「南光・扇遊 二人会」(2019/10/29)
噺小屋session とざいとーざい「桂南光×入船亭扇遊」
日時:2019年10月29日(火)18時45分
会場:国立演芸場
< 番組 >
前座・入船亭扇ぼう『たらちね』
桂南光「化物使い』
入船亭扇遊『妾馬』
~仲入り~
入船亭扇遊『ねずみ』
桂南光『三枚起請』
(全てネタ出し)
「桂南光・入船亭扇遊」とう東西の脂の乗り切った二人の会へ。この日も雨だったが10月は雨ばかり。これも防衛大臣のせいなのか。
南光「化物使い』
古典と思われているようだが、大正時代に作られた比較的新しいネタらしい。東西で演じられているが筋に差はない。
南光は独自かも知れないが少し変えていた。通常は登場人物は隠居と権助だが、南光の場合は夫婦二人だ。長屋から一軒家に引っ越してきた夫婦、家は広くなったし家賃は安い。処が女房が銭湯に行ってたまたま世間話を耳にしてたら、その家が化け物屋敷だという。女房は怖いからと言ってしばらく親元に帰ってしまい、亭主一人が家に残る。ここからは通常のストーリーとなる。
この演じ方の方が時間が短いが、オリジナルの隠居と権助の会話の面白さが抜けていると薄味になってしまう。
扇遊『妾馬』
前半の省略し、八五郎が大家に呼ばれる場面から入った。全体は志ん生流の軽妙な運びだったが、八が御前で酒を飲むあたりから粗っぽいが母親思い妹思いの八の気性が露わになる。そこもあまり湿っぽくせずサラリと演じて、扇遊らしい高座となった。
扇遊『ねずみ』
先日ぴっかり☆の高座で聴いたばかりのネタで、比較するのも憚れるが甚五郎の描き方が大きく異なる。普通にしゃべっていても自ずから風格が感じられるというのが、この噺の甚五郎像だ。やはり扇遊クラスの演者でないとこの味が出てこない。
卯兵衛の身の上話もあまり感情をこめず、しかも客席を引き込む、扇遊ならではの高座だった。
南光『三枚起請』
東京でもお馴染みのネタだが元は上方で、後半の展開に大きな違いがある。
登場人物が騙され側の男たち、仏壇屋の源兵衛、下駄屋の喜六、指物屋の清八、この3名を手玉に取るのが小山(おやま=女郎)の小輝。
3人の男が難波新地の宇津木見世・小輝こと本名たね、からそれぞれ同じ起請文を貰って怒り、茶屋に乗り込む、3人が小輝を呼び出し恨み辛みを言い立てる所までは東京と同じ。
ここで小輝が、幼い頃に母親を亡くし男手一つで兄と小輝を育てていたが父も亡くなり兄まで事故死。一人残された小輝は苦界に身を沈め生きてきたが、辛い仕事で泣く日が続く。そんな時、亡き父や兄に瓜二つの男たちに出会えてついつい甘えてしまったのだと、涙ながらに語る。これを聞いた男たちも、それなら仕方ないと帰ってゆく。小輝の身の上話を立ち聞きしていた茶屋の女将が貰い泣きしていると、小輝はあれは皆ウソだと白状する。
それから数日後、男3人が別々に茶屋に上がり、それぞれが「俺だけは小輝を信じてる」。
サゲの部分は上方の型とも異なり、南光の独自の工夫と思われる。
騙した女郎が居直る東京版より、さらに男たちを騙し続ける上方版のほうが遥かにしたたかだ。
南光の高座はそれぞれの人物を明確に演じ分けて楽しませてくれた。
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