「三三・左龍の会」(2019/9/18)
第92回「三三・左龍の会」
日時:2019年9月18日(水)19時
会場:内幸町ホール
< 番組 >
三三・左龍『オープニングトーク』
前座・柳亭さん坊『からぬけ』
柳亭左龍『尼寺の怪』
柳家三三『半分垢』
~仲入り~
柳家三三『しの字嫌い』
柳亭左龍『転宅』
9月17日に山遊亭金太郎が亡くなった。私が観た最後の高座は昨年の6月だから、倒れる少し前ということになる。なんの衒いもなく古典をきっちり演る人だった。高座の姿とは異なりエピソードの多い人だったようだ。初対面だった三三にいきなり「3万円あげるからキスしていいか?」と言ったとか。左龍は3代目小南襲名についての秘話を語っていたが、噺家の襲名っていうのは色々な事情があるんだね。
左龍はまだ二ツ目当時に、師匠さん喬から名前を継ぐように言われたが断ったそうだ。でも、この人が継ぐのが順当だろう。三三は?そりゃ小三治でしょ。未だ生きてると言いながら、二人が高座を下りる。
左龍『尼寺の怪』
別題『おつとめ』『百物語』、先代の橘家文蔵が得意としていたようだ。
若い衆が集まって百物語をやろうということになり、夜までに各自が怖い話を持ち寄ることになった。もし出来なければ全員の飲み代を払うという約束。困った男は知り合いの和尚に、何か怖い話はないかとたずねる。和尚が若い頃に托鉢に歩いていて、夜になって泊まる所がなく1軒の寺を訪れ一夜の宿を頼むと、ここは尼寺なので本堂で寝て欲しいと言われる。深夜になり和尚がふと目が覚めると、木魚とお勤めの声がする。これはきっと尼さんがお経をあげているんだと思いそのまま寝入ってしまう。翌朝、和尚が尼さんに昨夜のことを尋ねると、自分は読経などしないし、寺には他に誰もいない。ただ、この地方では村で亡くなった人がいると、新仏になった人が寺に来て読経するという慣わしがあるので、昨夜はそれだったのではと言う。聞かされた和尚はゾッとした。
男は、この話ならきっと皆も怖い思いをするだろうと喜び、和尚に絶対に他に人にはこの話をしないで欲しい。もし約束を破ったら寺に火をつけると言い残し、仲間の集まりに戻って、いま聞いた話を自分の事として披露する。処が男は粗忽者だから、托鉢を「散髪」、お勤めを「おつけの実」などと言い間違えるものだから、誰も怖がらない。終いには、周囲の者がこれは男の体験談ではなく誰かの入れ知恵だと言い立てると、男は「寺へ行って火をつけてくる」でサゲ。
こうあらすじを書くと面白さは分からないだろうが、左龍は得意の顔芸を活かして頓珍漢な男を演じ、笑いをとっていた。
三三『半分垢』
相撲取りのネタなので、小学生の頃は将来力士になりたかったという三三の、昔の力士のマニアックなマクラが振られる。
短いネタだが、三三は力士のお上さんを軽妙に演じて楽しませてくれた。
三三『しの字嫌い』
何事にも一言屁理屈をつけたがる飯炊きの清蔵を懲らしめようと、主人が言葉に「し」を入れたら給金は無しにすると命じる。その代り、主人が「し」を言ったら、清蔵の望みの物を与えるという約束をするが、計略を巡らした主人の方が「しめた」と口走ってしまい、清蔵に銭を取られてしまう。
『のめる』っと同じ様な趣向のネタだが、しの字抜きで会話する二人の苦労を三三は楽しそうに演じていた。
左龍『転宅』
同じネタを、例えば喬太郎が演じると、お菊と夫婦約束をした泥棒が当初はどこか疑心暗鬼な所があるのだが、左龍では最初から大喜びで舞い上がってしまい、顔全体を使ってその喜びを表現していた。天にものぼるとはこの事だろう。
その割には、後半でお菊に騙されたと知った泥棒は、それほど怒りを示さない。一瞬でもいい夢を見させてくれたと、そう思ったのだろうか。
なにせ、顔芸では左龍の右に出る者はいないかも。
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