「その指摘は当たらない」
10月20日付東京新聞の文化娯楽面のコラムで、落語家の笑福亭たまが「その指摘は当たらない」という記事を書いている。
言われてみれば、近ごろやたら耳にする表現だ。会見などで使われるので「その指摘は当たりません」という言い方になるわけだが。
最も多用してえいるにはやはり政治家で、不正な政治献金を受け取っておいて「政治資金規正法違反ではないか」と追及されると、「その指摘は当たりません」。選挙中に有権者に金品を贈っていたことがバレ「公選法違反ではないか」と追及されると、「その指摘は当たりません」、といった具合だ。
彼らはどんな悪事を働いても「その指摘は当たらない」と、なんの根拠も示さずシラを切るのだ。現に、今の安倍政権の閣僚の中で、こうした態度を取り続けている者がいる。そう、あの人もこの人も。
関西電力の役員らが多額の金品を受け取っていた問題で、彼らは「不適切だが、違法ではない」と強弁する。この言い方も同工異曲で、共通しているのは彼らの辞書には「反省」という言葉がないのだ。
「シラを切る」で思い浮かぶのは、菅官房長官の会見だ。ほとんどシラの切り通しで会見が終る。
たまが、もう一つ指摘しているのは、小泉進次郎の一連の発言に対して「ポエムか!」とツッコんで笑う様な風潮だ。どんなニュースでもツッコんで笑いにしてしまう。一億総芸人である。
たまは続ける。
ツッコんで笑いにしてしまっていると、将来や根本的な問題解決を深く真剣に考えなくなり、社会が機能しなくなる。
国民が企業にトップや政治家をおちょくるだけで満足し罰しないと、彼らはどんどん悪さをしてシラを切り通す。こういうシラを切る人たちへの対処法を考えていかないと不正が横行する、と。
まあ、一番の責任はメディアでしょうね。会見でも、もう一歩追及していればと思うことが度々だ。メディアが忖度してどうする。
検察もいっこうに動こうとしない。日産のゴーンの様な小物の捕り物で満足しているようじゃ、特捜部は税金ドロボーと言われても仕方ない。
「その指摘は当たらない」なんて言わせないぜ。
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たまの主張には考えさせられました。落語家は「どんなニュースでもツッコんで笑いにしてしまう」生業だと感じていたので。
山田洋次作品は矛盾を笑いでまぶしてしまうので困る、という意見を聞いたことがありますが、必ずしもそうでない面もあり・・・いや、なかなか難問ですねぇ。
投稿: 福 | 2019/10/22 06:56
福さん
たまは、芸人ならそれでも良いが、国民全部がツッコんで笑いで済ませてのでは社会が機能しなくなると主張しているわけです。社会への風刺そのものを否定しているわけではないと思います。
投稿: home-9 | 2019/10/22 09:32