「立川ぜん馬 独演会」(2019/9/28)
「立川ぜん馬 秋の独演会2019」
日時:2019年9月28日(土)13時
会場:お江戸日本橋亭
< 番組 >
前座・三遊亭じゃんけん『三人旅』
古今亭しん吉『王子の狐』
立川ぜん馬『小言幸兵衛』
~仲入り~
三増れ紋『曲独楽』
立川ぜん馬『忠治山形屋』
ぜん馬は、9年前の9月28日に最初のガンの手術を行ったのでこの日が9周年。以来。5種類のガンに罹り7回のガンの手術を行ってきた。自分より後でガンに罹った人で先に亡くなった人も少なくない。お客さんも年配の人が多いので、これからはお客が先か、自分が先になるかの競いだと。
この日は会場が満員の入り。
しん吉『王子の狐』
期待の若手の一人。
男が王子稲荷にお参りに行くのを「午の日」(2度ほど丑の日と言い間違えていたが)の翌日にしていた。人出が少ないので狐が娘にばけたのを見ることができたのだ。
男が翌日料理屋に出向き、無銭飲食をしたことを詫びて金を払おうとするが、店側は男が狐だと思い込んでいるので平伏すばかり。
こうした点は良く工夫されていた。
ぜん馬『小言幸兵衛』
先日このネタを同じ立川流の龍志で聴いたばかりだが、それぞれに良さがある。龍志が演じた大家は口うるさいがどこか好々爺風な所があったのに対し、ぜん馬の大家は強面でより圓生に近い演じ方だった。
れ紋『曲独楽』
今回で3度目だと思うが、客をいじり過ぎてしつこく感じる。もうちょっとスマートに出来ないもんだろうか。
ぜん馬『忠治山形屋』
落語ではなく講談として語った。演目は「三尺もの」の中でも人気があり、講談や浪曲でお馴染みだ。
時は天保の大飢饉に見舞われた8年、赤城の山をおりた国定忠治は、大戸の関所を破って子分一同と別れを告げ、一人旅を続けながら信州路に入る。にわか雨にあって神社で雨宿りしていると、二人の男が話しながら通ってゆく。誰かから50両の金を奪って、手数料として5両貰えると言う。悪い奴がいるなと思った忠治。
そこに50がらみの百姓風の男が現れ、神社の境内で首を吊ろうとするのを忠治は止める。分けを聞くと、男は越後・長岡の加右衛門という百姓で、年貢の金を払うことが出来ず一人娘を女郎屋・山形屋藤蔵という者に売り、身代金として50両を手にした。故郷に帰えろうと歩いていたら、いきなり二人組の男に襲われ金を奪われてしまったという。
忠治は直ぐにこのカラクリに気づき、加右衛門を伴って、ヤクザと十手・取り縄を預かる目明しの二足の草鞋をはく山形屋藤蔵宅に乗り込む。
藤蔵と対面した忠治は、自らを甲州郡内の彦六と名乗って、加右衛門に50両の金を渡して欲しいと頼む。怒った藤蔵は棚から十手を取り出し脅すと、ここで忠治は自分の正体を明かし刀の柄に手をかける。
藤蔵はすっかり怖気づいて50両の金を差し出し、忠治は藤蔵から娘の証文を奪って破り捨る。
更に忠治は自分の小遣いにと100両を藤蔵から受け取ると、そっくり加右衛門に渡し、駕籠を手配させて加右衛門と娘を故郷の長岡へと送るのであった。
近ごろ、釈台に前屈みになって、「なんとなんと」等と大声を出しながら、やたら張り扇をポンポン叩くような講談師(誰とは言わぬが)がいるが、あれは邪道。
講談は読む芸だ。ぜん馬の様に背筋を伸ばし、堂々と語るのが本寸法。講釈の腕前も大したもんだ。
« 民藝『異邦人』(2019/9/26) | トップページ | 「志ん陽・正太郎」(2019/10/1) »
「寄席・落語」カテゴリの記事
- 「落語みすゞ亭」の開催(2024.08.23)
- 柳亭こみち「女性落語家増加作戦」(2024.08.18)
- 『百年目』の補足、番頭の金遣いについて(2024.08.05)
- 落語『百年目』、残された疑問(2024.08.04)
- 柳家さん喬が落語協会会長に(2024.08.02)
「お前の了見が出てるよ」小満んはよく叱られたと言います。
手元に黒門町の『小言幸兵衛』のCDがあります。こんなふうに弟子たちは文楽に小言を言われたんだろうな、と想像されます。
さて、ぜん馬の師匠も小言にかけては有名人(笑)でしたね。されど、圓生ですか、興味深いものです。
投稿: 福 | 2019/10/01 06:39
福さん
圓生の『小言幸兵衛』の凄さは、芝居仕立てで心中を語る場面で、舞台の配置が全て圓生の頭の中に入っていることです。それを目の動きで表現しており、やはり圓生にとどめを刺します。
>
投稿: home-9 | 2019/10/01 09:04