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2019/11/27

「志ん陽・文菊 二人会」(2019/11/26)

「古今亭志ん陽・古今亭文菊 二人会」
日時:2019年11月 26日 (火)19時30分
会場:らくごカフェ
<  番組  >
古今亭志ん陽『猫と金魚』
古今亭文菊『富久』(ネタ下ろし)
~仲入り~
古今亭志ん陽『肝つぶし』

落語協会期待の若手真打、古今亭志ん陽と古今亭文菊の二人会、それぞれの持ち味を十分に発揮した充実の会だった。
通常は二人で2席ずつ演じるが、この日は文菊が長講のため1席となった。

志ん陽『猫と金魚』
言葉が通じない主人と番頭の会話、
「金魚鉢を棚の上に上げとくれ」「はい、上げました」「それでいい」「金魚はどうしましょ?」
「金魚を棚の上に上げとくれって言ってんだよ」「はい、上げました」「それでいい」「金魚鉢はどうしましょ?」
「だから、金魚を金魚鉢の中に入れて棚の上に上げとくれよ」「はい、上げました」「それでいい」「水はどうしましょ?」
亡くなった橘家円蔵が得意としていたが、二人の会話のズレが志ん陽だと微妙に違っていて、この外し方が面白いのだ。
真面目に恍けている番頭の表情も良かった。

文菊『富久』
最初に、ネタ下ろしでどう収まるか分からないと断って本題へ。
結論から言うと、ネタ下ろしと思えぬほど完成度が高い。
先ず幇間の久蔵の造形が良い。色気と愛嬌のある遊び人風情が出せる所が文菊の優れた点だ。
火事見舞いに来た客に帳付けしながら愛想を言う場面は、先代文楽を彷彿とさせる。久蔵が女中に酒をお酌させるとき、「あんた綺麗になったね、あたしはね以前からあんたを口説こうと思ってたんだよ」と言う時の目つきがいい。
次第に酔っぱらってきて、「火事が段々近づいてきたのを、あたしがこう仁王立ちになってフーっと息を吹きかけたら、火事が飛んでちゃった」なんてホラを吹き出す辺りの描き方も良い。
久蔵が富が千両当たったのに札が無いから金を渡せないと言われて、それなら500両、100両、50両、10両、5両、最後は1両でもいいと縋る久蔵には、借金まみれの売れない芸人の侘しさが表現されていた。
『富久』をこれだけのレベルで演じられる若手は、他にいないだろう。

志ん陽『肝つぶし』
男が病で寝込んでいる義弟の民のもとを訪れると、恋煩いだという。だが話を聞いて見れば相手は夢に出てきた女。医者に診てもらったら、「夢の中の女に惚れて寝付いた場合は、年月そろって(=生まれ年と生まれ月の十二支が同じに)生まれた女の生き肝を煎じて飲めば治る」と言われたが、無理な話しだ。だがこのままでは民はどんどん弱っていくばかり。
男が9歳で妹が5歳の時に両親に死に分かれ途方に暮れていた所を、民の父親が二人を引き取り我が子同様に育ててくれた。その父親も今は亡くなった。せめてもの恩返しに何とか民を救ってやりたい。
そこで男はふと妹が年月そろって生まれた事を思い出した。
妹を殺し生き肝を民に食べさせようと、寝ていた妹の上に出刃包丁を振り上げるが、ついつい涙を妹の頬の上にこぼしてしまう。目が覚めた妹が驚くと、男は芝居の稽古だと言い訳をする。
「ああ驚いた。本当に、肝をつぶしたわ」
「肝がつぶれた? ああ、それでは、薬にならない」 でサゲ。
この噺は、前半が夢の女に恋煩いしたという滑稽噺から、後半は一転して人情噺風の展開になる。
志ん陽の高座は、その双方のバランスがとても良く取れていて好演だった。
志ん陽、いよいよエンジンが掛かってきたか。

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コメント

同じ年に真打に抜擢された二人、伸びてほしいですね。
文菊もあの気障なマクラを封印したようですね。

佐平次さん
まさに同じ年に真打に抜擢された二人、一之輔に比べ人気実力とも出遅れ感がありますが素質は十分です。期待しましょう。

黒門町の「富久」は私を落語の世界へ誘ってくれました。もちろん、ヴィデオですが。初めて菊六(現文菊)を下谷神社で見たとき、三島由紀夫と黒門町を連想しましたが、この噺を高水準で語ったとは立派ですねぇ。
久蔵が様々な妄想に耽るあたりが見どころでしょうか。

福さん
『富久』は禍福は糾える縄の如しの物語で、その度に久蔵の表情が変わってゆきます。そうした喜怒哀楽を文菊はよく表現していました。

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