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2019/10/20

「宗助・吉坊 二人会」(2019/10/19)

「桂宗助・桂吉坊 二人会」夜の部 
日時:10月 19日 (土)17時30分
会場:らくごカフェ 
<   番組   >
『オープニングトーク』
桂宗助『ぬの字鼠』『亀左』
桂吉坊『高砂や』
~仲入り~
桂宗助『市川堤』

「桂宗助・桂吉坊 二人会」は昼夜公演で、その夜の部に。昼の部は前売り完売、夜も満席、上方落語もすっかり東京に定着してきた。最近は東京から繁盛亭に行く人もいるとか。

宗助『珍品小品集』
珍品とは文字通り珍しい噺で、言葉が今の時代に通じないとか、面白くないとかいうネタが多い。小品とは小噺より少し長く普通のネタよりは短いものを指す。今回は次の2つが演じられた。
『ぬの字鼠』
大黒さんのお使いが鼠、僧侶の奥さんを大黒と符牒で呼んだ事が知らないと理解できない噺。
昔は、坊さんの肉食妻帯は禁止されていた、そんな時代のこと。
寺の小僧の珍念、自分は和尚の本当の子だと周囲に言いふらしている。困った和尚は懲らしめのために珍念を縄で縛り木にくくりつけた。困った珍念は芝居の『金閣寺』の桜姫を思い出し、足で周囲の落ち葉を使って「ぬ」の字を書いて祈ると、「ぬの字鼠」が抜け出して縄を食いちぎってくれた。喜んだ珍念は、賽銭を懐に遊びに出かけてしまう。
これを知った和尚、「えっ、珍念の描いた鼠が・・・、きっと大黒(珍念の母)が使わせたんじゃろ」でサゲ。
『亀左』
モグサ売りの亀屋佐京、「江州 伊吹山のほとり 柏原本家 亀屋左京 薬モグサよろ~し」と売い歩いていた。
ある時、亀屋佐兵衛という老人が、念仏講中の人たちとお坊さんの説教を聞いているうちに眠気を催してそのまま大いびきで眠ってしまう。周囲が起こそうとするがなかなか起きないので・・・。
冒頭のモグサ売りの売り声が地口オチになる。
こちらはいよいよ難しい。
両方とも滅多に聴ける機会がないネタだった。

桂吉坊『高砂や』
東京でもお馴染みのネタで、筋はあまり変わらないが、主な相違点は次の通り。
・甚兵衛が隠居から「高砂や」を教えて貰うだけでなく、羽織袴から女房の着物まで借りてゆく。
・甚兵衛が両家の間を頭を下げまくって婚礼をまとめた経緯が語られる。
・婚礼の席で甚兵衛が「高砂や」の前半で立ち往生していると、介添人がその後は「月もろともに出で潮の 波の淡路の島影や 遠く鳴尾の沖過ぎて はや住吉に着きにけり」だと教えてくれて、甚兵衛が「助け舟を出してもろた」でサゲ。
上方版は初めて聴いたが、甚兵衛と隠居の掛け合いは東京版より面白い。
吉坊は達者だ。

宗助『市川堤』
先日、桂文我の口演でこの噺の東京版を聴いたので、この日上方版を聴くことにした。
以下に「東京版」を再録する。
下野の国の越後屋治郎兵衛の倅・治郎吉は道楽三昧で、佐野のヤクザ・布袋屋一太郎の娘・小染と深い仲になる。布袋屋は以前に賭場で治郎吉の姿を見ており、度胸の良さをかって二人に所帯を持たせ、江戸で商売するよう元手を渡す。
江戸に出た治郎吉だが博打好きはおさまらない。負け続けで元手もすってすっからかん。そのうち小染のお腹が大きくなってきた。困った治郎吉は、賭場仲間の熊五郎と組んで、博打で大儲けしていた浪人者の門堂平左衛門を殺害し、200両を奪う。
急に大金が入った治郎吉をお染が怪しむと、この噂が父親の布袋屋の耳に入ったらタダでは済まないと思った治郎吉はお染を殺して死体は川に流してしまう。
独り身になった治郎吉は相変わらずの博打ざんまい。ある日急な雨で一軒の家の軒先で雨宿りしていると、奥から声がかかり家の中に入っていいと言う。声の主は元は江戸節お紺と呼ばれていた売れっ子の芸者で、今は犬神軍太夫という一刀流の道場主のお囲い者。それが縁で治郎吉とお紺が出来てしまった。これが犬神の耳に入るが、これが犬神の耳に入るが、意外に物分かりが良く、お前にくれてやると家財、家付きでお紺を治郎吉に渡す。本来なら恩義に感じる所だが、治郎吉は犬神を脅して手切れ金までふんだくる。
金が出来た治郎吉は又もや博打に現を抜かしスッテンテン。そのうち、お紺の右の目の淵に小さなおできポツッとできた。痒いといって掻きむしる間に段々だんだん大きなって、終いに顔の右半面が紫色に大きく腫れあがってしまった。
治郎吉はお紺の治療費を工面するために知り合いを尋ね歩き、ようやく金が手に入ったのが10日後、長屋に戻るとお紺の姿が見えない。近所の者に聞くと、前日に杖にすがりながらお紺が家を出て行ったという。
もうここにはいられないと治郎吉は、佐野の布袋屋の親分の所に戻り、娘の小染が病死したと嘘を言って居候になる。
近くに大きな田畑を持つ百姓がいたが、夫が突然の死で働き手がない。そこで布袋屋の世話で、後家のお小夜の元に治郎吉は入り婿となる。当初は真面目に働き、二人の間には治郎太郎という男の子もできた。そのうち治郎吉の博打の虫が湧いてきて博打ざんまいの生活が始まり、田畑を全て手放す。悲観したお小夜は縊首して自害。母親の遺体にとりすがって泣く幼児を見て、ここで初めて治郎吉は目が覚める。
それからは人が変わった様に夢中で働きだし、まとまった金が出来ると米相場に手を出すが、これが大当たり。今では関東一円に手広く商いを拡げた大店の主になっていた。今では困っている人を助ける寄進者にもなっていた。
歳の暮には各地に掛け取りに行くが、他の地は奉公人たちに任せ、江戸だけは治郎吉が掛け取りに回る。用事が終わって佐野に向かう途中、雪がちらつきだした。戸田の渡しまで来ると川原の小屋から女乞食がはい出して来た。髪の毛は抜け落ち、顔中が腫れ上がっている。情け深い治郎吉は金を恵んでやるが、その乞食が「お前は治郎吉だな」とむしゃぶりついて来た。変わり果てたお紺だったのだ。
苦労したことを聞いて涙ぐむ治郎吉はお紺と佐野に行くことを約束し、取り敢えずこの先に宿を取っているので一緒に泊まろうと誘う。手足があまりに汚れているので、戸田川で洗うよう言う。お紺が川辺で手足を洗っている隙に、治郎吉は背後から襲いお紺を川の中へ突き落す。なお棒杭につかまって必死のお紺を治郎吉は刀で斬り殺す。
この後、治郎吉は蕨の馴染みの宿へ上がると、部屋にお紺の幽霊が現れる。

上方版は地名が関西地方に変わるだけで、ストーリーはほぼ同じ。
大きな違いは、治郎吉が幽霊を追い払った後で、「はて恐ろしき執念やな」で終わる。
東京版では、この後治郎吉は自刃して果て、この物語が歌舞伎『籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)』の発端となるで終わる。
宗助の高座は、時折りクスグリを入れ、また地の語りの部分であまり感情を入れず、全体に陰惨さを薄めていた。
数年前に宗助の『たちぎれ線香』を聴いて、その上手さに感心したが、今回も米朝を彷彿とさせる様な期待通りの高座だった。

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コメント

小品ネタ、お客には受けていましたか。

投稿: 佐平次 | 2019/10/21 10:33

佐平次さん
宗助がマクラで解説していたので、客の反応は良かったと思います。

投稿: home-9 | 2019/10/21 13:36

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