぶのは糊だ。工業製品の糊としては昔からタピオカ澱粉が使われている。だから、あんなものをどうやって飲み物にするのか不思議だった。要はトウモロコシ粉や小麦粉など同じもので、タピオカという名称が受けたんだろうね。

佐ん吉『桃太郎』
上手いとしか云い様がない。マクラで客席をつかむのも巧みだ。前座噺のような軽いネタこそ実力が現れる。噺家にとってセリフの「間」の取り方が全てであることが分かる。

吉笑『くじ悲喜』
初見。くじ引きの、くじの悲喜こもごもを描いた新作。柳家こゑんの『ぐつぐつ』に発想が似ているが、あちらの方が遥かに面白い。

鉄瓶『竹の水仙』
宿屋の亭主とその女房、客の左甚五郎、細川越中守とその家来の大槻玄蕃、それぞれの登場人物がしっかりと演じ分けが出来ていた。特に宿の亭主がいい味を出していた。

佐ん吉と鉄瓶、期待通りの高座だった。スケジュールが合えば、次は独演会に行ってみようと思う。
最近、上方の噺家を聴く機会が増えたが、若手の充実ぶりには感心する。東京の若手もおちおちしていられない。

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2019/09/12

「白酒のあんばい」(2019/9/11)

桃月庵白酒の「白酒のあんばい」
日時:2019年9月11日(水)19時
会場:伝承ホール(渋谷)
<  前座  >
前座・桃月庵あられ『子ほめ』
桃月庵白酒『次郎長伝より・石松三十石船』
~仲入り~
福島康之(バンバンバザール)feat.丸山朝光(ハチャトゥリアン楽団)『ジャズとトーク』
桃月庵白酒『不動坊』

安部政権の新しい内閣の顔ぶれが発表された。昨日も書いたが、日本も新任大臣について議会で「人事聴聞会」を開く制度を作った方がいい。全てを審議するのは難しいだろうから、新大臣の専門性、業務遂行能力、人格の3点だけに絞って質疑すればいい。こうすれば公明正大でお互いスッキリ出来ると思うが。

夕方から急な雷雨があった11日、「白酒のあんばい」の会へ。2席がネタ出しされており、いずれも白酒では未見だったので出向いた次第。

白酒の1席目『次郎長伝より・石松三十石船』
ご存知2代目広沢虎造の大当たり演目「清水次郎長」。ラジオ放送の聴取率が30%だったというから、当時の国民の約3分の1の人が聴いていたわけだ。外題付けの「旅行けば 駿河の国に茶の香り」から、「食いねえ食いねえ寿司食いねえ」「江戸っ子だってね 神田の生まれよ」などの啖呵は子どもでも知っていた。
その「石松の金毘羅代参」のサワリの部分を落語にしたものだ。亡くなった喜多八がしばしば高座にかけていたが、白酒では初見。
虎造の浪曲の啖呵をほぼそのまま落語のセリフに移したもので、オリジナルが面白いのだから落語にしても面白い。
ただ、浪曲と落語ではリズムや間が違うし、浪曲の場合は啖呵の合間に曲師の三味線が入る。それをそのまま落語に移すと、オリジナルにあった石松と江戸っ子の位置関係が崩れて、清水一家の暴れん坊で鳴らした石松が単なる愚か者に見えてしまった。
演目を他の芸能に移す難しさを感じた。

福島康之(バンバンバザール)feat.丸山朝光(ハチャトゥリアン楽団)『ジャズとトーク』
福島のギターと丸山のバンジョー演奏と歌唱が、福島のトークを挟んで披露された。曲目は「月光値千金」「この素晴らしい世界」「君微笑めば」などスタンダードナンバー。
ジャズのライブなんて久しぶりだ。やっぱりいいなぁ。バンジョーってあんないい音が出るんだ。二人が醸し出す温かい雰囲気も良かった。
これが聴けただけでもこの日来た甲斐があった。

白酒の2席目『不動坊』
元は上方のネタだが、3代目柳家小さんが東京に移したとされていて、現役では権太楼がこの型を引き継いでいる。これとは別に9代目桂文治が、湯屋で利吉がお滝を思いながら独り言を言って湯船に落ちる所で切るという独自のやりかたで演じている。
白酒の高座は権太楼の型を基本に、湯屋での利吉が独り言ではなく、湯船の客をお滝に見立てて話しかけるという風に変えていた。また、3人と幽霊役の噺家による利吉の家の屋根でのドタバタをより戯画化し、面白さを強調していた。
ただ、いくつか気になった点がある。
利吉は不動坊が残した借金を肩代わりする条件でお滝を嫁にするわけで、大家に金額を聞かなかったのは不自然だ。これでは白紙手形になってしまう。
幽霊役が利吉から香典代わりにと1円受け取るのも不自然だ。ここはオリジナルにあるように係わった人間が4人いるわけだから、幽霊役としては4の倍数の金額で手を打つのが自然だろう。
白酒らしい面白い仕上げにはなっていたが、細部が雑に見えた。

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2019/09/11

文楽公演『心中天網島』(2019/9/10)

近松門左衛門作
『心中天網島(しんじゅうてんのあみじま)』
 ・北新地河庄の段
 ・天満紙屋内の段
 ・大和屋の段
 ・道行名残の橋づくし
日時:2019年9月10日(火)11時
会場:国立劇場 小劇場
<太夫・三味線>
「北新地河庄の段」
・中
三輪太夫(みわたゆう)
清志郎(せいしろう)
・奥
呂勢太夫(ろせたゆう)
清治(せいじ)
「天満紙屋内の段」
・口
津國太夫(つくにだゆう)
團吾(だんご)
・奥
呂太夫(ろだゆう)
團七(だんしち)
「大和屋の段」
・切
咲太夫(さきたゆう)
燕三(えんざ)
「道行名残りの橋づくし」
・小春  
芳穂太夫(よしほだゆう)
宗助(そうすけ)
・治兵衛
希太夫(のぞみだゆう)清丈‘(せいじょう)
小住太夫(こすみだゆう)寛太郎(かんたろう)
亘太夫(わたるだゆう)錦吾(きんご)
碩太夫(ひろたゆう)燕二郎(えんじろう)
<主な人形役割>
紀の国屋小春:和生(かずお)
江戸屋太兵衛:文司(ぶんじ)
五貫屋善六:清五郎(せいごろう)
粉屋孫右衛門:玉男(たまお)
紙屋治兵衛:勘十郎(かんじゅうろう)
女房おさん:勘弥(かんや)

人形浄瑠璃をご存知ない方のために出演者の名前をズラリと記したが、人形の遣い手ではここに掲げた数倍のもの人が出演している。他に大道具や衣装など沢山の裏方がいるわけで、「文楽」の世界というのは数十年の修行を積んだ熟練の芸人による技芸の集約で成り立っている。
もし落語は好きだけど、人形浄瑠璃は敷居が高いと思われているなら、一度は観ることをお薦めしたい。

近松門左衛門の代表作であるこの物語。
主人公・紙屋治兵衛という男、女房と二人の子どもがありながら、曽根崎新地の遊女・紀伊国屋小春の所へ通い詰め。女房のおさんはグウタラ亭主に代って店を切り盛りし家族の面倒を見る貞女だ。治兵衛と小春が心中でもしないかと心配になったおさんは、密かに小春に手紙を書き、治兵衛とは手を切ってくれるよう懇願する。小春はおさんの気持ちを受け止め、心配で店を訪れた治兵衛の兄の孫右衛門に、もう小春の元に通わないようと頼む。その様子を立ち聞きした治兵衛は逆上し一騒動起こすが、そこは孫右衛門が制止して収まる。
店に戻った治兵衛は、小春を思って昼間から布団をかぶって泣いている。どうしょもない男なんだ、この治兵衛は。そこに孫右衛門ら親類が訪れる。彼らは小春が落籍(ひか)されるという噂を聞き、治兵衛を問い詰めるためにやって来た。治兵衛には身に覚えがないことで、落籍するのは恋敵の太兵衛だと話す。孫右衛門らは納得して帰って行くが、おさんはここで意外な行動に出る。小春が落籍されれば自害するのではと直感し、おさんは治兵衛に金とありったけの着物を渡し、これで太兵衛に先んじて小春を落籍するよう勧める。一件落着かと思われたが、そこに運悪くおさんの父親が現れ、グウタラな治兵衛への怒りからおさんを強引に実家に連れ戻してしまう。
絶望のうえ虚脱状態になった治兵衛は小春の店を訪れ、小春に心中を約束させる。
深夜に二人は蜆川から多くの橋を渡って網島の大長寺に向かい、治兵衛は小春の喉首を刺し、自らはおさんへの義理立てのため首を吊って果てる。

この浄瑠璃、主人公の治兵衛はむしろ狂言回しの様な存在で、テーマは治兵衛をめぐるおさんと小春の義理に張り合い、意地の張り合いだ。
特におさん、グウタラ亭主を何とか立ち直らせようと努力し、小春にも治兵衛と縁を切るよう願って手紙まで出しておきながら、落籍された小春の身を案じて今度は治兵衛に小春を落籍せようとする。この辺りは理解し難い複雑な心境でもある。
「天満紙屋内の段」での太夫、三味線、人形遣いは、この揺れ動くおさんの切ない心を巧みに表現していて、ここが最大の見どころだ。
「北新地河庄の段」では、小春をめぐって恋敵の太兵衛と善六が、口三味線で治兵衛を嘲笑する場面が見どころ。
「大和屋の段」では、治兵衛を探す兄が倅の勘太郎を連れてくるのだが、治兵衛は物陰からじっと見送る場面が印象的だ。
「道行名残の橋づくし」では、二人が歩んできた険しい道のりを、幾つもの橋を通り抜けることによって表現していた。
世話物なので派手な場面こそないが、現代に通じる人間の心理劇として見ることも出来る。

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韓国国会の「人事聴聞会」制度、日本も導入したら

韓国のナントカいう人がスキャンダルを抱えたまま法相に就任するという報道が、連日のようにメディアを賑わしている。なんで日本がそんな大騒ぎするのか理解できないが、一つだけ関心を持ったのは韓国国会の「聴聞会」という制度だ。
韓国の「人事聴聞会」とは、 選によらない任命職の職者を大統領が任命する前に、国会において、その候補者に対する検証を行うもので、 候補者の専門性、業務遂行能力、財産形成過程、学歴と経歴、人格や周囲の評判などを審議する制度のようだ。
韓国のこの制度は、どうやら対象は国会議員以外のようだが、日本で全ての大臣候補について「人事聴聞会」制度を採り入れたらどうだろうか。
与野党の議員で専門委員会を構成し、首相が予め提出した大臣候補について、一人一人その専門性、業務遂行能力、経歴、人格などを審議するのだ。
首相は審議過程を含めて、最終的に大臣を任命する。
こうして身体検査を先にしておけえば、大臣になってから色々な問題が噴出することが防げるし、国民も納得しやすいだろう。
ちょいと検討してみる価値はあると思うが。

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2019/09/06

三遊亭わん丈独演会(2019/9/5)

vol.19「わん丈ストリート」
日時:2019年9月5日(木)19:15
会場:日本橋社会教育会館ホール

「海落語」についての公開インタビュー
<  番組  >
三遊亭わん丈『出演者紹介』
前座・三遊亭ごはんつぶ『英語落語』
三遊亭わん丈『三方よし』
三遊亭わん丈『双蝶々(上・中のダイジェスト)』
~仲入り~
三遊亭わん丈『双蝶々(下)』

どの世界にもスターという存在があるが、落語界も例外ではない。2000年代になってから東京の落語界のスターといえば、
00年代 柳家喬太郎
10年代 春風亭一之輔
であるのは衆目の一致する所だろう。
では、来るべき20年代は誰になるだろうか。ポスト一之輔となると、現在二ツ目の若手になろう。
何人かが頭に浮かぶが、その候補の一人が三遊亭わん丈だ。理由は高座を観ていて「キラリと光るもの」を感じるのだ。もちろん彼より上手い若手は沢山いる。しかし上手いだけではスターにはなれないのが芸能の世界だ。
そんな分けで、注目しているわん丈の独演会に出向いた。老若男女を問わず、客の入りは良かった。

開演前に、どこかの団体から海をテーマにした新作落語を演じているというわん丈に公開インタビューがあった。恐らくは海洋汚染の問題に取り組んでいる団体かと思われる。インタビューの模様と、それに因んだ小噺を即席で作り収録していた。本人によれば、立川こしらから依頼されて始めたとのこと。特に子ども向けの高座で演じることが多いと。

わん丈『出演者紹介』では、この日の三味線の長澤あやが高座に上がり、わん丈が太鼓を叩いて出囃子の演奏を披露した。わん丈のの出囃子は「小鍛冶(義太夫)」。
また、この日前座に上がる三遊亭ごはんつぶ(天どんの弟子)が学校寄席で「英語落語」を演じたエピソードを紹介していた。
こうした点にわん丈の心配りを感じる。

ごはんつぶ『英語落語』、ネタは家族3人が交通事故を起こしケガで事情が聞けない。警官が同乗していたサルに聞くと、父親は飲酒、母親はおしゃべり、子どもはゲーム。「それなら一体誰が運転していたんだ」と警官が聞くと、サルは自分を指した。という小噺を英語で演じていた。

わん丈『三方よし』
古典の『三方一両損』をベースに、近江商人の買い手よし売り手よし世間よしという「三方よし」を採り入れ、更に『井戸の茶碗』を加えた様な新作。奉行の奥方が元吉原の花魁という設定で、奥方の方が名裁きをするというもの。
程々に楽しめた。

『双蝶々(上・中のダイジェスト)』
過去2回の『双蝶々(上・中)』のダイジェストを、「中」で長吉に殺された定吉にわん丈が扮して語った。

わん丈『双蝶々(下)』
番頭と小僧二人を殺して奥州に逃げた長吉、今では子分十数人を従えるいっぱしの顔になっていた。
長兵衛・お光夫婦は長吉の悪事を恥じ世間に顔向けが出来ないと、本所馬場町の裏長屋に越したが、長兵衛は腰が立たない病になった。暮らしに窮したお光は、内緒で隅田川縁の多田薬師石置き場で、袖を引く物乞いをし一文二文の銭を稼いでいた。
北風強く冬の日、通りかかった人の袖にすがったのが、奥州石巻から父の様子を探しに出てきた長吉だった。
長吉はお光に連れられ、腰の立たない父を見舞い再会する。長吉が50両の金を渡し元気で暮らすようにと言うと、長兵衛は悪事で得た金は要らぬと突っ返すが、最後は長吉をゆるし今生の別れを告げる。 長吉が追われる身である事を察した長兵衛は羽織を渡し、江戸から無事出られるようにと願った。
雪の降る中、長屋を去った長吉は吾妻橋を渡るところでついに追手に取り囲まれ、捕縛される。
『雪の子別れ』の副題で演じられるこのネタ、わん丈の言うように今年で3年目の二ツ目が高座にかけるような演目ではない。高座も未だ未だ粗さがある。しかし、挑戦する姿勢は評価されるし、これからノシてゆく可能性を十分感じさせる。
数年後には、私の予感が当たりそうな気がするのだが。

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2019/09/05

コメント公開の遅れ

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当ブログに寄せられたコメントは全て公開をしていますが、ブログに反映されていない場合があることをお伝えいたします。

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2019/09/04

「一天四海ー龍志・扇遊・鯉昇・正蔵」(2019/9/3)

「一天四海ー龍志・扇遊・鯉昇・正蔵の会ーコスモスの刻(トキ)」
日時:2019/9/3(火)18時30分
会場:国立演芸場
<  番組  >
前座・入船亭扇ぽう『元犬』
林家正蔵『秋刀魚火事』        
瀧川鯉昇『船徳』    
  -仲入り-
入船亭扇遊『棒鱈』            
立川龍志『小言幸兵衛』

週刊誌の広告に「弱きをくじき強きにひれ伏す安部外交」と、ウマイこと言うもんだ。米国からいわれりゃ戦闘機からトウモロコシまで買いまくり、竹島の実効支配には抗議するがロシアの北方領土の実効支配は黙認、中国に配慮して香港デモには沈黙。
メディアはメディアで、韓国が米国から批判されたと鬼の首でも取ったように報道する。いいじゃないか、それぞれの国の考え方もあるんだろうから。
それより私たちは日本の国を心配した方がいい。

日本の労働生産性は先進各国で最下位(日本生産性本部)となっており、世界競争力ランキングは30位と1997年以降では最低となっている(IMD)。平均賃金はOECD加盟35カ国中18位でしかなく、相対的貧困率は38カ国中27位、教育に対する公的支出のGDP比は43カ国中40位、年金の所得代替率は50カ国中41位、障害者への公的支出のGDP費は37カ国中32位、失業に対する公的支出のGDP比は34カ国中31位(いずれもOECD)など、これでもかというくらいひどい有様だ。
日本が輸出大国であるという話も、過大評価されている面がある。2017年における世界輸出に占める日本のシェアは3.8%しかない。
(以上、「Newsweek」の記事より引用)

ちょいとマクラが長くなってしまったが「一天四海」、以前の喜多八がいた頃の「睦会」には足繁く通っていたが、この会になってからはお初。先日の龍志の高座をみて来る気になった。小雨そぼ降る国立は9分の入り。

正蔵『秋刀魚火事』        
初代林家正楽の新作落語。長屋の連中がケチな油屋のことで相談に来る。先日も近くの空き地に油屋のお嬢さんが簪を落としたので、探し出した者には褒美を与えるという番頭の言葉で、長屋総出で先ず草刈りをして探したがとうとう見つからなかった。すると油屋の主人が番頭に、タダで草刈りが出来たと褒めていた。万事がこんな具合で、なんとか油屋に仕返しをしたいという相談だった。大家は、相手は油屋だから家事を最も恐れるから、長屋中でサンマを焼いて煙を出して騒げば、家中大慌てになると教える。長屋の連中が一斉にサンマを焼くと、油屋の店の者一同は煙をおかずにご飯を食べていた。
珍しいネタではあったが、正蔵はただ喋っている感じだった。メンバーの中では他の3人とあまりに実力の差が大き過ぎる。人選を変えた方が良い。

鯉昇『船徳』    
前方の正蔵が持ち時間を10分も余らせて下りたと、落語協会にもああいう人がいるんだとイジッテからネタに。
冒頭の所を『湯屋番』と似た出だしで、若旦那が船頭になるまでが長めになっていた。徳が二人の客を船に乗せて大川に漕ぎ出す場面では、膝立ての格好で竿や櫓の漕ぎ方を丁寧に演じて見せ、45分の長講。鯉昇奮闘口演の態だった。

扇遊『棒鱈』            
どの噺家にも旬の時期がある。中には生涯を通して旬がない人もいるけどね。扇遊は今が旬だと思う。脂が乗りきっていて、何を演じても高水準の高座を見せてくれる。元々上手い人だったがそれに華やかさが加わり、この日もマクラからサゲまで一分の緩みもない。
この時期の扇遊をみておかないと落語ファンとして後悔しますよと、言いたくなるほどの充実ぶりである。

龍志『小言幸兵衛』
良かったねぇ、こちらもマクラからサゲ(珍しくサゲを付けていた)まで間然とする所がない。しかも人物描写が丁寧だ、今これだけの『小言幸兵衛』を演じられる人は、東京全体でもあまりいないだろう。
実は、出がけにチケットを家に忘れてきてしまい、金を払って入場するかどうか迷ったのだが、観て正解だった。

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