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2019/11/29

「羽衣」をテーマとした能と組踊(2019/11/28)

組踊『銘苅子(めかるしー)』 
天女:宮城能鳳
銘苅子:嘉手刈林一
おめなり:末吉元気
おめけり:當間剛琉

能・観世流『羽衣(はごろも)和合之舞(わごうのまい)』 
シテ/天人:坂井音重
ワキ/漁師白龍:森常好

11月の国立能楽堂の企画公演は、「羽衣伝説」をテーマにした「能」と沖縄の「組踊」で、特に「組踊」は初見だったので興味を持った。

組踊『銘苅子』
【あらすじ】
農夫・銘苅子に羽衣を隠された天女は銘苅子の妻となり二人の子どもをもうける。やがて羽衣を見つけた天女は子ども達を寝かしつけて天界へと帰っていく。残された子どもたちは来る日も来る日も母を捜し悲しみにくれる。伝え聞いた国王が姉を首里城中で養育、幼い弟は成人後に廷臣に取り立て、銘苅子には位階を与える。
【感想】
「組踊」という名称からいわゆる舞踏を想像していたが、能に似て動作は静かだ。囃子が三線、笙、笛、胡弓、太鼓という構成。
ストーリーは羽衣伝説というよりは、かつての国王(15-16世紀にかけて在位した尚真王)の善政を賛美する内容になっているようだ。
見所は、天女の佇まいや髪を洗う時の動きの美しさ、二人の子どもと別れる場面の静けさといった所。
ただ、詞章が沖縄の言葉なので全く分からない。訳も出ているが、それを追っていたら舞台が見えない。「組踊」の上演の難しさを感じた。

能『羽衣』
【あらすじ】
漁師・白龍が三保の松原で見つけた羽衣は天女のもの。舞を見せれば羽衣を返すと言う白龍の言葉に、天女は月への祈りを捧げつつ舞い、昇天する。
【見所】
天女から羽衣を返してくれれば舞を舞うと言われた白龍が、羽衣を返してしまうとそのまま天に帰ってしまうのではと怪しむと、天女は「いや疑いは人間にあり、天に偽りなきものを」と言って、純粋無垢な天人の魂を示す。終始変わらぬ気高さを示すシテの姿が見所。
それと囃子方の音が素晴らしかった。
解説によればこの物語は、天女が礼拝する月天子はインドの月神チャンドラーが仏法守護の十二天の一つに変じたもので、その本地が勢至菩薩。月世界に宮殿があるというのは道教の発想であり、この『羽衣』は神道、仏教、道教が融合した世界観に基づいているとのこと。またワキの白龍は中国式の名乗りにもなっているそう。ウーン、グローバルで、深いね。
久々の能、結構でした。今回は寝落ちしなかったぜ。

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2019/11/27

「志ん陽・文菊 二人会」(2019/11/26)

「古今亭志ん陽・古今亭文菊 二人会」
日時:2019年11月 26日 (火)19時30分
会場:らくごカフェ
<  番組  >
古今亭志ん陽『猫と金魚』
古今亭文菊『富久』(ネタ下ろし)
~仲入り~
古今亭志ん陽『肝つぶし』

落語協会期待の若手真打、古今亭志ん陽と古今亭文菊の二人会、それぞれの持ち味を十分に発揮した充実の会だった。
通常は二人で2席ずつ演じるが、この日は文菊が長講のため1席となった。

志ん陽『猫と金魚』
言葉が通じない主人と番頭の会話、
「金魚鉢を棚の上に上げとくれ」「はい、上げました」「それでいい」「金魚はどうしましょ?」
「金魚を棚の上に上げとくれって言ってんだよ」「はい、上げました」「それでいい」「金魚鉢はどうしましょ?」
「だから、金魚を金魚鉢の中に入れて棚の上に上げとくれよ」「はい、上げました」「それでいい」「水はどうしましょ?」
亡くなった橘家円蔵が得意としていたが、二人の会話のズレが志ん陽だと微妙に違っていて、この外し方が面白いのだ。
真面目に恍けている番頭の表情も良かった。

文菊『富久』
最初に、ネタ下ろしでどう収まるか分からないと断って本題へ。
結論から言うと、ネタ下ろしと思えぬほど完成度が高い。
先ず幇間の久蔵の造形が良い。色気と愛嬌のある遊び人風情が出せる所が文菊の優れた点だ。
火事見舞いに来た客に帳付けしながら愛想を言う場面は、先代文楽を彷彿とさせる。久蔵が女中に酒をお酌させるとき、「あんた綺麗になったね、あたしはね以前からあんたを口説こうと思ってたんだよ」と言う時の目つきがいい。
次第に酔っぱらってきて、「火事が段々近づいてきたのを、あたしがこう仁王立ちになってフーっと息を吹きかけたら、火事が飛んでちゃった」なんてホラを吹き出す辺りの描き方も良い。
久蔵が富が千両当たったのに札が無いから金を渡せないと言われて、それなら500両、100両、50両、10両、5両、最後は1両でもいいと縋る久蔵には、借金まみれの売れない芸人の侘しさが表現されていた。
『富久』をこれだけのレベルで演じられる若手は、他にいないだろう。

志ん陽『肝つぶし』
男が病で寝込んでいる義弟の民のもとを訪れると、恋煩いだという。だが話を聞いて見れば相手は夢に出てきた女。医者に診てもらったら、「夢の中の女に惚れて寝付いた場合は、年月そろって(=生まれ年と生まれ月の十二支が同じに)生まれた女の生き肝を煎じて飲めば治る」と言われたが、無理な話しだ。だがこのままでは民はどんどん弱っていくばかり。
男が9歳で妹が5歳の時に両親に死に分かれ途方に暮れていた所を、民の父親が二人を引き取り我が子同様に育ててくれた。その父親も今は亡くなった。せめてもの恩返しに何とか民を救ってやりたい。
そこで男はふと妹が年月そろって生まれた事を思い出した。
妹を殺し生き肝を民に食べさせようと、寝ていた妹の上に出刃包丁を振り上げるが、ついつい涙を妹の頬の上にこぼしてしまう。目が覚めた妹が驚くと、男は芝居の稽古だと言い訳をする。
「ああ驚いた。本当に、肝をつぶしたわ」
「肝がつぶれた? ああ、それでは、薬にならない」 でサゲ。
この噺は、前半が夢の女に恋煩いしたという滑稽噺から、後半は一転して人情噺風の展開になる。
志ん陽の高座は、その双方のバランスがとても良く取れていて好演だった。
志ん陽、いよいよエンジンが掛かってきたか。

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2019/11/25

「桂春若 独演会」(2019/11/24)

「桂春若 独演会」
日時:2019年11月24日(日)13時
会場:お江戸日本橋亭
<  番組  >
前座・立川かしめ『子ほめ』
笑福亭茶光『田楽喰い(ん廻し)』
桂吉坊『胴斬り』
桂春若『植木屋娘』
~仲入り~
柳家小菊『粋曲』
桂春若『三十石』

ロケット団の向こうをはって「四文字熟語」を。
”一つの事を疑うと全てが疑わしくなること”「安倍晋三」。
総理が税金を使って選挙運動をやるなんて前代未聞だ。仮に周囲にそうした動きがあればそれを制するのが指導者のあるべき姿だ。こういう人物が永年首相を続けていることがこの国の悲劇といえる。

先週はどこか寄席に行くつもりが雨や寒さで二の足を踏んでしまった。典型的な日和見だね。
さて「桂春若 独演会」、1970年3月に3代目桂春団治に入門というから上方でもベテランに属するだろうが、東京の落語ファンにはお馴染みが薄いと思われる。師匠の他に桂米朝や5代目桂文枝に稽古をつけて貰っていて、今回は、その文枝から教わったネタを演じた。
ネタに入る前に、マクラ代わりに珍しいジョークを披露するというスタイルが特長。

茶光『田楽喰い(ん廻し)』
鶴光門下で今秋二ツ目に昇進。このネタは前半が『寄合酒』で後半が『田楽喰い』としてそれぞれ独立して演じられるが、東京では後半も『ん廻し』の名で通っている。
師匠譲りの明るい芸風だが、人物の演じ分けは未だ未だだ。

吉坊『胴斬り』
侍の試し斬りで胴と足に分かれてしまい、胴は風呂屋の番台に、足は麩屋に奉公して麩を踏む仕事に就く。お蔭で一人で二人分の給金が貰えるという楽天的な噺。足が口をきくと、「どこで喋ってるんやろな・・・まあ、大概そんなとこだろうと思ってはいたが」が可笑しい。短いながらこの人らしいきっちりとした高座。後席の春若の『三十石』では舟歌をスケ。

春若『植木屋娘』
資産家の植木屋の親父さん、そそっかしいが18になる娘・お光が可愛くてしょうがない。字が書けないので近くの寺に居候している500石取りの跡取りの伝吉に頼んで請求書を書いて貰う。その伝吉、姿も性格もとても良い男で、親父さんとしては娘の婿にしてと一計を案じ、伝吉に酒を飲ませて袖を引くよう娘に命じるが、オボコの娘は恥ずかしがって上手くいかない。諦めかけていると、ある日お光が妊娠していることを知り、相手はと問いただすと、これがなんと伝吉だという。喜んだ親父さん、早速寺に駆け付け、和尚に伝吉を婿にしたいと頼む。
「しかし伝吉は、500石の跡目を・・・」
「娘に子ができたら、その子に継がせばええ。 伝吉は貰う。」
「そんな無茶な。侍の家を勝手に取ったり継いだりできるかいな。」
「大丈夫。 接ぎ木も根分けも、うちの仕事ですがな。」
でサゲ。
上方でも高座にかかる機会が少ないネタだそうだが、粗忽者だが娘への一途な愛情を注ぐ父親の姿が描かれていた。
サゲを含めて、文枝より米朝に近い演じ方だったように思う。
東京では、三遊亭歌武蔵が持ちネタにしている。

小菊『粋曲』
いつもと三味線の音が違うと思っていたら、ご本人から、この日の様な湿気の多いときは糸が伸びて調子が狂うんだそうだ。相変わらずいい喉を聴かせてくれた。

春若『三十石』
このネタ、フルバージョンだと1時間以上かかるので、演者によって、あるいは持ち時間によって始めと終わりが変わる。この日の春若の高座では船宿から始まり、乗船して舟歌が入り、夜明けの枚方の農村風景までを演じた。
春若の2席は、余計なクスグリやケレンはなく、上方の古典をじっくり聴かせるという高座だった。

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2019/11/20

『通し狂言 孤高勇士嬢景清』(2019/11/19)

『景清』という落語があるのはご存知の方が多いと思う。盲人の定次郎が赤坂の日朝さまに願掛けして目があくというストーリーだが、このタイトルがなぜ景清なのか、以前から不思議に思っていた。
昔から平家の勇将である悪七兵衛景清が活躍するという「景清物」と呼ばれる芝居があり、平家再興のために頼朝の命を狙うが、後に断念して自ら目を突いて盲目になるという一連の物語を指す。だから当時の人は景清といえば盲人だと分かったのだろう。
今回、国立劇場で上演された芝居もその「景清物」の一つだ。なお、景清の名は平家物語にも出ているので実在の人物と思われる。

通し狂言『孤高勇士嬢景清(ここうのゆうしむすめかげきよ)』 四幕五場
西沢一風・田中千柳=作『大仏殿万代石楚』
若竹笛躬・黒蔵主・中邑阿契=作『嬢景清八嶋日記』 より
序幕  鎌倉大倉御所の場
二幕目 南都東大寺大仏供養の場
三幕目 手越宿花菱屋の場
四幕目 日向嶋浜辺の場、日向灘海上の場
<   主な配役   >
悪七兵衛景清:中村吉右衛門
源頼朝/花菱屋長:中村歌六
肝煎左治太夫:中村又五郎
仁田四郎忠常:中村松江
三保谷四郎国時:中村歌昇
里人実ハ天野四郎:中村種之助
玉衣姫:中村米吉
里人実ハ土屋郡内:中村鷹之資
和田左衛門義盛:中村吉之丞
俊乗坊重源/花菱屋遣手おたつ:嵐橘三郎
梶原平三景時:大谷桂三
秩父庄司重忠:中村錦之助
景清娘糸滝:中村雀右衛門
花菱屋女房おくま:中村東蔵

時は鎌倉時代。源平合戦で勝利した源頼朝は、仏の教えを守ることが国家安寧の基礎と説き、平家によって焼き討ちされた東大寺大仏殿の再興を図る。ここでは頼朝の名将ぶりと慈悲深さが示される。
落慶供養の日を迎えた奈良の東大寺では、鎌倉から頼朝一行が訪れ、いよいよ大仏殿で読経が始まる。その時、悪七兵衛景清が現れ頼朝に挑もうとする。しかし景清は、平清盛の非道を説く頼朝の言葉に返答を詰まらせる。頼朝は景清に臣従するよう求めるが、景清は自らの目を剣で刺し盲目となる。
駿河国手越宿にある遊郭・花菱屋に、景清の14歳の娘・糸滝が遊女を斡旋する肝煎の左治太夫と共に現れる。糸滝は花菱屋の夫婦を前に、身を売らなければならない訳を切々と語る。父の窮状を救おうとする糸滝の健気さにうたれた花菱屋が、糸滝と左治太夫に餞別を渡し、二人は日向へ出立する。
日向国の浜辺では、亡君・平重盛の位牌を供養しながら貧しく暮らしている景清のもとへ糸滝が訪ねて来る。二人は再会を喜び合うが、糸滝が大百姓に嫁いだと聞いた景清は、激高して娘を追い返す。しかし、娘を乗せた船が沖に出ると名残惜しそうに見送り、娘の幸せを願う本心を明かす。さらに残された手紙から糸滝の身売りを知ると驚愕し、娘を犠牲にしたことに我が身を責める。
景清は娘を身売りから救うため源氏に帰順することを決意し、船中から海へ平重盛の位牌を投下し祈りを捧げる。

この芝居には、勇壮な立廻りが楽しめる二幕目、一転して庶民の人情を描く世話物風の三幕目、親子の情愛を綴る四幕目と、場面ごとに見どころがある。
最大の見所は、中村吉右衛門の熱演と奮闘ぶりだ。武士としての信念と娘への情愛の間に揺れる心を見事に描いて見せる。
対して、観客の入りが寂しいのが残念。
脇では以前から注目している中村米吉の可憐で一途な玉衣姫の演技が印象に残った。10年以上前に見たときは、未だセリフも少ない村娘の役だったが、段々良い女形になってきた。

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2019/11/17

ザ・きょんスズ30(2019/11/16)

「ザ・きょんスズ30」
日時:2019年11月16日(土)19時
会場:ザ・スズナリ
<  番組  >
柳家やなぎ『金明竹』
柳家喬太郎『綿医者』
三遊亭兼好『氷上滑走娘』
~仲入り~
柳家喬太郎『本当は怖い松竹梅』

柳家喬太郎落語家生活30周年記念落語会「ザ・きょんスズ30」は、11月1日より30日まで30公演が開催されている。その折り返しの16日夜の部へ。本人によれば30周年記念というより31年目に踏み出すための落語会とのこと。
ネタ出しされているラインナップを見ると、古典から新作にいたる喬太郎の代表的な演目が並んでいるので、今の時点での集大成ということになろう。
柳家喬太郎という噺家は極めて特異な落語家だ。古典と新作の両方を演じる人は多いが、喬太郎はその双方ともに高いレベルにある。
古典でいえば、軽い滑稽噺から圓朝作の人情噺まで幅が広く、また演じ手が絶えていたような古典の掘り起こしも行っている。
新作では、従来の新作落語ではあまり扱ってこなかった様な男女の切ないラブストーリーといったテーマのものから、SFやミステリーっぽいものまで実に多彩だ。
こんな噺家は恐らく過去にいなかったろうし、今後も出てこないかも知れない。
だから喬太郎と同時代を生きているというのは幸せなことなのだ。

やなぎ『金明竹』
古典に手を入れてという気持ちだろうが、方向性が間違っている。客が来たらお茶請けを食べさせるとか、店番の与太郎が呼び込みをしたり「ご指名は?」と訊いたりと、訳が分からない。そのくせ肝心の上方弁の言い立ては滑舌が悪い。妙に捻ろうとするより、まずは古典を真っ直ぐ磨くことだ。

喬太郎『綿医者』
二ツ目になって2,3年の頃に髄膜炎という大病を患い入院した時の思い出をマクラに。入院した時に同じ思いをしたと、ニヤッと笑ってしまう様なエピソードもあった。とかく男と言うものは、である。
このマクラが全体の3分の2位を占めて、ネタは短い。元は上方落語のネタだったが、近年の演じ手がなく絶えていたのを喬太郎が復活させたもの。内臓がいかれた患者の手術で、取り出した内臓の代わりに綿を詰めた。身体が治ったので強い酒を呑んで、煙管の煙草の火を思いきり吸い込んだもんだから内臓の綿に火が付いた。慌てて水を飲み消した所で「胸が焼けた」サゲ。医者が内臓を取り出す場面をユーモラスに描いてみせるブラックな演出。

兼好『氷上滑走娘』
マクラで喬太郎への思いをたっぷり語ってネタへ。
兼好の新作のようで、足の悪いおばあちゃんが医者に運動を勧められフィギュアスケートを始めるという他愛ないストーリーだが、座布団の上で3回転の真似をする動作が秀逸。高座で滑って客が喜ぶのは兼好だけか。

喬太郎『本当は怖い松竹梅』
古典の改作というよりは新作。
マクラの披露宴での余興の話から『松竹梅』の終わりまでは古典の本編通りの演じ方。式をあげたばかりの新郎が刺されて命に別状は無かったが刺した相手については口をつぐむ。一方、梅さんが式の後で行方不明になる。この謎を隠居が金田一ばりに推理し、遂に真相を突き止めるというミステリー仕立て。
カギは本編での梅さんのセリフで、隠居が教えた渡りセリフの「なったなった蛇になった当家の婿殿蛇になった。なに蛇になあられた。長者になあられた」という謡の文句を、
①梅さんが、謡(うたい)と屋台と間違え、横丁の屋台のおでん屋を引き合いに出したこと。
②式の最後の3人のセリフの最後で梅さんが「亡者になあられた」と間違えてしまったこと。
所から隠居の推理が始まり真相が明らかになって、事件は意外な結末を迎えるというもの。
この滑稽噺を推理劇に仕立てたという創作力は大したものではあるが、結末が陰気な印象で落語として暗さが気になった。

喬太郎の2席はいずれも喬太郎ならではの高座。
31年目からどのように変貌してゆくのか、大いに楽しみだ。

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2019/11/16

「あの出来事」(2019/11/15)

シリーズ”ことぜん”Vol.2「あの出来事」
日時:2019年11月15日(金)14時(上演時間:1時間40分)
会場:新国立劇場 小劇場 THE PIT
脚本:デイヴィッド・グレッグ
翻訳:谷岡健彦
演出:瀬戸山美咲
<  キャスト  >
南果歩:クレア(合唱団の指揮者)
小久保寿人:少年、他
《合唱団》
秋園美緒、あくはらりょうこ、石川佳代、カーレット・ルイス、笠原公一、かとうしんご、鹿沼玲奈、上村正子、木越凌、岸本裕子、小口舞馨、小島義貴、櫻井太郎、桜庭由希、Sunny、白神晴代、菅原さおり、杉山奈穂子、鈴木里衣菜、武田知久、谷川美枝、富塚研二、中村湊人、松浦佳子、南舘優雄斗、柳内佑介、山口ルツコ、山本雅也、吉岡あきこ、吉野良祐

「あの出来事」とは、2011年7月22日にノルウエーで起きた、死者77人、負傷者200人以上を出した爆弾・銃乱射事件だ。犯人は極右思想を持ったキリスト教原理主義者で、反移民、反イスラム主義を掲げていた。
本作品は、上記の事件を題材にして書かれた戯曲である。
【あらすじ】
合唱団の指導者を務めるクレア。彼女の合唱団には、移民や難民など、さまざまな立場の人たちがいた。ある日、練習中に突如入ってきた少年が銃を乱射し、多くの人が亡くなる。団員が殺されるのを目の当たりにしたクレアは、それ以来、魂が分離したような気分になってしまう。
クレアは、犯人の少年がなぜこの様な犯罪を起こしたのかその原因を探るため、少年の親や知り合いを訪ねる。
クレア自身も事件の影響で不眠症に悩み情緒不安定になり、パートナーや友人との間に齟齬や対立が生じる。
やがて、クレアは犯人の少年を毒殺しようとするが・・・・。

イギリス人の作者は、ノルウエーの事件の第一報を聞いたとき、一緒にいた幼い息子から「どうして、こんな事がおこったの?」と訊かれ、それが本作品を書くきっかけになったようだ。
今、何か自分と異なるものを極端に排除するような傾向が強まり、それが大量殺人のような事件を引き起こす原因となっている。
また、こうした事件は加害者のみならず、被害者やその周辺の人々の精神や生活にも多大な影響を及ぼす。
この演劇が上演される意義はここにあると思う。
役者が二人だけで、30人の合唱団が芝居に参加するという特異な舞台は、かなり実験的だ。
公演は26日まで。

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2019/11/15

国立名人会(2019/11/14)

第435回「国立名人会」
日時:2019年11月14日(木) 19時
会場:国立演芸場
<  番組  >
前座・柳家小はだ『道灌』
柳家三之助『金明竹』
入船亭扇治『きゃいのう』
古今亭志ん橋『井戸の茶碗』
―仲入り―
柳家福治『お見立て』
柳家小菊『粋曲』
柳家小三治『粗忽長屋』

11月の国立名人会は小三治のトリで、 出演者は志ん橋以外は柳家一門が顔を揃える。

三之助『金明竹』
緩やかなセリフ回しと「道具七品」の早口の言い立ての対比が効果的。このクラスの人が演じると断然面白くなる。

扇治『きゃいのう』
初代柳家三語楼の作とされ、弟子の柳家金語楼が時折り高座に掛けていた。地位の低い歌舞伎俳優の哀感を描写した噺。
座頭に腰元役を貰った大部屋の役者が床山に行くと鬘がないという。初日に休んだため用意がされていなかった。泣き出す役者に訳を訊くと、役者になりたくて両親の反対を押し切り故郷を飛びだしたが、ようやく役が付いたので両親を招待したが、猪や馬の役でがっかりさせてしまった。今度はセリフのある役で、両親が楽しみにして見にきていると。同情した床山は余っていた力士の鬘に新聞紙の詰め物を詰め込んで何とか収めて舞台に送りだす。処が、床山が誤って煙草を叩いた火を新聞紙に落としてしまったことに気付いた。しかし時時遅く、役者が舞台に出ていた。幕が開くと腰元が三人掃除をしていて、そこに乞食がやって来てる。それを見つけた腰元の一人目が『むさくるしいわい』、二人目が『とっとと外へ行(ゆ)』、そして最後の役者が『きゃいのう』」という渡りセリフ。だが最後の役者が舞台で上がってしまい、セリフが出てこない。そのうち鬘の上から煙が立ち上ってきた。役者が慌てて「ウーン……熱いのう」でサゲ。
実力者揃いの入船亭一門の中では地味な存在の扇治だが、芸は確かだ。例えば煙草をのむ時の煙管の持ち方が良い。舞台の腰元も渡りセリフもちゃんと女形の口跡になっている。丁寧な高座で好演。

志ん橋『井戸の茶碗』
結論から言うと、とても良い出来だった。
この噺、登場人物がみな正直で良い人ばかりという事から、落語らしい面白みに欠ける憾みがある。志ん橋の高座ではその正直に滑稽味が加わり、かつ浪人の威厳を失わぬ姿や、一途な武士の姿、好人物の屑屋の姿が明確に描かれていた。
筋の運びも間然とした所がなく、結構でした。

福治『お見立て』
初見。極め付けの志ん朝の高座に比べると薄味だが、テンポの良い運びはこのネタの面白さを引きだしていた。
定席に顔づけされる機会が少ない様だが、味のある高座だった。

小菊『粋曲』
トリの小三治が盛んにほめていたが(腰が据わった、開き直った芸とか)、この人の音曲にはいつも感心する。私の拙い経験から言わせて貰えば、歴代の音曲師の中で最高の力量だと思う。

小三治『粗忽長屋』
マクラの部分から師匠の先代小さんの高座を踏襲したものだった。お手の物とは言いながら、見事な高座。特に熊が自分の遺体と対面する場面は抱腹絶倒。

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2019/11/13

「花見」ぐらいは手銭でやれよ

首相が主催する「桜を見る会」ってぇのは、要は「花見」だろう。
花見ぐらいは手銭でやれよ。
だいたい税金を使って、てめえの後援者を接待するという発想がセコイ。やりたけりゃ自分で金を出すんだね。
なに? 自分で金を出すと公選法違反になるって?
そんなら、やめるしかないだろう。

権力は、放置しておけば必ず肥大化し、やがて腐敗する。
それを止めるのは、国民の監視しかない。
今回の「桜を見る会」の件は、その事を如実に示している。

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2019/11/12

「柳亭小痴楽 真打昇進披露」in国立(2019/11/11)

国立演芸場11月中席・初日「落語芸術協会真打昇進披露」

前座・柳亭楽ぼう『子ほめ』
<  番組  >
柳亭明楽『転失気』
春風亭柳若『猫の皿』
江戸家まねき猫『ものまね』 
三遊亭小遊三『鮑のし』
春風亭昇太『猿後家』
 ―仲入り―
『真打昇進披露口上』下手より司会の鯉昇、昇太、小痴楽、楽輔、小遊三
瀧川鯉昇『粗忽の釘』
柳亭楽輔『替り目』
東京ボーイズ『歌謡漫談』 
柳亭小痴楽『干物箱』

国立演芸場11月中席は柳亭小痴楽 真打昇進披露興行。国立の寄席は前月の1日にチケットが発売されるのだが、その時点で出演者が決まっていないことがある。今回もそれで、仕方なく11月11日というゾロ目に日に予約したというわけだ。

明楽『転失気』
ヘタ、前方の前座より酷い。

柳若『猫の皿』
クスグリを多用して笑いを誘っていたが、行き過ぎるとこのネタ本来の面白みを弱めてしまう。

小遊三『鮑のし』
後の口上で、副会長の重しが取れて若返ったと揶揄されていたが、そういう感じがする。お人好しの甚兵衛が右往左往する姿が巧みに描かれていて、サゲまで演じた。

昇太『猿後家』
落語が好きだというと、時々「笑点」の中で落語が一番上手い人はと訊かれることがあるが、「昇太でしょう」と答えると不思議そうな顔をされる。『権助魚』『花筏』は現役ではこの人がベストだと思っているが、他の人では何も思い浮かばないもん。
ヨイショされて照れる猿後家のお上さんの表情が良かった。

『真打昇進披露口上』では、既に30日間も続けてきたのでダレ気味。小遊三なんぞは「高校3年生」をワンコーラス唄っておしまい。昇太が、本人の性格が奔放だがその奔放さを芸に生かして欲しいと言っていたのが印象に残った。

鯉昇『粗忽の釘』
鯉昇は、オリジナルのほうきを釘に掛けるのに瓦釘を使うのは不自然だと考えて、もっと重いものということでかつてはエキスパンダーを掛けていた。今は体の大きい叔母さんが使っていた遺品のロザリオを掛けるという設定にしている。相変わらず軽妙な高座でこの日最も受けていた。サゲは「お宅の阿弥陀様はキリスト教ですか?」。

楽輔『替り目』
酔っ払いが酔っ払いに見えないし、会話の「間」が取れてないし、一本調子なので抑揚がない。これではネタの面白みも出てこない。

小痴楽『干物箱』
このネタ、若旦那の身代わりに2階に上がった貸本屋の善公について2通りの演じ方がある。
①若旦那が予め父親から訊かれる俳句の会について善公に答えを教えておくが、次に無尽のことを訊かれてしどろもどろになる。その後に干物箱のヤリトリがあって、父親が2階に上がってくる。
②最初に善公と父親とのヤリトリがあり、それはいったん収まるが、善公が花魁から若旦那に宛てた手紙を読み自分の悪口が書かれているので腹を立てて大声を出すと、怪しんだ父親が2階に上がってくる。
小痴楽は②の演じ方だった。
前半の若旦那と善公の会話の場面では、善公が若旦那のお供で吉原に行くと思い込んで妄想にふける所を加え、いかにも小痴楽らしい軽妙な運びだった。
しかし、若旦那と善公のセリフが平板に流れていってしまった。もう少しセリフの間や緩急に留意すべきだったように思う。
それとトリネタとしては、このチョイスがどうなんだろうか。
熱演の割には客席の反応はいま一つだった。

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2019/11/10

「ハメモノの入る上方落語会」(2019/11/9)

第63回「上方落語会」
日時:2019年11月09日(土)14時
会場:横浜にぎわい座 芸能ホール
<  番組  >
笑福亭智丸『隣の桜』
林家染左『質屋芝居』
桂春若『三十石』
《仲入り》
笑福亭岐代松『天王寺詣り』
月亭八方『堀川』

ブログ休み中に、東京五輪のマラソン会場が東京から札幌の移転することが話題となっていた。たまたま観たワイドショーでは、出演者が口角泡を飛ばして議論していたが、それほどの問題なのか。国民の大半はTV観戦だから会場がどこだろうと関係なかろう。
背景には、都知事の再選を目指す小池百合子のメンツと地元札幌の開催を目論む橋本聖子五輪担当相との、利権をめぐる綱の引き合い。選手ファーストと言いながら要は「政治と金」が中心問題。胴元のIOC自体が金まみれ、オリンピックも一皮むけば裏は汚い世界なのだ。

横浜にぎわい座での定例の「上方落語会」、今回はハメモノの入る上方落語特集だ。

笑福亭智丸『隣の桜』
2013年に笑福亭仁智に入門、詩人から落語家になったという変わり種。
ネタは『鼻ねじ』のタイトルでもお馴染みで、後半の屋敷の庭で花見の宴会が開かれる所で賑やかな囃子が入る。
隣家の学者先生だが、芸者の裸踊りに魅了されて覗き見なんかするから鼻をねじ上げられるんだ。
ちょっと固い感じだったが、一所懸命に演じていた。

林家染左『質屋芝居』
1996年に4代目林家染丸に入門、郷土史料館の学芸員から落語家になったというこちらも変わり種。昔はアホな噺家の高座を利口な客が眺めていたが、今はそれが逆転してしまったようだ。
ある質屋、主人から番頭、丁稚にいたるまで家内中が芝居好き。
そこへ客が来て、急に葬礼の送りに必要になったので質入れしていた葬式の裃(かみしも)を出して欲しいと、質札と現金を持ってきた。
主人の命令で定吉が蔵に行って裃を探していると、隣りの稽古屋から、三味線の音が聞こえる。その音につられて定吉は裃を身につけると、忠臣蔵の三段目“喧嘩場”を一人で演じはじめる。
店にはもう一人客が来て、先日質入れした布団が貸し布団で直ぐに請け出して欲しいと質札と現金を持ってきた。
今度は番頭が蔵に行くと、定吉が目をむいて喧嘩場を演じている。そこで布団を塀の書割に見立て、三段目の内”裏門・塀外の場面”の場を二人で演じ始める。
客がいつまでも品物が戻ってこないと文句を言うと、今度は主人が蔵へ行くと番頭と定吉が大立ち回りの真っ最中。そこで主人は木戸番に扮して呼び込みを始める始末。
二人の客がもう待てないと蔵へ乗り込んでくると、裃も布団も芝居に使われてメチャクチャ。怒って中へ入ろうとすると、木戸番の主人に止められる。
「中へ入んねやったら、札は?」
「札は表で、渡してます。」
でサゲ。
芝居の木戸銭の札と、質札の札を掛けたものだ。
質屋を利用する人も珍しくなったのと、忠臣蔵三段目の裏門・塀外の場はお馴染みがない事から、分かりづらい噺となっている。
染左の高座は芝居の仕草やセリフをたっぷり織り込んで良い出来だった。

桂春若『三十石』
この人のこのネタは今月もう一度聴く予定があるので、その際に内容を紹介する。

笑福亭岐代松『天王寺詣り』
1982年に6代目笑福亭松鶴に入門。
ネタはとりわけストーリーらしきものは無く、彼岸の四天王寺境内のにぎわいをスケッチしたもの。むしろ玩具や竹駒屋、寿司屋(押し寿司と江戸鮨屋)、のぞきからくり、阿保陀羅経読みなどを演じ分けが見せ場だ。
随所に挟むクスグリも腕の見せ所で、岐代松の高座では森友・加計から最近の相次ぐ大臣辞任、文科相の身の丈発言に至る時事ネタを披露していたが、もう一つ捻りが必要だったかな。

月亭八方『堀川』
1968年に月亭可朝に入門、可朝の惣領弟子だから今は月亭一門のトップということになる。その後の活躍はご存知の通り。
珍しいネタで初見。
ここに酒好きな道楽息子。店の身代を飲み尽くし一家は裏長屋住まい。毎晩酔っぱらって帰宅するが、甘い母親は家に入れる。
一方向かいに済む源さんは喧嘩極道で火事好き、今日も家に帰るなり寝ていた母親の枕を蹴飛ばして、晩飯の給仕をさせて肩揉め、腰撫で、足さすれの無理難題。朝は起きなくて日々難渋する母親は、時に心中が起きただの火事だのと言って息子を起こすのだが、嘘がばれると殴られる始末。手を焼いた母親は、たまたま通りかかった猿回しに頼んで、源さんの枕元で猿に踊らせる。あまりのおかしさに起き上がった源さんはすっかりご機嫌になって、これなら毎朝早く起きると言いながら仕事に出かける。
これを見た酒極道の父親が、家の息子も猿に起こして貰おうというと、母親は無理だという。
「猿は虎(大酒のみ)には勝てない」でサゲ。
そう面白くもない噺をこれだけ聴かせたのは、八方の技量によるものだ。

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2019/11/04

画竜点睛を欠いたラグビーW杯決勝

突然ですが・・・。
ひねくれ者だから即位の礼もラグビーも観ずにいたが、11月2日に行われたラグビーW杯決勝だけは家族が騒いでいたのでTV観戦した。
初めてでルールがよく分からなかったが、死力を尽くした両チームの熱戦はエキサイティングだった。
しかし決勝で南アフリカに敗れたイングランド代表の選手たちが、試合直後の表彰式でメダルを首に掛けるのを拒んだりすぐに外したりした行為は頂けない。イングランドの選手は他ならぬ南アフリカに負けたことが許せなかったのだろう。
これは明らかに相手チームに対する侮辱だ。ノーサイドの精神はどこへ行ったのか。
せっかくの熱戦に水をさした残念なイングランドの行為だった。

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入船亭扇遊が紫綬褒章を受章

突然ですが・・・。
入船亭扇遊が秋の紫綬褒章を受章した。
昨年の芸術選奨に続いての受章だ。
当ブログの記事でも再三にわたり、「今もっとも観ておくべき噺家」として扇遊をとり上げてきたので嬉しい。
世評が高く落語ファンには人気が高い人でも、芸がピークアウトしてっしまっていたり完全な安定期に入ってしたまった人は、それなりに面白いが心が動かされることはない。
そこいくと、扇遊は今が旬である。

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2019/11/01

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